材料高騰、天候が客足に影響「サッカーも同じ」 壮大な夢実現へ…元日本代表がキッチンカーと歩むセカンドキャリア

元なでしこジャパンの薊理絵さんが経営するキッチンカーではイモを使ったスイーツ「イモッフル」が看板メニュー【写真:増田美咲】
元なでしこジャパンの薊理絵さんが経営するキッチンカーではイモを使ったスイーツ「イモッフル」が看板メニュー【写真:増田美咲】

念願のキッチンカー経営 苦労もあるが充実の日々

元なでしこジャパンの選手、ちふれASエルフェン埼玉でプレーしていた薊理絵(あざみりえ)さんがキッチンカー店主としてセカンドキャリアを歩んでいる。看板メニューの「イモッフル」はワッフル生地の中にイモを練り込んで焼いた、ふわっとした食感が評判だ。どんなに行列ができても、現役時代と変わらぬ笑顔で接客する。「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューに真摯な言葉で語ってくれた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・砂坂美紀/全3回の3回目)

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 ちふれASエルフェン埼玉で14年間活躍していた薊理絵さんは、2024年3月にキッチンカー「Cafe GOOD DAY(カフェ グッデイ)」をオープン。キャリアチェンジしてから約1年5か月が過ぎた。ちふれASエルフェン埼玉の試合会場のスタジアムグルメとしても評判を呼んでいる。

 喜びや楽しさも大きいが、苦労が絶えない。屋外に出店するため、天候に左右されやすいのも悩みの種だ。悪天候の日は休み、夏の猛暑や冬の寒さで客足が途絶えることも当たり前にある。原材料の仕入れ値も高騰しているが、価格は上げずに踏ん張っている。

 それでも、薊さんは前を向く。念願のキッチンカー経営を実現させて、充実の日々だという。

「いろいろあるのは仕方ないですよね。それはサッカーでもどんなことでも同じ。夏はイモッフルよりも、かき氷が多く売れることもありますよ。ずっと氷を削っている日もあるくらいです(笑)。エルフェンのファンの方が通勤前に通ってくださったり、たまたま立ち寄った方が試合を見ていたり。サッカーから離れてイチから始めようとスタートしたんですけど、結局は助けられていて。ずっとエルフェンにいたからこそ、今があるのだと感謝しています」

 普段は薊さん一人でお店を切り盛りしているが、元チームメイトの3人も運営に関わっている。元エルフェンのGK大谷明香(おおたに はるか)さんはキャプテンを務めていたこともありリーダー的な存在。デザインや料理が得意で、お店のメニュー表やポスターなどを手掛け、将来的に出したいと考えているカレーライスのレシピを1年以上かけて完成させるなどマルチな才能を発揮している。現役時代から理学療法士として13年間勤めていた埼玉県の尚寿会病院で出店する際は店頭に立ち、彼女を目当てに訪れる人も多い。現在は、埼玉県狭山市で「コンディショニングルームGOOD DAY(グッデイ)」を経営し、施術を行っている。

 元DF矢島由希さんはちふれホールディングスの社員として働きながら、元DF布山美里さんは地方在住のため“レアキャラ”として、時折お店で働いているという。4人それぞれが無理せず、チームワークを大切にキッチンカー経営している。

薊さん(写真左)ら元チームメイト4人でキッチンカー運営。元AS埼玉のGK大谷明香さん(写真右)はコンディショニングルーム経営の傍ら、店頭に立つ【写真:増田美咲】
薊さん(写真左)ら元チームメイト4人でキッチンカー運営。元AS埼玉のGK大谷明香さん(写真右)はコンディショニングルーム経営の傍ら、店頭に立つ【写真:増田美咲】

将来の夢は繋がる場所をテーマにしたパーク作り 選手とアンバサダーの経験を活かす

 今は、キッチンカーの運営に集中している薊さん。「まだこれが完成形ではないんです」という。ゆくゆくは実店舗を構えたいという、将来についても想いを馳せてもらった。

「今まだ先のことは全く想像できないんですけど、夢はあります。広い敷地内で、サッカーができるスペース、飲食できるカフェ、身体を整えるコンディショニングルーム、複合施設のような“繋がる場所”をテーマにしたパーク的な場所を作りたいですね。サッカー教室も食事もケアも体験できる空間を提供することが大きな夢ですね」

 エルフェンで14年間の選手生活、クラブアンバサダーを3年間経験したことで、描くことができた夢なのだという。

「試合会場での、選手やスタンドのお客様、それを支えるスタッフ、それぞれの立場を超えたスタジアムの一体感ってやっぱりすごいですよね。みんなで作り上げる空間が大好きで。それを間近で感じたからこそ、自分でもそういう空間作りしてみたいなって思っています。いつか、日常的に体験できる空間を提供できたら最高ですね」

 こちらの想像を超えるようなプレーを繰り出すのが、薊さんが選手として長年活躍してきた理由のひとつだ。そんな彼女らしい、セカンドキャリアが大きく広がっている。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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