突きつけられた“J1王者との差” 流れを変えた飲水タイム…試練の2か月白星なし
「基本的に大きく違うことはボールを扱う技術が違います」
J1アビスパ福岡は9月1日、ベスト電器スタジアムでヴィッセル神戸と対戦し、0-2で敗れた。前半終了間際に先制されると、反撃に出た後半37分にも追加点を奪われて突き放された。これでリーグ戦8試合白星なし。6月30日のFC東京戦以来、白星から見放されている長谷部茂利監督は「サッカーの局面で言うと、全部の場面で相手に少しずつ上回られた」と悔しさを滲ませた。
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突きつけられたのは、昨季王者とのクオリティの差だった。前半アディショナルタイム、MF武藤嘉紀とMF井手口陽介のワンツーで左サイドを崩されると、武藤のパスを受けたFW大迫勇也に右足で決められて先制点を奪われた。後半13分にFWシャハブ・ザヘティ、同17分にMF松岡大起、同34分にはFW紺野和也がゴールを狙ったが、決め切れず。38分に大迫に2点目を決められてリードを広げられた。
長谷部監督は両クラブの間にある“明確な差”を認めた。「相手の選手たちにいろいろとやられたなっていう思いが今の感想です。失点をした場面ももちろんそうですけれども、それ以外にも試合巧者、この競技において必要なことがいろいろできる。少しずつの差が結果に出てしまった。基本的に大きく違うことはボールを扱う技術が違います」。
大迫、武藤、井手口といった日本代表経験者を数多く擁し、昨季、Jリーグを制した神戸の質の高さは随所に感じられた。選手個々の止める技術、蹴る技術、ボールの置き所、シュート精度、攻守の切り替えの早さ……。1つ1つのプレーの正確さやチームとしての統一感が光った。
試合の中でポイントの1つになったのは前半25分の“飲水タイム”だ。それまでは福岡が押し込む場面もあったが、インターバルを使って両監督が選手たちに指示を送ると、攻勢を強めたのは神戸の方だった。26分、31分と次々にゴールに襲い掛かると、アディショナルタイムの得点が生まれた。
「指示はここではちょっと言えないんですけど、3つぐらい修正しながら、コーチから選手に伝えたこともあります。ただ、やはり(神戸は)巧みですね。あの時間を使って彼らは押し返してきた。押されていたのを感じていて、流れを変えられるような自分たちのプレーをしてきた。いとも簡単に相手の流れになった気もします。ゲームの中でもそうですし、飲水タイムでもそうですし、その辺が1枚も2枚も上手だったと感じています」。ここで流れが変わったのを長谷部監督も感じていた。
試合後のロッカーで「良くやってくれたと、運動量も気持ちも含めて全面に出して戦ってくれたという話をした」と、指揮官は選手に語りかけたと明かす。確かに、決して福岡の内容が悪かったわけではない。ただ、だからこそ質の差を痛感させられる一戦だった。
「相手が上手だった、巧みだったというのはあると思うんですけれど、それはもう分かっていたこと。それをも把握しながら自分たちがチャンスを作る、ボールを奪う場面がいくつかあった。もっともっと言葉だけではなくて、積極性、アグレッシブさをもうちょっと出せたら、もう少し変わった展開になったんじゃないかな、と思っています」。6月30日に勝って以降、2か月にわたって白星のない福岡。長谷部監督はこう語って唇を噛んだ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)