「やっぱり青森山田と言われてしまう」 24連覇阻止も…“西の横綱”から浴びた洗礼

八戸学院野辺地西高3年MF阿部莞太、強豪・大津戦で「痛感しました」
7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を勝ち抜いた51校が、真夏の王者の座を懸けて激闘を繰り広げるなか、今大会では惜しくも敗れた「敗れし者たち」に焦点を当てていく。
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第8回は、2回戦でプレミアリーグWEST所属の強豪・大津に0-3の完敗を喫した八戸学院野辺地西の背番号10、阿部莞太。青森県予選決勝で24連覇中だった青森山田をPK戦の末に破り、初の全国大会出場を果たしたなか、背番号10のボランチが感じた“未知なる領域”とはなんだったのか。
県予選で青森山田という厚い壁を突破したその先に待ち受けていたのは、“西の横綱”である大津だった。
試合は開始10分でセットプレーから失点。さらに32分には、Jクラブも争奪戦を繰り広げているDF村上慶に追加点を許し、前半アディショナルタイムにも3点目を奪われる苦しい展開となった。
「相手が大津と決まった時はみんな楽しみな気持ちでこの試合を迎えたのですが、立ち上がりから上手くて、速くて、質の高さを痛感しました」(阿部)
前半で一気に突き放されてしまうも、ここでチームは折れなかった。ハーフタイムに三上晃監督が逆サイドの応援席を指して発した言葉が、選手たちの心に火をつけた。
「こんなに応援してもらっているのに、みっともないゲームはできないぞ」
阿部もチームも、その言葉でスイッチが入った。
「(学校がある青森県上北郡)野辺地町は僕の地元で、ずっと青森山田さんに立ち向かっていく姿に憧れて入学を決めました。3年生になってついに全国に出られるのに、このまま終わってはいけないと、後半は気持ちをもう一度持ち直して戦いました」
得点こそ奪えなかったが、後半は0-0と互角の戦いを演じた。そのなかで阿部は豊富な運動量と球際の強さを生かした守備に加え、右足のキックでも奮闘。しかし、全国トップとの力の差もまざまざと感じさせられる結果となった。
「僕らはまだまだ県内レベルでした。個人的には相手の2ボランチはきちんとボールを収められるし、運べるし、サイドにも展開できる。プレスに行っても回避され、守備がなかなかハマらなかった。うしろを向くことが多くて、身体のアングルも思うように作れなかった。チームと自分の課題が明確に見つかった試合だったので、帰ってすぐに練習に取り組みたいと思います」
地元で戦う決意を固めた原点「青森山田さんを倒したいと思った」
確かに今回の敗戦は苦い経験だったかもしれない。だが、それは同時に、野辺地西が長年の壁を越え、歴史を塗り替えたからこそ踏み込めた“未知の領域”でもあった。そして阿部は、その意味をしっかりと理解している。
「大津さんに負けたことで、『青森はやっぱり青森山田だな』と言われてしまうと思います。でも、それで下を向いている暇はないし、この間に青森山田さんは必死で練習をして間違いなくインターハイ予選決勝より成長をしていると思うので、それを超えていかないといけない。まだ夏はこれからで、本当に頑張らないといけない。僕個人もきつい時にボールを収められたり、個の力で回避できたりする全国レベルの選手になりたい。ここで得た全国の基準をもっと上げて全力で練習に取り組みたいです」
そんな彼には、忘れられない原点がある。3年前、進路に悩んでいた。県内に残るか、県外に出るか、それともヴァンラーレ八戸U-18に進むか。この3つの選択肢で迷うなか背中を押したのは、スタジアムで観戦した青森山田vs野辺地西の選手権予選決勝だった。延長戦の末、1-2で惜敗した先輩たちの姿に胸を打たれ、地元で戦う決意を固めた。
「先輩たちの思いを背負って野辺地西のユニフォームを着て青森山田さんを倒したいと思いましたし、入って感じたのは地元の人たちが本当にチームに協力をたくさんしてくれて、応援してくださるからこそ、僕らは毎日活動できているということ。本当に感謝の気持ちしかないので、この気持ちを大事にしてこれからもやっていきたいです」
全国に出ることがゴールではない。冬の選手権で再び全国の舞台に戻ってくるために――。阿部莞太は、地元愛とチーム愛を胸に刻み、さらなる自己研鑽に励む。
(FOOTBALL ZONE編集部)



















