「悶々」→「やってやろう」先発抜擢でなでしこ“新ピース”へ OG岩清水が見た2つの“好材料”【見解】
【専門家の目|岩清水梓】初スタメン植木、エース田中が決めたゴールの持つ意味
なでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間7月31日にパリ五輪のグループリーグ最終戦でナイジェリア代表と対戦し3-1の勝利を収めた。2008年北京五輪と12年ロンドン五輪に出場し、11年の女子ワールドカップ(W杯)優勝メンバーでもある元代表DF岩清水梓は、初スタメンのピッチに立ったFW植木理子について「攻守に貢献した」と評価。また復活ゴールとなったFW田中美南について「ゴール前に固執せずプレーしていた」ことを好材料に挙げた。(取材・構成=轡田哲朗)
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背後に飛び出していく良さが存分に発揮された場面だった。前半22分、MF長谷川唯のスルーパスに植木が抜け出すと、左サイドよりでGKとの1対1になり逆サイドへのパスを選択。ここにフリーで走り込んできたFW浜野まいかが難なく押し込み、日本が先制ゴールを奪った。この2シャドーはプレッシングの場面でもスタートを切る動きが目立っていた。
岩清水は植木について「2試合スタートで出られずに悶々としたものがあったのだと思う。『やってやろう』という感が伝わってきた。攻守に貢献していたし、なでしこの1つのピースになれた」と振り返る。
また日テレ・東京ヴェルディベレーザ時代にチームメートだった経験から「守備のスイッチを入れてプレスの始まりになってくれるし、そこからプレスバックして相手のボランチからボールを奪って、さらに背後に走り出していくような選手。彼女がいることで、高い位置でボールを奪える」とプレーの特徴を分析し、「攻守とも自分からアクションをしていける選手だし、浜野選手もスイッチを入れられる選手。ボールに対してのプレッシャーに相手が逃げられなかった」と、前線の守備を評価した。
さらに前半32分には、右サイドからDF守屋都弥が上げたクロスに植木がヘディングで合わせるとボールはクロスバーを直撃。跳ね返りに田中が詰めて押し込んだ。田中は第2戦のブラジル戦でPK失敗もあり試合後に涙も見せていたが、大会初ゴールになった。岩清水は植木の動きについて「彼女は“頭利き”なので」と笑い、「右足、左足のシュートよりもクロスに飛び込める」と良さを話した。
こぼれ球を押し込んだ田中について「本人の喜びを見てもホッとしただろうし、ほかの選手の喜び方も温かさを感じるゴールセレブレーションだった。(池田太監督は)エースは田中としてチームの柱にしていると思う。そこにゴールが生まれるのはチームが上り調子になる」とその意味を話す。
田中のプレー全般についても「日本がボールを持っていたからこそだとは思うが、この試合ではゴール前に固執せず、ビルドアップに参加してボールをはたいて、もう1回ゴール前に入るなど、いいリズムが見られた。ゴールシーンもそういう流れから生まれた」と指摘。得点が欲しいなかでも、むしろ広い動きが相手のマークを引きはがすことにもつながったようだ。
日本は現地時間8月3日にアメリカと準々決勝を戦う。日本のアタッカー陣が攻守に躍動する姿が期待される。
[PROFILE]
岩清水梓(いわしみず・あずさ)/1986生まれ、岩手県出身。2001年に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でリーグ戦デビュー。なでしこジャパンには06年に初選出され、女子W杯メンバーに3度、五輪メンバーには2度選ばれ、11年W杯の優勝を経験した。20年3月に第一子を出産し、“ママさん戦士”として現役を続ける。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)