快進撃の裏で…欧州日本人が抱える“葛藤”「甘んじたくない」 アキレス腱断裂から目指す代表への道

アキレス腱断裂の大怪我から復帰を果たした谷口彰悟【写真:PsnewZ/アフロ】
アキレス腱断裂の大怪我から復帰を果たした谷口彰悟【写真:PsnewZ/アフロ】

谷口彰悟は開幕から途中出場が続いている

 昨季、33歳にして初の欧州挑戦に挑んだ谷口彰悟は、新たなチャレンジに燃えていた。実際、加入したベルギー1部シント=トロイデンでは、第3節からスタメン起用されて順調なスタートを切り、個人としても新たな舞台に身を置き「自分の中で手応えを感じていた」という。

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 しかし、11月9日に行われた第14節のメヘレン戦で谷口にアクシデントが起こる。試合途中に負傷交代を余儀なくされると、試合後、左足首のアキレス腱断裂と診断されたのだ。「まだまだできるな、まだまだ伸びて行けるなという自信を掴み始めていた時期だったので、正直、残念でしたし、悔しかった」。次なる成長への道筋は見えていた。だが、その道がいきなり目の前から消えてしまった。

 今となれば、「今回の怪我がより自分自身を見つめ直すきっかけになったのは間違いない」と振り返ることができる。ただ、その言葉にたどり着くまでには時間を要した。

「なかなか先が見えなかったので、すぐに切り替えて強くなってやるという気持ちにすぐなれたかと言われれば正直そうではない。本当に足がつかない状態からのスタートだった。本当にまずはちゃんとサッカーをできるようになりたいという思いが一番強かったですね」

 自身としても初となる長期の大怪我。「自分がプロサッカー選手としてどうありたいか、どういうことをしていきたいかを考えるには十分な時間だった」とする言葉にも、長い時間をかけて考えを巡らせていた辛苦が垣間見える。

 それでもコツコツとリハビリを続けた結果、昨シーズンの最終戦でピッチに復帰。オフシーズンもしっかりとコンディション調整に努め、新シーズンの開幕戦から途中出場で元気な姿を見せた。昨季の怪我もあり「今シーズンにかける思いは強くなっている」という谷口は、現状の状態を説明した。

「正直、状態は悪くないと思っています。むしろいい状態を保てていると思っているので、90分出るのも何も問題ないなと。ただ、ピッチが人工芝だったり天然芝だったりでフィーリングがちょっと変わってくるので、そこら辺は監督やスタッフと相談しながら進めさせてもらっています。自分の中では100%でやれる自信はありますけど、今はチームの状態が悪くないのでメンバーを変えるのが難しいのはわかっているし、今はいつでもいける準備をしながらやっていくだけです」

 開幕から3勝1分と快進撃が続くチームの中で、ここまで途中出場が続く。今季、周りの選手がステップアップしたり、若手選手が海外に旅立ったりと、来年に迫るW杯のポジション争いを考えると、現状については焦りを感じているところもあるはずだ。ただ、谷口は「いま僕にできることは自分ができることに集中してやり続けること」と語りつつ、改めて今季にかける決意を言葉にした。

「ヨーロッパに来て、ただやっているだけでなくて、突き抜けていきたいなという思いを持っています。STVVは近年、ベルギーの中でトップトップを戦えるチームではなかったですけど、そこに甘んじたくない。自分のプレーをやりながら、やはりチームとして結果を出していくことがサッカー選手である以上、必要なこと。そこは全力でやっていこうかなと思っているところです。

 怪我をした後、本当に色々な人に支えてもらいながらここまできたことに感謝してもし切れない。そういった方々の思いも含めて、自分がもう一回、躍動している姿を見せたいなと。『谷口ってアキレス断裂してちょっと落ちていったよね』と思われるんじゃなくて『ここまで復活できるんだ』というところを見せたいという気持ちが強い。それこそ、STVVで活躍するのもそうだし、代表でももう一度活躍する姿を見せたい。そこに向けてもう一つギアを上げていきたいです」

 復活のシーズンへ。周りへの感謝と強い覚悟を胸に秘めた男は、ベルギーの地でチームを勝利に導きながら代表への道を目指していく。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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