178センチの“小さな巨人”「かかってくれ」 待ちわびるオファー…大金星導いたアクション

新潟戦に出場した4年生の福原陽向【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
新潟戦に出場した4年生の福原陽向【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

東洋大4年DF福原陽向、高い身体能力と漲る闘志で最終ラインを統率

 天皇杯3回戦。大学勢で唯一残っている東洋大は、7月16日にアルビレックス新潟とアウェイの地で戦い、2-1で勝利。2回戦で柏レイソルを延長戦の末に2-0で下したのに続き、今回の大金星と、大会史上初の2試合連続J1撃破という偉業を成し遂げた。

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 ここではこの歴史的快挙を実現させた選手たちの物語を描いていく。第2回は178cmとCBとしてはサイズがないが、高い身体能力と何より全身から漲る闘志で最終ラインを束ねる福原陽向について。岡部タリクカナイ颯斗や山本虎ら1、2年生を支える4年生の輝きとは。

 名は体を表す。福原陽向を見ていると、そんな言葉を思い出す。

 試合中、ピッチ上の表現が実に豊かな選手で、アルビレックス新潟戦でも彼は大きな声だけではなく、両手を広げたり、足をドンっと踏んでから大きなジェスチャーで指示を出したり、何度も両手を上下に上げて鼓舞するなど、最終ラインの中央で仲間たちにコーチングと士気を高める声かけをし続けていた。

 もちろんプレー面でも178cmとCBとしては上背こそないが、バネとジャンプする絶妙なタイミングを駆使して、空中戦では一歩も引けを取らなかった。対人面でも裏に来たボールに対し、身体を入れながらクリアしたり、CB岡部や左サイドバックの山之内佑成が前に出たときにカバーリングから鋭い寄せを見せてボールを奪ってみせたりと、まさに最終ラインの番人にふさわしい存在感だった。

「自分の中で必死だったのかなと思いますが、普段の試合会場より明らかに声が通らない状態なので、いつも以上に大きな声を出したり、アクションをしたりしました。どうしても伝えたいところは何がなんでも伝えたいと思いますし、何より勝ちたい気持ちがとても強かったのでそういうところが出たのだと思います」

 思い起こせば、彼は高校時代からそうだった。鹿島アントラーズつくばジュニアユースからユースに昇格。中学時代はCBとボランチをこなし、高校1年生の時は右サイドバックだったが、2年生からCBに戻ってずっとCBをやっている。

 当時から常に周りを見て、苦しい時に声を出し、ジェスチャーで仲間を鼓舞する選手だった。確かに柏レイソル戦、新潟戦のアクションはいつもより激し目だったが、普段からそうじゃないとあそこまでの闘志溢れるアクションは出てこない。

「言われてみれば、普段も確かにそうかもしれないですよね」

 そう語る彼の両手は動いていた。ミックスゾーンで呼び止めて10分ほど話したが、その間もずっと彼は両手でアクションを交えながら、話してくれていた。それほど「自分の思いを伝えたい」という気持ちがヒシヒシと伝わってきたし、何よりこちらの質問に対してもしっかりと耳を傾けて、会話する姿勢を向けてくれた。

 だからこそ、彼の思いは伝わる。名前のように陽に向かっていく。明るく、持っている熱い情熱を人に向けられる人間だ。プレーにそれが滲み出ているからこそ、目を惹きつけられる。

 4年生である彼のもとにはまだJクラブからのオファーは届いていない。

「もちろんプロになることを目標にしていますし、まだ声がかかっていない現実は理解しています。だからこそ、こうやって試合に出続ければチャンスはあると思います。天皇杯のような大舞台で自分を精一杯表現して、チームとして結果を出すことでスカウトの人たちの目に止まる選手になれると思っています。もちろん心の奥底では『(スカウトの目線に)かかってくれ』という願望は強いですが、そこは自分がコントロールできる範疇ではないので、僕は目の前の試合に全力を尽くすだけです」

 その表情は太陽のように輝き、拳は強く握り締められていた。表現力豊かな福原は、これからも陽に向かって情熱を周りに伝え続けるだろう。それがいつか自分に大きなプラスとなって返ってくることを信じて。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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