3兄妹で作り上げた引退試合 最高の仲間の前で…元日本代表が有終の美「言葉を交わさなくても」

競技場を一周してサインを書きながら、スタンドに笑顔で手を振る永里さん【写真:砂坂美紀】
競技場を一周してサインを書きながら、スタンドに笑顔で手を振る永里さん【写真:砂坂美紀】

3兄妹で作り上げた「日本初の女子選手の引退試合」

 元なでしこジャパンのFW永里優季さんの引退試合が9月15日、神奈川県厚木市の荻野運動公園陸上競技場で行われた。永里さんは軽快な動きでハットトリックを記録するなど会場を沸かせた。試合前には小中高校生向けのサッカークリニックを開催し、歴代のなでしこジャパンのメンバーと日本サッカー協会(JFA)佐々木則夫女子委員長を交えたトークショーを開催。今だからこそ語れる秘話を披露し、サイン会や未就学児やシニア向けの運動教室なども実施して、誰もが楽しめる一日となった。(取材・文=砂坂美紀)

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 永里さんの妹で元なでしこジャパンの永里亜紗乃さんと兄で元Jリーガーの永里源気さん、知人2名の計4人が中心となってこの日を迎えた。今年3月、アメリカのプロリーグNWSLの開幕前に引退を発表したため、セレモニーを行うことなく現役生活を終えていた。それを気にかけていた妹の亜紗乃さんが「日本で引退試合をしないの?」と持ち掛けてスタート。永里さんが元なでしこジャパンの仲間たちに直接オファーをするなど自らも動いて、「日本初の女子選手の引退試合」を3兄妹が力を合わせて実現させた。

 引退試合では、『なでしこフレンズ』と『優季フレンズ』の2チームが対戦。なでしこフレンズは佐々木女子委員長が監督を務め、永里さんと亜紗乃さんはじめ、澤穂希さんや川上直子さん、川澄奈穂美選手(アルビレックス新潟レディース)や福元美穂選手(岡山湯郷)など現役選手も参加し、元なでしこジャパンの名選手が顔をそろえた。優季フレンズには、長く親交のある水野晃樹さんや太田宏介さんらが出場した。

 試合は序盤から白熱し、得点を奪い合うシーソーゲームとなった。なでしこフレンズは先制点を奪われたが、すかさず澤さんが同点に持ち込む。永里さんは「この仲間が持っているサッカー観や感覚は、長いこと海外でサッカーしても味わったことが1度もないくらい特別なものですね。パスが出るタイミングやお互いの動き出し、言葉を交わさなくてもアイコンタクトで伝わる、感覚でわかっている。懐かしい感じでした」と喜びを噛みしめるようにプレーした。

 約50分間の試合では、永里さんがハットトリックを記録し、途中出場した源気さんがゴールを決めて5-4でなでしこフレンズが勝利を収めた。永里さんが決めた3点目は、亜紗乃さんのアシストによるものだった。「3兄妹で一緒のピッチに立つのは小学生以来」という永里さん兄妹と往年のなでしこジャパンのメンバーの固いチームワークで掴み取った勝利。最後に決めた豪快シュートは「これまでにない形の得点だった」と納得いくゴールで「これでハッピーエンドです」と満足げな表情を見せた。

 最後のスピーチでは、「今まで人に支えられて、寄り添ってもらって、サポートしてもらってきた人生でした。これからは私がその立場になって人の役に立てる、そういった人生をこれからは歩んでいきたいと思います。最高のサッカー人生でした」と語った。その直後に仲間たちに胴上げされ、宙を舞った。

 幼い頃に3兄妹でボールを追いかけた思い出が色濃く残るコンパクトなスタジアムには、1600人以上がびっしりと詰めかけた。スタンドからは万雷の拍手が送られ、永里さんは笑顔で手を振ってピッチを去り、次のステージへと歩みを進めた。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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