J1→5大リーグ移籍で「もっと早く出られると」…まさかの左WBで起用、初先発で「俺いねえな」

川﨑颯太が今季初スタメンを飾った
京都サンガF.Cから今夏、ドイツ・ブンデスリーガのマインツへ移籍した川﨑颯太は、UEFAカンファレンスリーグ第2節、ホームでのズリニスキ・モスタル戦で公式戦初スタメンを飾った。
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「びっくりしましたね。『俺いねえな』と思ったら、すごいところにいましたね」と試合後ににこやかにその心境を明かした川﨑。この日、ボー・ヘンリクソン監督は本職ではない左WBで起用した。怪我人がいて、トレーニング中のゲームで起用されることはあっても、まさか試合でもそこで起用されるとは思っていなかったという。
ただ、慣れないポジションと言いながら、序盤から川﨑は思い切りのいい守備と丁寧で正確なプレーで攻守に好プレーを見せ、「どこでもできるということを証明できたのはいいかなと思います」と手ごたえを口にする。
ブンデスリーガ第2節ライプツィヒ戦以来の出場となった。あの試合では後半30分からブンデスデビューとなる途中出場を果たしたものの、ロングボールが飛び交う中でうまく試合に絡むことができないまま終えてしまった。そして、あれから1か月半、出場を待ち続けた。
「信頼を掴むっていうのは本当に難しいんだなって」
実感が込められたものがそこにある。悪いプレーをしていないだけではダメなのだ。いいプレーをしているだけでも主力の壁を超えられない。特にマインツのヘンリクソン監督は、主軸選手への信頼が本当に厚い。川﨑だけではなく、多くの若手選手が出場機会を得るために我慢強い戦いを続けている。
「もっと早く出られると思っていましたね。海外で、というか僕は京都から移籍したこともなかった。やっぱり新しい環境、新しいチーム。去年、マインツがいい流れだったので、それもあると思います。そうした中で、外国人の僕が入っていくためには、もっとインパクトを残さなきゃいけないと思うんです」
インパクトあるプレーは随所にあった。4分、CKのこぼれ球からチーム最初となるシュートを放ったのは川﨑だった。右足ダイレクトでのシュートはゴール左へ外れたが、シュートを打つべきタイミングで打つと、チームには勢いがもたらされた。
インテンシティでも、球際の競り合いでも、ヨーロッパサッカーのそれに順応してきたことを表すシーンが続く。相手選手がボールを持っても直前で止まらない。懐に鋭く飛び込み、身体をぶつけていく。ファールギリギリの激しさに、相手選手がグラウンドに倒れこむこともある。
後半30分に途中交代するまで、俊敏な動きを連続させ、マインツファンにも識者にも存在感をアピール。そんな川﨑のプレーぶりに、同僚の佐野海舟は、次のように話していた。
「毎日頑張ってやっているところを見ています。それがこういうふうに結果で現れると思います。継続してやることの大切さは、彼が一番分かっていることだと思うので、自分も負けないように頑張りたいです」
川﨑も「今日、自分的には悪くなかったと思いますけど、もっともっと満足せずにやるだけ」とさらなる成長を誓う。
「もっともっとやるしかない。毎日積み重ねて。これですぐチャンスをもらえると思っていない。そんな甘い競争じゃないと思っています。だからこそ、いつ、どこで、どんなチャンスができたとしても、(自分のパフォーマンスを)出せるように準備していきたいと思っています」
こうした厳しい環境こそ、自身の成長のためにまさに望んでいたもの。試合に出られないからといって、ふてくされる気も、誰かのせいにするつもりもない。自分自身にベクトルを向けて、毎日やれるだけのことをやり続ける。
「本当にそうですね。簡単じゃない世界。マインツ自体も調子がそんなに上がっていない中で、ここで自分が何を見せられるかというのが一番重要。そういう面でいうと、本当に楽しいし、毎日刺激的で充実してるなと思います」
日本を出てドイツへ来て、ブンデスリーガだけではなく、ヨーロッパカップ戦もある。「本当に素晴らしい経験」と川﨑も楽しそうに振り返る。
「発炎筒がたかれたり、こういった雰囲気でやる試合は初めて。やっぱり街全体がサッカー好きみたいなものを感じる。マインツのサポーターの方々と、もっともっと喜びあいたいというか、やっぱりこういった文化に触れながらサッカーできるというのは幸せかなと思います」
続くシュツットガルトとのリーグ8節では出番がないまま終わった。マインツはリーグでは8節終了時にいまだ1勝で16位に沈んでいる。
「パフォーマンスそのものが悪いわけではない」
ヘンリクソン監督はそう強調するが、ファンサイドからは常に固定されたスタメンメンバーへ疑問の声も少しずつ増えてきている。川﨑も我慢強くその時を待ち、そしてチームを助けるパフォーマンスでさらなる出場機会を手繰り寄せたい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。






















