J名門本拠地は「スタグルの聖地」 メニューに厳しい基準…関係者も注目する譲れない“こだわり”

【ファンサービスの舞台裏】Jリーグクラブ内でも注目のスタジアムグルメ
“日本サッカーを共に盛り上げる”をコンセプトに掲げる「FOOTBALL ZONE」がクラブや選手の魅力を深掘りする「ZONE的Jクラブの深層」。今回は「ファンサービスの舞台裏」と題し、横浜F・マリノスのスタッフ2人のインタビューをお届けする。1人目は、Jリーグ運営正担当の鈴木彩貴氏。他クラブからも高い評価を受けているというスタジアムグルメ(通称スタグル)について、そのこだわりを教えてもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治/全2回の1回目)
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日産スタジアム・東ゲート前の「トリコロールランド」と西ゲート広場に常時40店舗以上のキッチンカーが並ぶ横浜F・マリノスのスタジアムグルメ。実はここが「スタグルの聖地」と呼ばれ、SNSで話題になるだけではなく、他のJクラブ関係者も毎試合のように視察に訪れるほど注目のスポットであることをご存知だろうか。
和洋中、ガッツリ系からスイーツ、コーヒーやビールの飲料に至るまで、来場者を楽しませるバラエティー豊かなメニューの数々が並ぶ。全体のバランスには細心の注意が払われ、人気の一皿はそのままに、都度加えられるアップデートとともに新しい楽しみも用意される。
そんな横浜F・マリノスのスタジアムグルメの運営・プロデュースを手掛けているのが、キッチンカー派遣会社「Catering&Delivery Service Association(CDA)」(本社:神奈川県横浜市)だ。スタグルの聖地と呼ばれるには理由がある。
「CDAには1500台を超えるキッチンカーが登録をされていますが、その中でも味やオペレーション、ホスピタリティなど、トップレベルの基準を満たすキッチンカーしか出さない方針の下で日産スタジアムのスタグルは運営されています。しかも、CDA社員が実際に登録店舗へ足を運んで味を確認し、そこでゴーサインが出たメニューしか提供されない厳しい審査基準が設けられているんです」

それゆえ、日産スタジアムでの出店を実現できたキッチンカーは「業界内で一目置かれる存在」になるのだとか。そして、選ばれし40店舗になるためには“オーディション”とも呼べる限られたチャンスがあるのだという。
「年に5回、10店舗が西地上階グルメエリアに追加で出店されるイベントがあり、8月23日の『トリコロールギャラクシーナイトシリーズ』最終回(FC町田ゼルビア戦)もその1日です。ここで実績を上げられれば、常時出店をしている40店舗に食い込めるようになっています」
ということは、入れ替えも存在するわけだ。鈴木氏はこう説明する。
「CDAのチェックはとても厳しくて、売り上げが良かったとしても接客などで求められる基準を満たしていなければ出店を見送ることがあります。それくらい出店側の緊張感も大切に運営が行われているんです」
さらに、キッチンカーが出店する東西それぞれのエリアにCDAによる“デザイン”があるというから驚きだ。
「キッチンカーの出店場所は毎試合、調整が行われています。ボリュームのあるメニューからデザートやコーヒーまで、何のジャンルをどこに置いて導線を設計するかが緻密な戦略の下で練られているんです。だからこそ、お客様それぞれのニーズによって食べたいもの・飲みたいものをうまく見つけられる仕組みになっています」

メニューのクオリティ維持と回転率
横浜F・マリノスとCDAが契約を締結したのは2019年1月に遡る。鈴木氏曰く、それ以来徹底して貫かれてきた方針が「料理のクオリティ維持」だという。ただ、質を重視して調理に時間をかければ問題も出てくる。店舗にとっては回転率の低下が売り上げに影響し、来店客には長い待ち時間を強いる恐れがある。このバランスをどうしているのか。
「料理のクオリティは絶対に落としたくないのが本音で、回転率と料理の質の関係は限界ギリギリとも言えるバランスで保たれているのが現状です。これまでに各店舗における料理の提供時間の短縮に向けてCDAと工夫を凝らしてきましたが、これ以上は難しいというところにきています」
コンセプトを守ることで、苦渋の決断を迫られたことがある。こんなエピソードを明かしてくれた。
「地産地消のメニューによる運営を検討したこともありましたが、これだとどうしても料理のクオリティを保つのが難しいとなり、結局実現しませんでした。クラブが地域に根差したものである以上、地域性という観点で料理にクラブらしさを打ち出すことも確かに選択肢ですし、いいかもしれません。それでも私たちにとって譲れないのが料理の品質ですから、そこでお客様を楽しませたい、喜ばせたいという考えは一切ブレさせないようにしてきました」
今やJリーグのスタジアムグルメは、SNSを中心に海外のファン・サポーターからも熱い注目を集めている。メニューの高いクオリティが維持されつつ手頃な価格帯で提供されているのが、その最たる理由だ。ただし、そうした質の高いサービスの背景にはクラブ関係者と運営企業による確かな哲学と途方もない努力がある。

【試合情報】
開催日:8月23日(土)
カテゴリー:J1リーグ第27節
対戦カード:横浜F・マリノス対FC町田ゼルビア
キックオフ時間:19時30分
試合会場:日産スタジアム
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(FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi)




















