腹括った監督の言葉「正直考えてなかった」 驚きの抜擢に本音…31歳で挑む新境地「今は学びながら」

FC東京の室屋成【写真:徳原隆元】
FC東京の室屋成【写真:徳原隆元】

FC東京の室屋成が明かした左SB起用への本音

 今季途中の5月23日にドイツ・ブンデスリーガ2のハノーファーから5シーズンぶりにFC東京へ復帰をしたDF室屋成。復帰後すぐさま主力として活躍する室屋に、DF長友佑都らベテランの存在と残り数試合となった終盤戦の意気込みについて聞いた。(FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真/全2回の第2回)

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 室屋が復帰した5月末から6月初旬はFC東京にとって苦しい時期だった。6月1日に行われた第19節のアウェー・京都サンガF.C.戦で0-3の大敗を喫し、降格圏の18位に転落。松橋力蔵監督も3バックから4バックへの変更を決断し、室屋は第20節のセレッソ大阪戦が復帰戦となった。

 当時の状況について「相当チームとしては自信失っていた」と振り返る。復帰戦のC大阪戦は2-2で引き分け、次のガンバ大阪戦では0-2で敗れ、残留争いを強いられた。そのなかで迎えた横浜F・マリノス戦は、残留争いをかけた大一番だった。

 この試合のスタメンにはサイドバックとして室屋と長友の名前が載った。誰しもが「右の室屋」「左の長友」と予想していたなかで、左SBに室屋が起用された。この左SBでの起用について「正直、自分もそれは考えてなかった」と本音があふれた。それでも、松橋力蔵監督からの言葉で腹を括った。

「これでもし、パフォーマンスが良くなくても、それは俺のせいだから。信じてやってほしい」

 松橋監督からのこの言葉に「そう言われたらやるしかないと思った」と自分を奮い立たせた。室屋はこの横浜FM戦で後半23分にFW佐藤恵允のゴールをアシストするなど出色のプレーを見せ、大一番での勝利に貢献した。

 左SBでのプレーについて「苦手意識はないですけど、右と比べるとどこか感覚が違うなかでやっているから、今は学びながら、という印象です。全く新しいポジションではないですけど、この歳で新しいポジションでやっているっていうのは、自分にとってもプラスにつながると思いながら、ポジティブにやれています」と新たな挑戦を歓迎した室屋。それを自分自身の力にするため研鑽を続ける。

 そして第22節の横浜FC戦では、FW長倉幹樹のPK奪取につながるラストパスを供給し、第24節の浦和レッズ戦でも随所で存在感を見せ、MF渡邊凌磨との球際バトルで主導権を渡さなかった。第29節、東京ヴェルディとの東京ダービーでは足がつるまで走り、球際で激しく戦った。ゴール裏を煽ったシーンも印象的で、ファン・サポーターもその熱量に応えた。ドイツでの5シーズンを経て、プレー面での成長だけでなく熱量をもたらす重要な存在に成長した。

「ドイツでの5シーズンを経て、90分間安定してプレーできるようになったかな。それは精神面でもそうですけど、そういうところは成長したというか。年齢とか経験もそうですけど、そういったところで少しコントロールできるようになってきたかなというところはあります」

長友、森重、東というベテランの存在

 26歳でドイツ行きを決め、31歳で帰ってきた。一般的にはベテラン選手として見られがちだが、FC東京には長友(39歳)、DF森重真人(38歳)、MF東慶悟(35歳)といった大ベテランたちが第一線で戦い続けている。

「東京にいたらユウト君とかモリ君もいて。その年齢で、しかも試合に出ている姿とか、練習に取り組んでいる姿を見たら、やっぱり自分もまだまだやれるなって思うし、やらなきゃいけないなって思う」

 そんな39歳の長友からは「35歳を過ぎてからがベテラン」と言われているようで、「東京ではまだ中堅のような立ち位置でいさせてもらっています」と語る。そして「毎年が勝負だと思っていますけど、やれるだけやりたいなっていう気持ちはあります」と先輩たちの背中を追いながら、まだまだ戦い続ける構えだ。

 リーグ戦も終盤に差し掛かり、天皇杯ではベスト4まで勝ち上がった。2019年の退団時には、室屋が「タイトルを獲れなかったのが心残り」と話していたのが印象的だったこともあり、「タイトルには人一倍強い気持ちがあるのでは?」と聞くと「そんなことないですよ」と笑い、「みんなが『天皇杯マジで獲ろうよ』っていう感じなんで自分もその気持ちです」と続け、「残りの数試合で来シーズンにつながるようなプレーをしたい」とまとめた。

(FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真 / Takuma Uehara)



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