J練習参加の3年生10番「もっと磨きたい」 FW転向を志願…追いかける背中「まだ足りない」

東京国際大学3年生FW古谷柊介「1ランク上げたい」
7月のU-22日本代表のウズベキスタン遠征で初代表に選ばれ、9月のU-23アジア杯予選(ミャンマー)にも出場して全3試合に出場をした東京国際大FW古谷柊介。
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大学では3年生ながら10番だけでなく、キャプテンマークも託されている古谷は、本職であるサイドハーフだけではなく、FWとしてもその才を磨き、プレーの幅を広げようとしている。
関東大学サッカーリーグ1部・第13節の日本大学戦、古谷は2トップの一角でスタメン出場をすると、豊富な運動量を駆使して1.5列目を動き回り、攻撃のスイッチを入れる縦パスを受け取るレシーバーとして機能。持ち前のポケットに入っていくドリブルやラインブレイクは影を潜めたが、守勢に回る中で攻撃を生み出す中継地に加え、前線からの連動したプレスのスイッチを入れる役もハイレベルにこなし、攻守において存在感を放った。
前半に相手のミスを突いて先制をすると、後半途中からはポジションを左サイドに移す。サイドでアップダウン能力を発揮して守備の厚みと攻撃の起点を作り出し、再び流れを作り出すと、後半は立て続けに2ゴールを挙げて3-0の勝利。降格圏から一歩抜け出す貴重な勝ち点3を手にした。
「チームの勝利は嬉しいですが、FWとして考えると、もう少しボールを受けて攻撃のテンポを作り出せたら、前半からいい形でゴールを生み出せていたと思います。サイドに回ってからも突破がもっとできていたら、自分自身がいいリズムに乗れたと思うので、本当に納得がいかない出来でした」
快勝でも口から出るのは反省の弁。表情も晴れやかではなかった。その理由は対戦相手のFWから受けた刺激があったからだった。
「(日大の)五木田(季晋、水戸ホーリーホック内定)くんと平尾(勇人、東京ヴェルディ内定)くんの同い年の2人は、すでにプロが決まっていて、平尾くんはもう結果を出している。試合中に彼らを見ていてもしっかりとボールを受けることができていますし、背後も取れている。結果的にはうちが勝ちましたが、個の部分では向こうのFWと比べてまだまだ自分が足りないなと思いました」
2人とはプレースタイルは違う。古谷は日体大柏高時代、ずば抜けたスピードを生かした突破力とキックセンスを誇る左サイドアタッカーだった。ワイドに張り出して相手をピン留めしてから、一気に縦やカットインを仕掛ける。張るだけでなく、中に絞ってから3人目の動きでポケットに侵入して、フィニッシュワークに関わる。
日体大柏の根引謙介監督が「中央でも質の高いプレーができる選手だけど、あの魅力的なスピードを活かすにはサイドがいいと思った」と起用法について言及したように、ドリブルのタイミング、キレ、コース取りは高校時代に磨かれた。
高校最後の選手権予選で激戦区・千葉を制し、本戦では初出場ながらベスト8進出の快挙を成し遂げた後に、東京国際大学に進学。そこからは守備を重視するチームコンセプトもあり、「まずはどう守るかを考えて、奪われてから守備のポジションにつくスピード、奪ってから攻撃に入る出足の速さをより意識するようになった」と後ろへのスプリント力、ミドルサードで発揮する技術を磨いた。
突破も出来て、フィニッシュへのアプローチも多彩で、守備のタスクもこなせる。今季からFWでも起用されるようになってからも、古谷は自分の能力をアジャストさせて、一気にその地位を築き上げて行った。実はこのFWへの移行は、自ら志願したものだった。
「僕は得点力をもっと磨きたいと思ったんです。サイドだったらゴールが遠いなどあると思うのですが、FWになったらゴールに一番近いわけで、ゴールという結果を残さないと言い訳無用で上に行けないポジション。最後のフィニッシュの質だったり、背後の裏抜けの質だったりをもっと磨きたいと思ってトライしています」
だからこそ、ミャンマーでノーゴールに終わり、この試合を含む後期開幕2試合でノーゴールに終わった自分が不甲斐なかった。FWのポジションのライバルにどうしても目が行ったのだった。
「平尾くんはJ1でもクロスへの入り方がかなりうまくて、初ゴールもその形だった。今日も入り方は脅威だったし、収める部分でも貢献していた。僕はスピードがあるからこそ、クロスへの入り方も一気に置き去りにしたり、ドリブルでもファーストタッチで相手を交わしてラインブレイクをするプレーをもっと磨いて行くことができれば、上のレベルでもやっていける自信はあるので、そこももう1ランクレベルを上げていかないといけないと感じています」
古谷の頭の中にはFWの歴が浅いからという考えは毛頭ない。サイドでもFWでも無双できる選手になるために、貪欲にサッカーに向き合っている。技術だけではなく、そういう姿勢もあるからこそ、3年生で10番とキャプテンマークを託されているのだと理解できる。
柏レイソルA.A.TOR’82から柏のアライアンスグループである日体大柏でプレーしてきたこともあり、すでに柏の練習に参加するなど、Jクラブからの注目度も増している。平尾ら輝きを放ち出している周りに刺激を受けながらも、古谷はそれに惑わされることなく、自らが決めた自己研鑽に励む道を歩み続けている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



















