J1連続撃破の強豪校→J2へ「覚悟を決めました」 決め手となった”強化部”の「熱い話」

東洋大学の湯之前匡央が富山に内定【写真:安藤隆人】
東洋大学の湯之前匡央が富山に内定【写真:安藤隆人】

東洋大学MF湯之前匡央は来季富山に内定

『ミラクル東洋大学』

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 天皇杯でJ1リーグの柏レイソル、アルビレックス新潟を撃破し、3回戦でもJ1連覇中のヴィッセル神戸を相手に延長後半まで大熱戦を演じ、PK戦直前で0-1の敗戦を喫するなど、Jリーグを震撼させたことは記憶に新しい。

 その後、9月に行われた総理大臣杯でも熱戦を勝ち抜いて大学日本一に輝いている。この優勝で昨年度の全日本大学サッカー選手権(インカレ)優勝と含めて冬夏連覇を達成した。

 その中心人物となったのが、チームのナンバー10・MF湯之前匡央だ。独特のリズムを刻むドリブルと左足の精度の高いキックを駆使して、攻撃の中枢を担う右サイドハーフは、すでにJ2のカターレ富山に加入が内定している。

 関東大学サッカーリーグ1部・第15節の桐蔭横浜大戦、湯之前は右サイドハーフでスタメン出場をし、桐蔭横浜大の横浜Fマリノス内定の左サイドバック・関富貫太とマッチアップをして、ハイレベルな攻防を見せた。

「彼(関富)はすでにJ1でスタメン出場していて、スピードだったり、フィジカルだったりは非常に優れている選手。絶対に負けてはいけない戦いでした」

 レフティー対決は見応え抜群だった。だが、試合は0-2の敗戦。後期初白星を逃した。

「もっとバチバチにやりたかったですが、難しさはありました」

 試合後、彼は苦悩の表情を浮かべていた。チームは関東1部の後期が開幕してから、4試合で1敗3分けと勝利を挙げていない。

「少し疲労が出ているというのも感じますし、自分たちに勢いというか、前に出るという積極性は若干無くなってきているのかなとも感じています」

 天皇杯はどれも強度が飛び抜けて違った。総理大臣杯も1回戦から準々決勝までは中1日の連戦で、準々決勝以降は中2日の連戦だった。それを最後まで戦い抜いたダメージは相当大きいものがある。さらに相手はJ1を撃破し、大学日本一にも輝いた東洋大を倒すことで勢いをつけんと、目の色を変えて戦いに臨んでくる。彼らを取り巻く環境は前期と一変している。

「受け身になったらいけないし、ここを跳ね返す力を持たないといけないと思っています」

 同時に湯之前は前述した通り富山入りが決まり、総理大臣杯後の9月28日のJ2第31節の徳島ヴォルティス戦で58分に途中出場してプロデビューを飾った。富山も現在、J2で18位(第32節消化時点)とJ2残留争いの渦中にいる。

「カターレでは本当に1試合も落とせないし、言い訳が一切通らない世界。デビューさせてもらいましたが、勝利することができなかった(1-3の敗戦)ですし、やっぱり自分自身もこうした状況をどう跳ね返すのか、強くなっていくのかを問われている。それを経験し、やり抜くことで自分自身の成長過程に大きな影響を与えるし、伸び代だと思っています」

 富山入りを決断したのも、こうした経験、チャレンジが自分を成長させてくれると信じたから。進路で迷っている時、決断の決め手となったのが富山の強化部の言葉だった。

「迷っていることを正直に伝えたときに、熱い話をしてくれましたし、『匡央が(チームを)救う気持ちでやってくれ』と言われました。J2残留争いというヒリヒリした環境で、当事者として全力を尽くした方が成長できると思いましたし、一番自分を欲してくれるクラブがカターレだったので、『やってやろう』と覚悟を決めました」

 大学でも富山でもいろいろな人の思いを背負うつもりでピッチに立つ。だからこそ、結果が出ない時は苦しさと不甲斐なさが自分を襲う。それを含めて、自己成長につながると信じて彼は走り出している。

「いかに自信を持ってやれるか。大学ではチームを引っ張って、逆境を跳ね返す。カターレではもっと自分を知ってもらわないといけないし、僕もチームメイトをより知って、戦術もより理解していかないといけない。やることは多いですが、最高の環境だと思っています」

 苦しさをポジティブに。湯之前はミラクル東洋の中心として、富山の救世主として、自覚と責任、そして誇りを持って挑んでいく。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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