58歳カズの執念から劇的同点弾「何としても」 貴重な勝ち点1も…熾烈な残留争いへ「しっかり準備」

アトレチコ鈴鹿はDF金鐘必が決勝点を挙げた
JFLアトレチコ鈴鹿が、ラストプレーでの劇的ゴールで勝ち点1を獲得した。鈴鹿は2日、奈良・橿原公苑陸上競技場で飛鳥FCと対戦。0-1で敗戦濃厚だったアディショナルタイム5分、左CKからDF金鐘必(33)が頭で決めて1-1の引き分けに持ち込んだ。FWカズ(三浦知良、58)は後半43分から3試合連続の交代出場。残留争いするチームの最前線で走り回り、貴重な勝ち点獲得に貢献した。
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アディショナルタイム5分も残りわずか、ゴールが遠い鈴鹿にスタンドのサポーターから悲鳴にも似た歓声が届く。左CKを蹴るのは主将のMF日高慶太(35)。相手GKの前に立ったカズが動いてできたスペースに走り込んだのが金だった。ヘッドでゴールを決めると、カズと抱き合い喜び爆発。直後に試合終了の笛が鳴った。
苦しい試合だった。山本富士雄監督は「追いついたことはポジティブにとらえたい」と言いながらも「全体としては反省することが多い試合だった」。カズも「内容は非常に悪かった」と話した。
最下位の飛鳥FC相手に、序盤から押し気味に試合を進めた。前半は何度もゴールに迫りながらシュートは1本だけ。前節徹底した「シュートで終わる」を忘れたかのようにボール回しに終始した。逆に攻め込みながらカウンターで被シュート数は3。「行けるんじゃないかというのが出た感じ。ハーフタイムでもこういう流れの時は怖いと話したのですが」と山本監督。後半35分には予感が当たって失点。しかし、その後もシュートすら打てないまま時間だけが過ぎていった。
「相手の気持ちが上回っていた」という山本監督が残り時間わずかでピッチに送り出したのがMF木出雄斗(26)とカズ。「2人を入れたことで、何が何でも点をとるということで終われた。カズがチームをそういう方向にさせたのでは」と同監督は話した。
確かに、カズが入って両チームのベンチにもスタンドにもカメラマンたちにも緊張が走った。選手たちはFW田中直基(32)とカズの2トップに向けてロングボールを入れる。終了間際にようやく出てきた「何としても追いつく」という気迫が、ラストプレーで結実した。
3試合連続出場でチームに貢献したカズも「あきらめないで、最後に追いついたことは良かった」と話した。もっとも、残留争いは終わったわけではない。「残り3試合、しっかり準備をしてポイントをとって降格圏を脱したい」と厳しい表情もみせた。
優勝争いは勝ち点54で並ぶHondaFCとレイラック滋賀が3位ラインメール青森の同47を引き離しているが、残留争いは大混戦。この日終了間際の失点で勝利を逃した飛鳥は勝ち点20で苦しくなったが、降格圏の15位は最終節までもつれそうだ。
13位の鈴鹿は引き分けで勝ち点を28にしたが、同27の14位Y.S.C.C横浜を挟み、同26の15位・横河武蔵野FCとはわずかに2差。12位・マルヤス岡崎と11位・クリアソン新宿が同29と、勝ち点3差に5チームがひしめいている。「1試合ずつ、しっかりと勝ち点を重ねていかないと」と山本監督も悲壮な決意で話していた。
(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
荻島弘一
おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。





















