“公立校の雄”で挑む私立の壁「すべて倒したい」 絶対王者を前に飲んだ涙「レベルが違った」

前橋商業の平石岬暉【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
前橋商業の平石岬暉【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

前橋商業2年生ボランチ・平石岬暉

 第104回全国高校サッカー選手権の都道府県予選も佳境に入り、各地では代表校が決まり始めている。ここでは全国各地で繰り広げられている激戦の主役たちのエピソード、プレーなどをより細かくお届けしていきたい。

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 第21回は群馬県決勝の前橋育英vs前橋商業の伝統の「群馬クラシコ」から。前年度選手権王者は、伝統校の前橋商業の全員守備、全員攻撃に手を焼くも、前半に挙げたMF柴野快仁(FC今治内定)のゴールを守り抜いて5年連続28回目の出場を決めた。白と黒の伝統のユニフォームに誇りと憧れを抱いて前橋商業の門を叩いた2年生ボランチ・平石岬暉の思いとは。

「公立高校でやっていきたいという思いがあって、群馬県で公立高校として一番強いチームは前商だと思ったので入学しました。群馬は前橋育英、桐生第一、健大高崎など私立の壁があるのですが、そこをすべて倒したいと思った」

 ザスパクサツ群馬ジュニアユースから、強い意志を持って白と黒の縦縞のゼブラユニフォームに袖を通した。2年生ながら高い守備力と攻撃センスを評価されて攻守の要として君臨。インターハイ予選では準決勝で後半アディショナルタイムまで1-0でリードをしていたが、終了間際に追いつかれると、延長戦を経てPK戦で涙を飲んだ。

 この試合でも最後の最後まで選手権王者を苦しめた。平石は中盤で圧倒的な運動量を見せてボールのあるところには常に顔を出していた。特に守備面ではセカンドボールの回収、サイドバックのカバー、CBとのプレスバックに加え、鋭いインターセプトで何度もボールを奪い取っては、そこから簡単にボールを失わないでドリブルで運んだり、パスで周りに展開をしたりして攻撃のスイッチを入れる役割までこなした。

 平石の攻守にわたる献身性があったからこそ、試合は最後の最後まで分からない白熱の攻防戦となった。だが、前半アディショナルタイムの失点が最後まで重くのしかかり、タイムアップの時を迎えた。

「あと一歩のところまで来ていたのに、結局は勝てなかった。本当に悔しいし、ただ『惜しかった』だけではなく、改めて大きな差も感じたので、来年はもっと成長をしてこの舞台に帰ってきたいと思います」

 試合後のミックスゾーンで話を聞くと、彼の目には涙があふれていた。表彰式が終わり、ロッカールームに引き上げても涙は止まらない。勝てなかった悔しさと、前橋育英という大きな壁に現実を突きつけられた衝動の両方が彼の心を大きく揺さぶっていた。

「準決勝で(プリンスリーグ関東1部で首位を走る)桐生第一には勝つことができましたが、育英の壁はもう1つ大きいと感じました。夏よりも自分的には少しは成長できたなという気持ちはあるのですが、やっぱりそれ以上に育英はレベルが違った。もともと攻撃的なプレーが得意なのに、こうして守備で目立ったことは、裏を返せばそれだけ押し込まれていたということなので」

 群馬を勝ち抜くことは簡単ではない。だが、それだけやりがいと挑むことによって成長を掴めることは間違いない。何よりこれまで脈々と刻まれてきた「群馬の公立校の雄」としてのプライドがある。

「昔から変わらないゼブラのユニフォームで、昔から前商と育英の『伝統の戦い』がずっとある。そこに憧れてここに来たからこそ、来年こそは個人としても、チームとしてももっと成長して必ず育英を倒して、これまでの先輩たちの分までこの雪辱を晴らしたいなと思います」

 伝統を絶対に色褪せさせない。強い意志を持った平石は、優勝で盛り上がる黄色と黒の縦縞のタイガー軍団をしっかりと目に焼き付けながら、捲土重来に向けて新たなスタートを切った。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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