WEリーグが打ち出す“5つの大変革” 広島の2万人集客に続け…リーグとクラブ一体で目指す発展

新シーズンにさまざまな施策が行われることとなったWEリーグ【写真:(C) WE LEAGUE】
新シーズンにさまざまな施策が行われることとなったWEリーグ【写真:(C) WE LEAGUE】

野々村チェア「今季はWEリーグが自立するために、結果を出さなければいけない」

 日本女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が変革の時を迎えようとしている。リーグが発足して5年目。より魅力的で、多くのファンに応援してもらえるリーグを目指し、8月9日に開幕する2025/26シーズンに向けて、さまざまな施策に打って出ることになった。

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 WEリーグは7月30日に「2025年度第1回定時理事会」を実施し、複数の取り組みについて明らかにした。具体的には「1万人以上の入場者数を目指す注力試合の設定」「月間表彰制度の設置」「マーケティング基盤の構築」「カップ戦におけるPK戦導入」などだ。すでに発表されていた「開幕の前倒し」も含め、さらなる発展のため、この1年は変革の1年とする。

 最も重要なのは“集客力アップ”だ。昨季、WEリーグはカップ戦込みで累計33万7290人を動員した。これは過去最多を更新する数だったものの、1試合平均では2044人にとどまる。

 ただ、2025年5月6日に国立競技場で行われたジェフ千葉レディース対大宮アルディージャVENTUSの一戦で歴代最多の2万6605人が来場。同年3月8日のサンフレッチェ広島レジーナ対浦和レッズレディース(エディオンピースウイング広島)、2024年12月29日のクラシエカップ決勝サンフレッチェ広島レジーナ対INAC神戸レオネッサ(国立)でも2万人超がスタジアムに駆けつけた。

 2万人を超える試合が3試合あったことで、WEリーグでも多くの観客数が見込めることが分かった。特に、3月に本拠地に2万人超を集めた広島レジーナの “1万人プロジェクト”は好例で「自由すぎる女王の大祭典」というキャッチーなコピーをはじめ、選手たちが3つの委員会に分かれて、イベント、グルメ、演出を企画したり、地域の人と接点を作ってチームやプロジェクトの認知向上、来場を呼びかけたり、チームのSNSなどを活用し、サポーターを増やす活動を行ったりし、目標にしていた1万人をはるかに上回る2万156人が来場した。

 さらに、これに影響を受けたセレッソ大阪ヤンマーレディースが5月17日のリーグ最終戦・大宮戦で「「#1万人よ咲き誇れ ~CEREZOファミリーいざ集結~」を企画。1万294人を集めて目標を達成した。これらを例に、野々村芳和チェア(理事長)は「リーグはどうクラブの成長をサポートできるかっていうことがすごく大切だと思うので、リーグとしても注力して、たくさんのお客さんを入れようとするゲームに対して人的なサポートとか金銭的なサポートするみたいなことを、今年は1つの形として作りたい」と語る。

 パイロットクラブを最大で6クラブ設定し、1万人を集客目標とする試合に絞って、リーグ側も人的、資金的なサポートを実施。“集客注力試合”としてリーグから1試合100万円の補助金を出し、プロモーションの専門家も派遣する。「双方で一緒になって盛り上げていくというような体制をまず作る」と野々村チェアが語るように、そこで得られた事例やノウハウは、他のクラブにも共有され、リーグ全体で集客増につなげていく狙いがある。

また、マーケティング基盤の開発にも乗り出す。2026/27シーズンに向けて数千万円規模を投資。リーグとクラブが一緒になってマーケティング施策に取り組んでいけるように仕組みを整備し、クラブ側のマーケティング担当者のトレーニングなどにも乗り出していくという。野々村チェアは「サッカー界全体で一緒になって、サッカーのマーケットを大きくしていく」と、日本サッカー協会やJリーグとも連携したうえでのボトムアップにも期待を寄せる。

 すべての試合の注目度を上げるべく“月間表彰”として「月間ベストオフェンス賞」と「月間ベストディフェンス賞」を新設。黒田卓志事務総長は「WEリーグにもたくさんいいプレー、いい選手がいる。ぜひそこに注目してもらいたい」と語る。検討当初はベストゴールだったが、WEリーグ公式の動画で昨季もっとも再生数が多かったのが、塩越柚歩選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)のトラップ。ゴールに限らず、トラップやドリブル、パスといった技術やチームでの連携、攻守両面のあらゆるプレーに注目してもらいたいとの思いで「ベストオフェンス」「ベストディフェンス」となった。

 クラシエカップでは今季からグループステージからPK戦を導入する。90分で決着がつかない場合に勝敗を決めるだけではなく、PK技術の向上も目的としており、元なでしこジャパンGKらしい海堀あゆみ理事の発案で「日頃からPK戦を経験することで、今後の国際舞台でも活かせる」と導入が決まった。もちろんエキサイティングな場面を増やすことで、エンターテインメント性を高めるという側面もある。

 今季はこれまでの9月開幕から1か月前倒しし、8月9日にリーグ戦が開幕する。平日開催を無くし、ウインターブレイクも短縮した。「(試合が)途切れないようにっていうのは、選手のためにも、世の中の人たちに情報を届ける上でもすごく大事なことなんじゃないかと思って、変えたというところが背景にあります」と野々村チェア。試合の間隔を確保することで選手がコンディションを整えやすく、チームとして戦術の積み上げもできる。ファンやサポーターとの接点も増やすことができ、興行面でのプラスにも期待する。

 WEリーグがコロナ禍で発足してから5年。理事会の冒頭、野々村芳和は「宮本(恒靖)副理事長との体制になってから半年以上が経過しました。今シーズンはWEリーグが自立するために、結果を出さなければいけない」と決意を示していた。より一層愛され、永く継続していくために、変革を続けながら、女子サッカーは発展を目指していく。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)



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