久保建英は「精度を欠いていた」 称賛の面も…現地記者が持論「個人主義的に感じた」【現地発コラム】
ソシエダがELアンデルレヒト戦で1-2黒星、久保建英は後半から途中出場
UEFAヨーロッパリーグ(EL)で2試合連続のベンチスタートとなったスペイン1部レアル・ソシエダの日本代表MF久保建英は、現地時間10月3日のELリーグフェーズ第2節でアンデルレヒト(ベルギー)戦で後半開始からピッチ入りし精力的にゴールを狙うも、1-2とホームで痛い敗北を喫した。
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
9月28日のバレンシア戦(ラ・リーガ第8節/3-0)にMVP(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いた久保のゴールなどで公式戦7試合ぶりとなる勝利を挙げ、意気揚々と10月3日にアンデルレヒトをホームに迎えた。イマノル・アルグアシル監督はバレンシア戦から、GKアレックス・レミーロを除く10人を入れ替え、久保、セルヒオ・ゴメス、ミケル・オヤルサバルなど多数の主力を温存し、控え組中心でこの一戦に臨んだ。
監督のこの判断は、平日開催が続く過密日程を乗り越えるアプローチとしては、決して間違っていない。国内リーグでは開幕から8試合でわずか2勝のみ、勝ち点8で14位と低迷中。仮にこのまま低い順位が続き、来季の欧州カップ戦出場権を逃したとしたら、年間予算に大きなダメージを負うこととなる。それはクラブの来季以降のプランに大きな支障をきたすということだ。
昨季の後半戦、主力選手を酷使したことでチーム全体のパフォーマンスが低下し、10試合でわずか1勝という苦しい時期を経験しているアルグアシル監督は、同じ轍を二度と踏まないよう、ELで2試合続けて大幅なターンオーバーを実施し、初戦のニース戦と同じ5-3-2の保守的なシステムで臨んだ。
開始5分、ウマル・サディクのクロスからパブロ・マリンが先制し、ソシエダは幸先良いスタートを切ることに成功したものの、その後が続かず前半28分に波状攻撃から失点を喫した。さらにその直後、ゴール裏上段の一部の過激な相手サポーターの危険行為により試合は一時中断となる。これにより集中が切れたソシエダは同39分にも失点を喫し、前半のうちに逆転を許してしまう。
アルグアシル監督はこの状況を打開すべく、後半頭から久保、アンデル・バレネチェア、ナイフ・アゲルドを投入。この采配でチームは息を吹き返し、久保は最初から積極的に得点を狙っていった。チーム最多5本のシュートを記録するも、厳しくマークされ楽な形では打たせてもらえず、2本はGKにセーブ、2本はDFに阻止され、1本は枠外と、果敢に攻めるも決め切れなかった。
チームはそのまま1-2で敗れ、今季の公式戦10試合で5敗目、ホーム5試合で4敗目を喫した。ELは2試合を終えて1分1敗と、まだ勝ち星が1度もない。
相手守備を称えた久保「相手がよく守った」…日本人レフティーの現地評は?
久保はアンデルレヒト戦後、チームが多くのシュートを打つも決められなかったことについて、「シュートを外しているというよりも、最後のところでブロックされているという感じがあったので、相手がよく守ったと思う」と語り、対戦相手の粘り強い守備を称えた。
さらにチームが勝てなかった原因の1つとして、アルグアシル監督やオヤルサバルも不満を口にしたように、久保は「アンデルレヒトのサポーターのこととかもあった」と少なからずプレーに影響があったとし、「そういったことは選手にはどうすることもできないが、そこで集中力を欠かないことが大事だと思う」とコメントした。
痛恨の敗北を喫したチームにおいて、多くの決定機を作った久保だったが、そのパフォーマンスについて現地メディアでは評価が分かれている。
クラブの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「最もトライし、最も危険な選手だった。クロスやシュートを狙うもあまり運がなく、精度も欠いた」と評し、ジョン・マルティン、アイエン・ムニョス、パブロ・マリン、サディクと並ぶ、チーム最高タイの6点(最高10点)をつけた。
もう1つのクラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」の見解はやや異なる。「2人のDFを振り払う必要があるなか、右サイドで決定機を生み出したが、シュートを何本もブロックされた」と、チャンスを生かせなかった点を指摘。レミーロ、アルバロ・オドリオソラ、アリッツ・エルストンド、ベニャト・トゥリエンテス、アゲルド、バレネチェアと並ぶ2点(最高5点)。ワーストはジョン・パチェコで1点だった。
一方でスペイン全国紙「マルカ」の評価は、アイエン・ムニュス、バレネチェアと並ぶチームトップタイの2点(最高3点)。また「AS」紙も同様に、レミーロ、ジョン・マルティン、パブロ・マリン、バレネチェアと並ぶチーム最高タイの2点(最高3点)と高い評価を与えている。
ソシエダ番記者の見解「久保は顔を上げてもっと周りを見渡す必要があった」
試合後、スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でソシエダの番記者を務めるマウリシオ・イディアケス氏に、この日の久保のパフォーマンスについて伺うと、ややネガティブに捉えていた。
「今日の久保はとても個人主義的に感じたよ。顔を上げてもっと周りを見渡す必要があったが、多くの局面で顔を下げてドリブルを狙い、ペナルティーエリア内では無理にシュートを打つシーンが何度もあった。久保はこれまでずっといい試合をしていたし、今日はリフレッシュされた状態で出場できたはずだ。でも今日は精度を欠いていたし、彼にとって良い日ではなかった」と振り返った。
チームが勝てなかった理由については、「相手サポーターが暴れたことで集中力を削がれることはあったかもしれないが、それよりもイマノルがリーグ戦を優先させ、レギュラーでない選手を多用したことが敗因だろう。ELは今季、フォーマットが大きく変更されて最初のリーグ戦が8試合になった。試合数が増えたことにより、昨季と比べると修正する時間があるので、イマノルがそのような選択を取るのは論理的なことだ」と分析した。
「日曜日には代表ウィークにどう臨むかを左右する重要な一戦を控えていて、もし負ければ降格圏に落ちる可能性がある。だからイマノルは今日、ニース戦と同じようにBチームを投入したのだろう。後半に久保やアゲルドやセルヒオ・ゴメス、オヤルザバルといった良い選手が投入されても違いを生み出せなかった。イマノルの交代は結果的にプラスの効果をもたらさなかった」と、ホームで再び黒星をつけられたことを嘆いた。
後半の問題点として、「今のラ・レアル(ソシエダの愛称)にはヘディングシュートを決められる選手が少ない、という重大な欠点がある。後半、ボックス内に何度もボールを入れたが、終盤は(オーリ)オスカルソンもサディクもいなかった。守備を固められたあの局面を、空中戦に強い選手がいないなかで打開するのはとても難しい」と監督の采配に対する不満を漏らした。
最後にイディアケス記者は、「ラ・レアルは中立地ベオグラード(セルビア)でのリーグフェーズ第3節でマッカビ・テルアビブ(イスラエル)と対戦する。そこで勝てなければ、ELの残り5試合を全力で臨まなければなくなってしまう……」と、戦力を落として臨んだEL直近2試合のような余裕がなくなり、チームが追い込まれることを懸念していた。
ソシエダはこの後、中2日でリーグ戦に臨み、強豪アトレティコ・マドリードをホームに迎える。良い感触を持ってインターナショナルブレイクに臨むためにも、アルグアシル監督にとって正念場の一戦となるだろう。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。