J複数クラブ争奪戦も…逸材18歳「しっかりと考えて決めたい」 総体優勝へ導いた頭脳

神村学園の中野陽斗【写真:FOOTBALL ZONE】
神村学園の中野陽斗【写真:FOOTBALL ZONE】

神村学園の中野陽斗「大学ではなく、プロの舞台で学んで努力をしていきたい」

 8月2日に幕を閉じたインターハイ男子サッカー。昨年度から5年間、福島県での固定開催となったこの大会は、全国の予選を突破した51校が激しい戦いを演じた末に、神村学園と大津がファイナリストとなった。決勝は激闘の末に2-2からのPK戦で神村学園に軍配が上がった。

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 昨年度のインターハイ決勝で昌平に延長戦の末に2-3で敗れ涙を飲んでから1年。同じ場所で初の栄冠を手にした神村学園のキーマンたちの物語を紹介していく。

 第4回はプロ注目の3年生CBの中野陽斗について。ハードマークとラインコントロールのうまさに秀いで、コミュニケーション能力が高く、コーチングも冴え渡ったディフェンスリーダーが描く未来像とは。

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「僕らのチームの武器は随一と言える中盤の構成力と推進力、そして前線の3枚(倉中悠駕、徳村楓大、日髙元)の破壊力。CBとしてこの強みを引き出すことを意識しています」

 決勝後、中野はこう口にした。ボランチの福島和毅、アンカーと3CBの右をこなした堀ノ口瑛太も同じような言葉を口にしていたように、これはチームとしての統一意識としてあった。だが、大会を通じてこの攻撃的なスタイルを実行できたのは、2CBの一角であり、キャプテンである中野の存在はとてつもなく大きかった。

「中野のコーチングが的確で、彼の声を聞きながら判断するシーンも多かった」と堀ノ口が口にしたように、最初から最後まで途切れぬ彼の頭脳と声が、チーム全体を動かしていた。

「サイドバックを落とさないこと、そのスペースをボランチの選手たちをスライドさせて埋めて、さらにそこを突破してきたら僕ら(今村太樹)CBがアタックに行くことを意識しました。大事にしたのは、周りをうまく動かしながら、守備から攻撃に切り替わったときに前に残した選手たちを使って崩して、3トップにつなげていく。

 プレミアリーグでは3バックのときが多いですが、3バックのときも僕が中央で両サイドのCB(堀ノ口と今村)の3枚で中央を固めて、中盤をなるべく落とさないようにして、サイドのスペースはどちらかのCBをアプローチさせて、自分がカバーすることを意識しました」

 自分たちのフォーメーションと相手のフォーメーションの噛み合わせ、中盤から前を後ろに重くさせない、かつ中央を空けないというチームコンセプトに基づいたポジショニングや、守備のアプローチを頭の中で考え、試合中は自らのプレーと周りを動かす声に反映させていく。

 さらに細かい技術も目を引く。印象的だったのはボールのトラップの仕方だ。CBの選手は例えば利き足が右だった、右足トラップの際にすぐにボールが蹴れるように、身体をオープンに開いてトラップをしてから蹴ることが多い。中野はそういうシーンもあるが、多用しない。体を閉じた状態で足元でトラップをしたり、自分の前にボールを晒すトラップをしたりする。その理由を聞くと、彼の思考と能力の高さが窺えた。

「オープンにトラップをしてしまうと、相手からすると『そのまま右に出す』とパスコースが限定されて読まれやすくなるし、プレスをかけやすくなってしまいます。分かりやすくコースを限定してしまうより、僕は運ぶドリブルも左足のキックも得意なので、足元に止めたり、前に止めたりした方が効果的だし、相手もどこに出すのか迷うし、ドリブルを警戒して下がってくれる。

 それに足元に止めたほうが、ウチの中盤と絡みやすくなる。有村(圭一郎)監督からも『どんどん相手を割っていくような運び出しをしろ』と言われていますし、実際にプロの練習に参加をしても、相手に割って入っていくようなトラップ、運び出しは有効的だと思ったので、そこは日頃の練習や意識を持つ成果を出せました」

 まさにピッチ上で頭脳と技術を発揮する中野のもとには、すでに複数のJクラブから獲得オファーが届いている。だが、まだいろいろなクラブに練習参加をしている段階で、決断は下していない。

「重要な決断なので、しっかりと考えて決めたいです。はっきりしているのは、CBは経験がものを言うポジションなので、大学ではなく、プロの舞台で学んで努力をしていきたいです」

 しっかりと腰を据えて未来を見つめる18歳。周りをよく見て、思考し、発信しながら自分を表現するのはプレーだけではなかった。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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