注目株の22歳日本代表…高校時代に衝撃 記者も武者震いした冷静さ「これがプロの世界」

高校時代の鈴木淳之介に驚かされた出来事
今回のキリンチャレンジカップで一番名を挙げたのが新進気鋭の22歳CB鈴木淳之介だろう。すでに多くのコラムで紹介されている通り、ブラジル戦で見せた圧巻のパフォーマンスは多くのサッカーファンを魅了し、専門家たちを唸らせた。
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確かに3バックの左CBとしてスタメンフル出場した鈴木の存在感は抜けていた。前半は突破を許してしまうシーンがあったが、徐々に試合のリズムにアジャストをして行くと、1対1でもしっかりと相手の一番仕掛けたいコースを消して、自分が奪いやすいコースに誘導し、強引に仕掛けられても身を翻してから冷静にボールにアタックに行くなど、守備のうまさを披露。攻撃面では最終ラインから鋭い縦パスを何度も打ち込んで、攻撃のスイッチを入れる役割を担った。
筆者は東京スタジアムの記者席で試合を見つめながら、鈴木の帝京大可児高時代を思い出していた。高校時代、鈴木は180cmのサイズを持ち、ダイナミックなプレーと職人のような地味なプレーの両方ができるハイスペックなボランチだった。
印象的だったのは鈴木が高校2年生の時の和倉ユース。ボールを持つと驚くほど取られない。相手に囲まれても涼しい顔でボールをキープして、剥がした瞬間に矢のようなミドルパスをサイドや最前線に供給して行く。そのキックのフォーム、精度を見ただけで只者ではないと感じた。
そしてその時の全国高校サッカー選手権岐阜県予選。夏を超えて鈴木は、よりそのスケールが増していた。
筆者が唸ったのは味方の出力を最大限に引き出すようなパスを出すことであった。鈴木のパスは繋ぐだけのパスではなく、スピードのある選手であれば、そのスピードが最大限発揮できる場所にボールを届け、足元がうまい選手であれば、マークをしているDFの位置を見て、「こっちの足でボールを持て」とメッセージ付きのパスを足元にピタリと通す。
それが相手のレベルが上がっても、平然とメッセージ付きのパスを通して行く。こんな高校2年生はなかなかいなかった。
取材をしても今と変わらず、口数が多い方ではないが、きちんとこちらの質問に耳を傾ける。鈴木はずっとポーカーフェイスを貫いているが、凄く感受性は豊かだ。当時、鈴木は守備を自身の課題としていた。
「僕が攻撃参加をした後に、相手は僕の裏や脇を狙ってくる。そこを察知できずにカウンターを受けてチームに迷惑をかけてしまっている。だからこそ、僕が早く察知をしていい状態でスペースを埋めたり、素早くプレスバックに行ったりしないと、チーム全体が前向きの状態でプレーできない。それができてボールが奪えるようになれば、僕も前向きの状態でプレーをスタートできるし、相手の陣形も崩れているので持ち味を出しやすくなる。プレーの幅を広げるためにそこは意識しています」
高校2年生の12月に湘南ベルマーレ内定が決まり、最高学年を迎えるとよりその分析力は研ぎ澄まされて行った。中でも湘南の練習に参加をするたびに、自分の中でやるべきこと、課題が常に具体的にアップデートされていた。
「ベルマーレでは【3-1-4-2】のアンカーをやっていて、真後ろには真ん中のCBがいるので、僕が動かないとビルドアップもできなくなる。いつもやっている【4-4-2】のダブルボランチと違って、常に後ろの立ち位置と状況を考えながら動かないといけないし、2シャドーとの距離感も常に意識ないといけないので、頭を休める暇がないんです。本当に大変なポジションを任されるので、常に自分が進化しないといけないと思いました」
印象的だったのは内定してから2度目の練習参加をした後の言葉だった。その時、川崎フロンターレと練習試合に参加をし、1、2本目はベンチから見て、ジョアン・シミッチのボールを失わない力、サイドバックからボールを受けて一発でターンして前を向くプレーに衝撃を受けたという。そして、3本目に出番がやってきたが、「アンカーの僕にフロンターレはマンマークをつけてきて、何もできなくなったんです。そのせいで攻撃が停滞して負けた。自分の力のなさを感じました」とプロの洗礼を浴びた。鈴木の凄さを改めて感じたのが、この反省の弁に続いたこの言葉だった。
「アンカーのポジションは1メートル、いや、何十センチの移動や身体の向き、立ち位置で全てが変わってしまうんです。逆にそれ以上のアクションをすると相手に読まれてしまうし、空いたスペースを使われてしまうのがプロの世界。いかに小さなアクションで相手を動かすか、自分のやりたいプレーに繋げるかが、自分のこれからやるべきことだと思っています」
冷静な口調でこう話す鈴木に武者震いしたのを覚えている。自分が肌で感じた課題を自分の中で言語化して、それを日々のトレーニングに目的の1つとして組み込んでプレーする。多くを口にしない代わりに、心の中で自分に言い聞かせて改善、強化につなげていく。
湘南、FCコペンハーゲン、そして日本代表においても、このスタンスはずっと変わってはいない。だからこそ、大舞台で飄々とした表情で代表キャップ数3とは思えないプレーを披露できる。
日々の積み重ね。継続する力。何よりどんなにレベルや取り巻く環境が変化しても、黙々と心の中で自分と対話ができる力。鈴木淳之介はこれからも己のやり方で、力強くかつ着実に未来を切り開いていく。より自分と活発に議論を交わしながら―。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。





















