菅原由勢が抱くビッグクラブ移籍の“野望”「刺激を受けない選手はダメ」 去就について発信続ける訳【コラム】

愛知県でサッカー教室を行った菅原由勢【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
愛知県でサッカー教室を行った菅原由勢【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

地元・愛知県で初めてサッカー教室を開催

蒲郡市で地元開催は初めてのサッカー教室を行った。豊川市出身の菅原は子供たちと約1時間半汗を流し、現役日本代表選手として夢と希望を与えた。子供たちへ「プロサッカー選手」という職業をしっかりとその存在で示した後、さらなる成長を遂げるために“野望”を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 なぜ、これほどにも逃げずに向き合い、口を開き続けるのか――。菅原を見ていて、考える。子供たちから羨望の眼差しを受け、正確無比なフリーキックやスピードあるダッシュなど惜しげもなく披露した日本代表DF。「自分がサッカーを頑張れる理由になったら嬉しい」と、子供たちへ伝えたその気持ちは必ず胸に届いただろう。地元で開催されたサッカー教室を終えて、報道陣の取材に対応した菅原へはやはり去就の質問が多く飛んだ。

 6月シリーズの日本代表でもそうだった。ミャンマー、広島と試合日を除いて2回の取材対応があった。私自身、今回と合わせて唯一3回連続で菅原の言葉を聞いている。そしてその3回とも去就について触れられているが、1度も逃げずに自身の言葉を整理して答えていた。

 そのなかで、印象的だったのがミャンマーで話していた「次のステップが正しいステップになるようにというので、今シーズン一応頑張ってきた。そのステップが、決まったときに、このシーズンがどうだったかというところに繋がってくると思う」という考え方だった。

 今夏の去就が注目される23歳の菅原には、イングランド1部リバプールや、エバートン、ブライトン、イタリア1部インテル、ドイツ1部ヴォルフスブルクなど強豪クラブが関心を示しているとされている。2019年のAZ加入からすでに欧州で5シーズンを過ごしており、今季もリーグ戦4ゴール7アシストという結果を残した。

 その数字やチームへの貢献度はもちろん評価につながっているはずだが、自身の“採点”はお預け中。菅原にとって「分岐点に立っているのは間違いない」と話す今夏の移籍市場の結果が出た時にようやく今季を振り返ることができるという。この言葉の意味を改めて聞いた。

「世界のサイドバックと自分がどれだけの差があるのかというかどういう物差しで自分が見られているかというのは、自分が感じられるものとほかのクラブだったりとか、いろんな人が評価すると思うんですけど、そういうのはいざ、いろんな噂だったりとか移籍の話が出てこないと自分がどういう評価を得られているのか分からない。これは現実としてある。だから、そういう話が来たときに自分がどれだけやれたのかというのが、見えると思う」

 だからこそ、菅原は発信を続ける。AZへ加入した時はまだ10代の若者だった。あれから5年。その月日で簡単に言い表せないほどいろんな葛藤や経験、成功があった。菅原が話す「目に見えない壁」を乗り越えた先に待っていたのが信頼。「何とか自分を奮い立たせて、絶対この地で成功するんだっていう覚悟を決めて、サッカーやってきた」思いが通じ、23歳の日本人がチームの模範として扱われるようになった。次なるステップでも再び同じ地位を確立しなければならない。

 日本代表主将のMF遠藤航はリバプール、同じ東京五輪世代として切磋琢磨してきたDF冨安健洋はアーセナル、かつて名古屋グランパスで同僚だったDF伊藤洋輝はバイエルン・ミュンヘンへの移籍が決定した。「そこから刺激を受けない選手はダメだと思う」と、自身を鼓舞する。

 今夏は忙しい夏になる。菅原が下した「最善」の決断を楽しみに待っていたい。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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