強豪大からの誘いも…2部行きを決断「似てると思った」 有言実行の1部昇格「自分たちの力で」

中部大の国本遥大がこだわる「止める、蹴る、運ぶ」
ボールを持ったら何かをしてくれる。中部大の3年生MF国本遥大はトップ下の位置から細かいステップのドリブルと、まるで後ろに目がついているかのような鋭いターンとスペースへの潜り込みで攻撃に大きなアクセントを加える。
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「中部大は『止める、蹴る、運ぶ』を大事にしているチーム。それを徹底すればフィジカルの強い相手でも、技術がある相手でも、しっかりと剥がしてチャンスを作れると思っているので、そこにこだわっていきたいと思っています」
東海大学サッカーリーグ1部・第20節、中部大は名古屋学院大と対戦すると、立ち上がりから圧倒的な攻撃力を見せつけた。国本はボランチで横浜F・マリノス入りが内定しているMF樋口有斗、FW伊藤氷麗の『3年生トライアングル』で息のあったコンビプレーを見せて、中央からアイデア溢れる攻撃を展開。前半だけで4ゴールを奪うと、後半は相手の反撃に合うも乱打戦を6-3と制した。
持ち前のテクニックは小学生の頃から磨かれたものだった。中学時代はかつて乾貴士(清水エスパルス)らを輩出した滋賀セゾンFCジュニアユースに所属。ボールを意のままにコントロールし、相手の逆を取っていくプレーを武器に、高校は千葉県の中央学院高に進学をした。
「野洲高や静岡学園高も考えたのですが、毎年(セゾンの)エース級の選手が進学している中央学院の練習に参加をしてみて、『ここならよりドリブルを磨ける』と思ったし、千葉には流通経済大柏や市立船橋と知っている高校があって、この2つと対戦をしてみたいと思って決めました」
中央学院も足元の技術にフォーカスを当てているチーム。狭い局面の打破やGKからのビルドアップでボールを動かしながら、後方から個々がどんどん仕掛けていくスタイルの中で、国本はサイドハーフ、トップ下で背番号10を託されて局面打破のスペシャリストとなった。
2強の壁は最後まで破ることができず、高校最後の選手権予選はベスト4で日体大柏の前に涙をしたが、大会優秀選手に選ばれるなど激戦区・千葉でインパクトを残す活躍を見せた。
「僕は身体が小さい(168cm)ので、ずっと持っている技術を発揮して磨ける環境を選んできました。大学進学もそれがある環境に行きたいと思いました」
進路は関東、関西、東海の大学から複数のオファーがある中で、彼が選んだのは当時、東海2部の中部大だった。
「1部の強豪大からのお話もあったのですが、高校時代に東海地区への遠征があって、そこでいろいろな大学と戦うのですが、1個上の先輩がいる中部大と対戦した時に、2部とは思えないほどみんなめちゃくちゃうまくて、中央学院のプレースタイルに似ているなと思った。正直、かなり迷いましたが、最後はたとえ入る時が2部でも、自分たちの力で1部に上げて、1部でも中京大や東海学園大という強豪を倒せるチームになっていけると思ったので決めました」
決意通り、1年時から出番を掴むと、2部で圧倒的な攻撃力を見せつけて1部昇格。昨年、今年と1部で台風の目となっている。個人としても10番を背負い、今年2月にはデンソーカップチャレンジ静岡大会に東海選抜の一員として出場をした。
「(中央学院で1学年下だった高橋)旺良(今季途中に東海学園大からJ1・ファジアーノ岡山に加入)がプロに行ったのは大きな刺激になりました。彼は高校で自分の長所をしっかりと捉えて行って、技術を磨いて一気に成長をして早くもJ1の舞台に駆け上がって行った。負けていられません」
自分の信じた道を貫き、着実に成長を遂げている国本の目は、しっかりと『その先』を捉えている。技術を極めて、かつ課題にも向き合っていく彼の成長譚はまだまだこれからだ。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















