「もう長友は終わり」 950日ぶりピッチで初めて漏らした「苦しい」…重い一言に隠れた背景

中国戦にスタメン出場した長友佑都【写真:Noriko NAGANO】
中国戦にスタメン出場した長友佑都【写真:Noriko NAGANO】

長友佑都が示した「日の丸を背負って戦う誇り」

 日本代表DF長友佑都は7月12日、韓国で行われているEAFF E-1サッカー選手権の中国戦(2-0)で2022年カタール・ワールドカップ(W杯)以来、950日ぶりの出場を果たした。背番号5、主将マークを巻いた38歳はフル出場。不慣れな3バックの左でも“長友ここにあり”を見せつけた。「苦しいの一言」だったここまで。昨年3月に日本代表へ復帰を果たしてからの初ピッチで“正解”を示した。

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 覚悟、経験、大和魂ーー。長友が日本代表で体現し続けたことは、そんな簡単な言葉では表せない。主将マークを巻き、先頭で入場した中国戦。950日ぶりのピッチに足を踏み入れた長友の表情からはいつにも増して闘志が伝わってきた。3バックの左で体を張り続け、空中戦でも相手より早く反応して対人での強さを発揮。前半37分には左クロスを上げられるもファーサイドで長友がブロックした。38歳主将が出場した一戦はFW細谷真大とDF望月ヘンリー海輝の2ゴールで見事勝利を収めた。

「僕の強みなんで、ストロングの部分だし、対人で負けないとか、寄せる速さとか、空中戦も今日はしっかりと勝ててましたし。そういったところをしっかりと見せたいという気持ちでやってたんで。ま、それが伝わったのは良かった。やっぱりこの日の丸を背負って戦うっていうのは非常に誇りだし、名誉なことだし。カタールW杯以来のね……。本当に試合に出られなくて悔しい思いしてきたけど、とにかく出たら、魂込めて戦うということだけは決めていたので、少しでも皆さんにそれが伝わったなら嬉しく思いますけど、でも、まだまだやっぱり自分は高いところを目指しているんで、やるべきことはこれからまだまだ多いなと、いうのが率直な感想」

 昨年1月のアジアカップ、日本はベスト8で大会を後にした。優勝を期待されながら、まさかの早期敗退。3月にはW杯2次予選での最大の山場・北朝鮮戦が控えている中で、改めて世代交代していたチームをまとめるために招集されたのが長友だった。初戦はベンチ入り。だが、その後12試合連続でベンチ外だった。最終予選に入ってもチームは無敗を続けて、8大会連続のW杯切符を獲得。長友はどんな時でも森保一監督と選手たちの間に入る“中間管理職”で仲間たちが最大限のパフォーマンスを発揮できるように盛り立ててきた。チームが結果を出した一方で、自らはピッチに立てなかった。「悔しい。試合に出るために最大限の準備をするだけです」。何度、自らの役割を問われてもそう答えてきた長友が初めて漏らした感情があった。

「いやあ、もう苦しすぎましたね。苦しいの一言です。ただ、僕はその逆境とか、苦しみから、これまでも何度も這い上がってきたんで。もう長友終わりだぞって、思っていたかもしれないですけど。僕はひたすら自分のことを信じてやってきたんで。全然まだまだのレベルですけど、もっと皆さん驚かせるようなプレーをできるようにこれから頑張っていきます。まだ、まだ次、韓国戦ある。引き締めて頑張ります」

 所属のFC東京でも出番を得られているわけではない。今季は14試合の出場だが、合計555分。直近2試合では途中からで9分、2分と出場時間も限られていた。それでも、ピッチに立てば言い訳はできない。これまで自らに向けられたどんな言葉もパワーに変えて示したのが中国戦でのパフォーマンスだった。

 950日。W杯を終えて38歳になった。世界でもFWリオネル・メッシやFWクリスティアーノ・ロナウドら偉大な選手しか成し遂げていない、日本史上初の5大会連続出場に向けて、なぜ長友がチームに必要だったのか答え合わせした。国際Aマッチ143試合目からまた新たに積み上げる歴史。1分1秒目を離してはいけないーー。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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