信金→市役所勤めで「履歴書を見るとエリート」 “新発田のアイドル”が涙にあふれた日「感極まって」

新発田市役所で勤務していた滝川結女は“新発田のアイドル”として人気
女子サッカーの未来を考える――。WEリーグとFOOTBALL ZONEの共同企画「WE×ZONE ~わたしたちがサッカーを続ける理由~」がスタート。5年目を迎えたWEリーグで日々奮闘する選手たちの人生に迫る。第1回はアルビレックス新潟レディースのなでしこジャパン(日本女子代表)FW滝川結女。“新発田のアイドル”として知られる26歳の点取り屋が歩んだ道筋とは。連載5回目は全国的な知名度を誇る愛称の誕生秘話と涙を流して喜んだなでしこジャパン入りについて。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全6回の5回目)
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「きっかけは本当にちょっとしたことだったんですよ。ここまで広まると思っていなかったので……。戦略的とかではなく、反射的に答えた」
今や、全国的に広まった“新発田のアイドル”の愛称。誕生の瞬間は突然だった。2020年にAC長野パルセイロ・レディースからアルビレックス新潟レディースへ移籍加入。その際、チームの公式インタビューで振られたことが始まりだった。
「当時、北川ひかる(現エバートン)さんがインタビュアーで。新加入の紹介で、私が新発田に住んで新発田市役所に勤めていたことから勝手に『新発田のアイドルです』と言ったら、サポーターの方たちがチャントにも入れてくださった。不意に振られて言っちゃっただけだったんですけど、驚きです」
AC長野時代には長野県内の信用金庫で働き、新潟L入りしてからは職場を新発田市役所に移した。「履歴書を見るとエリートだね!と言われます(笑)」。配属されたのはスポーツ推進課。体育館などの施設予約受け付けや、保育園・幼稚園などを訪問して体操の指導などを手伝った。朝8時半に出勤し、午後3時までみっちり業務をこなす。午後5時頃から練習が始まり「1日はあっという間だった」という。
「仕事はすごくやりやすかったです。皆さん試合に応援に来てくれましたし、周りの人にも恵まれた。私が採用された時の課長さんが今でも差し入れや気にかけてくださったり、みんないい人ばっかりでした。社会経験をすることはすごく大事なことだったと思います。電話対応や言葉遣い、お客様と接することもあった。社会経験は短い方でしたけど、銀行でも市役所でも働かせていただいたので、本当に恵まれているなと感じますね」

追加招集でなでしこジャパン入り
新潟Lの2年目からWEリーグが新設され、新潟Lも参入。仕事を辞め、プロ選手となり、集中する環境では夢と向き合う時間も増えた。なでしこジャパンに入る。小学生の時に抱いた目標はシーズンを重ねるごとに現実的に思い描けるようになった。昨季、リーグ22試合8得点。キャリアハイを記録して、今年7月に開催されたE-1選手権のメンバー発表を待った。
「E-1選手権は国内組でいくと聞いていたので、狙っていた。昨シーズンは結果を残せたと思えた分、最初(選考から)外れたのはすごく悔しかった」
メンバーリストに滝川の名前はなかった。だが、日テレ・東京ヴェルディベレーザMF土方麻椰がコンディション不良で代表を辞退。滝川は突然、クラブハウスの一室に山本英明社長と小川貴史ゼネラルマネージャー(GM)に呼び出された。
「『ちょっと来て』と言われて、社長とGMに言われたので『私なんかやらかした……?』と驚きましたね(笑)。部屋に入ったら『追加招集だけどやっと選ばれたよ』と言われて『本当ですか!』と。チームからもフィールドプレーヤーが何年も代表に入っていなかったので嬉しいと声をかけてもらって、本当に嬉しくて。やっとスタートラインに立てるんだと思うと感極まっちゃって泣いちゃったんです。今まで自分が目指してきたところだったので」
ほおを伝った嬉し涙。滝川の歴史が凝縮された光の粒は何よりも美しかった。日の丸を背負って初出場した初戦のチャイニーズ・タイペイ戦(4-0)でゴールを刻んだ。“新発田のアイドル”が世界へ飛び立った瞬間。ここから始まる物語だ――。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)













