駒澤大学1年生FW石川大也、全国行きを決めた決勝弾

　夏の「大学サッカーの全国大会」とも言える総理大臣杯の関東代表を決めるアミノバイタルカップ。関東大学サッカーリーグ1部、2部、3部、さらには都県リーグの垣根を超えた一発勝負のトーナメントでは、毎年のように数々のドラマが生まれる。プロ内定選手、Jクラブが争奪戦を繰り広げる逸材、そして彗星のように現れた新星が輝きを放つ。今大会も6月5日から29日にかけて開催され、注目を集めた選手や印象深いエピソードを紹介していきたい。

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　第13回目は、関東第10代表で総理大臣杯を決めた駒澤大学の1年生FW石川大也。最前線で何度も高速スプリントを繰り返し、チームにダイナミズムを与えるルーキーの素顔に迫る。

　とにかく走る。とにかく頑張る。青森山田高校時代からそう印象を抱くFWだった。

　168センチと小柄ながら、その身体から放たれるエネルギーは圧倒的だ。前線で休まず走り続け、驚異的な運動量でハイプレスの号砲を鳴らす。ボールを収めて展開し、時には真っ直ぐにゴールへ迫る。常にチームのためを考えて動き、果敢にゴールを狙い続けている。

「高さがない分、ボールへの反応だったり、プレスのスピードやスペースに飛び込んでいくスピード、思い切りの良いシュートを意識したりと、小さいなりにもできることをやる。僕の武器は運動量で、シャトルランを何本もやって息が上がった状態でもボールコントロールやシュートが打てる選手になりたいと思っています」

　駒澤大に進学後も、そのスタイルは一切ブレないどころか、よりダイナミズムが増している。アミノバイタルカップではその能力を惜しげもなく開放した。

　初戦の東京農業大戦では終盤からの投入だったが、ラウンド16の東洋大戦でスタメン出場。186センチのFW渡邉幸汰と2トップを組み、渡邉のポストプレーの落としを受けたり、セカンドボールを回収して展開した後にゴール前へスプリントするなど、持ち味を発揮した。試合は延長でも決着がつかず、0-0のままPK戦で敗れたものの、彼はチームトップとなる走行距離13kmを記録した。

　続く一戦は、勝てば総理大臣杯出場が決まる東京国際大との大一番だった。再び渡邉との2トップでスタメン出場した石川は、前半22分に得た左サイドのFKでニアサイドへ飛び込み、後藤康介のキックに頭で合わせてゴール。後半に交代を告げられるまで、彼は攻守両面で走り続けた。石川のゴールが決勝弾となり、チームは全国の切符を手にした。

「4年生はいろいろな思いがあると思う。その中で1年生として試合に出させてもらっている以上、常にチームのために全力で走らないといけないと思っています」

　彼らしい胸のすくような言葉だった。

青森山田のセレクションで見事合格、雪中サッカーで鍛えた走力

　神奈川県出身の石川は、中学3年生の夏まで湯河原町立湯河原中学校のサッカー部でプレーしていた。「ずっと選手権に憧れていました。ただ出るだけではなく活躍するために、青森山田でプレーしたいと思っていました」と熱い思いを抱いていた彼は、中体連の選手のみで形成する県西選抜に選ばれていた。

　そのチームの監督だった大久保智史氏は、元青森山田OBで元コーチも務めた大久保隆一郎氏（現・名古屋産業大学、名古屋高校コーチ）の弟。そうした縁もあり、石川から「青森山田に行って、選手権に出たいです」とアピールし、夏の中体連大会を最後に部活動が終了すると、智史氏が監督を務める足柄FCで半年間プレーしながら、青森山田のセレクションに参加。見事合格を勝ち取った。

　青森山田高では2年生まで下のカテゴリーでのプレーが続いたが、決して音を上げることなく、ひたすら努力を積み重ねた。雪中サッカーなどで鍛えられた爆発的な走力が一気に花開く。

　高校3年生になると、開幕はセカンドチームのスタートだったが、プレミアリーグEAST・第5節の昌平戦でスタメンに抜擢され、いきなり初ゴールをマーク。ここから快進撃が始まった。以降、リーグ18試合すべてにスタメン出場し、チーム最多の6ゴールをマーク。寮長を任されるなどピッチ外での人望も厚かった石川は、最後の選手権を迎え、リーグで背負っていた19番からエースストライカーの象徴である9番を託された。選手権では高川学園にまさかの初戦敗退を喫したが、その悔しさを胸に、大学での活躍を誓った。

「選手権では9番としてゴールを決めないといけないのに決められず、初戦敗退の要因を招いてしまった。だからこそ、全国大会に懸ける思いはより強くなったので、今回で総理大臣杯出場を決めるゴールを挙げることができてほっとしています」

　彼の大学サッカーは、まだ始まったばかりだ。

「常にシャトルランのようなプレーを求められるので、高校時代以上の運動量が必要になります。大変だなと思うこともありますが、僕には雪上サッカーをはじめ、青森山田で鍛えられたベースがある。何より、駒澤大で成長できる、鍛えられると覚悟を決めてきたのですから、そこはやるのみ。90分間反応し続けて、セカンドを回収し、相手が止まっている時に抜け出せる選手になりたいです」

　課された役割と重圧に真正面から向き合い、真摯に取り組んでいく。そのすべてを自らの糧に変えていける人間性と強いメンタリティーがあるからこそ、彼はピッチの上をどこまでもエネルギッシュに走り続けられる――その先に、さらなる成長があると信じて。