日本代表MFがチームの頭脳 ファン投票でPOTM…初のプレミアで躍動、英名門の象徴に

リーズ・ユナイテッドの田中碧【写真:ZUMA Press/アフロ】
リーズ・ユナイテッドの田中碧【写真:ZUMA Press/アフロ】

田中碧が開幕戦で見せた高パフォーマンス

 現地時間8月18日に行われたプレミアリーグ開幕節、今季昇格したリーズ・ユナイテッドがエバートンに1-0で勝利。日本代表MF田中碧はファンが選ぶプレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)に選出された。

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 2022-23シーズン以来、プレミアに帰ってきたリーズだが、ボールを保持して優勢にプレーしていた。バランスのとれた4-3-3システムとパスワークはなかなか洗練されていて、その中でも田中は約91%のパス成功率だった。

 ダニエル・ファルケ監督はドイツ人だが、プレースタイルはどこかオランダ的だった。ボルシア・ドルトムントのリザーブチーム、ノリッジ、ボルシアMGを率いていてオランダでの経歴はないのだが、整然としたポジショニングとパスワークにオランダ風味を感じる。

 田中のポジションは右のインサイドハーフ。キャプテンのイーサン・アンパドウが中央、アントン・シュタッハが左。この3人は時々入れ替わりはするが重複はしない。3人の攻守の比重も変わらず、いわゆるボランチが3人並ぶようなイメージである。

 図抜けた選手がいないかわりに全員がよく動き、正しいポジションをとろうとする。前半は一方的な攻勢でシュート数はリーズ12本に対してエバートンはゼロだった。

 後半はエバートンの保持が増えたが、前半はリーズのプレスが上手く機能していた。エバートンは4-2-3-1システムなので中盤は噛み合う。ただ、エバートンのセンターバック(CB)2人に対して、リーズの守備はセンターフォワードのヨエル・ピローだけなので1人はフリーになる。そこでリーズはインサイドハーフが前に出てプレスのスイッチ役になるのだが、主に田中がその役割を負っていた。

 ビルドアップの際は深く引いてCBからのパスを引き出し、相手を引きつけながら的確にボールを散らす。攻め込めばFWにスパッと縦パスを入れ、ペナルティエリア内にも走り込んで得点を狙った。

 田中は攻守に渡ってさまざまな役割を果たしていて、チームの頭脳である心臓ともいえるプレーぶりだった。サポーター投票で昨季のMVPにも選ばれているが、これだけチームプレーに関与し続ければ信頼も分厚くなろうというものだ。

 攻守に走り続けながら終盤にギアが上がったのは驚きだった。後半39分にはプレスでボールを下げさせ、下げたところをさらに追い込み、この田中のプレッシングからボールを奪ってPKを得た。ルーカス・ヌメチャが決めて、これが決勝点になっている。

 どちらも足が止まりかけているロスタイムに田中はなお走り続け、好プレーを連発。驚異的なスタミナをみせつけた。ただ単に運動量があるというだけでなく、無駄なく走れるのが田中の特徴だ。PKに結びついたプレッシングも、ここが勝負所と感じていたからだろう。

 フィジカルエリートばかりのプレミアリーグで、リーズのパスワークとハードワークがどこまで通用するかはまだ何とも言えないが、現在のプレースタイルに田中がフィットしているのは確かで、チームの象徴とも言える存在になっている。今季のリーズの浮沈は田中碧にかかっているのかもしれない。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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