負傷交代も…久保建英は「大きな脅威」 メディアは辛口評価、相手番記者は「最も危険」と称賛【現地発コラム】

前半で負傷交代となった久保建英【写真:Getty Images】
前半で負傷交代となった久保建英【写真:Getty Images】

2戦連続先発の久保がアラベス戦の前半終了間際に負傷交代、ソシエダが1-0勝利

 インターナショナルブレイクで帰国したものの、出場機会のないままスペインに戻った久保建英。その直後のアラベス戦で2試合連続の先発出場を果たすも、前半終了間際に負傷交代を余儀なくされた。

 3大会を戦っていたレアル・ソシエダにとって、国王杯、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)から敗退した今、残るは来季の欧州カップ戦出場の懸かるラ・リーガの9試合のみとなった。

 前節カディス戦、久保のクレバーなコーナーキック(CK)を起点に先制し、2-0で勝利して2連勝を達成。チーム状態が上向きになるなか、6位の座をキープして敵地でラ・リーガ第30節アラベス戦に臨んだ。

 迎え打つアラベスは、久保が2季前に所属したマジョルカ時代の恩師ルイス・ガルシアが率いるチーム。ラ・リーガの順位は13位だったが、後半戦に入り、ホームでは後半戦5試合でわずか1敗と好調をキープ。また新年最初にレアレ・アレーナで対戦した際は1-1で引き分け、さらにソシエダの下部組織出身選手が6人所属していたため、互いをよく知る同士のやりづらい相手だった。

 久保は出番なく終わった日本代表から戻ったあと、フィジカル面の問題が懸念されたが、いつも通り4-3-3の右ウイングで先発出場。しかし、右サイドに張るもボールがほとんど入らず、さらにハビ・ロペスに徹底的にマークされたことで、楽にプレーさせてもらえなかった。

 そんななか、前半42分にアクシデントが発生する。前線からの守備でスプリントしたことが影響してか、右足ハムストリングに痛みを感じ、突然ピッチに倒れ込む。メディカルスタッフのケアを受けるも、それ以上プレーを続けることはできず、スタンドから拍手が送られるなか、前半44分にピッチを去った。

 ソシエダはその後、後半にアルセン・ザハリャンの正確なクロスをニアポストに飛び込んだジョン・パチェコが頭で合わせ、決勝点をマーク。堅固な守備で最後までアラベスに決定機を作らせず、1-0で勝ち3連勝を成し遂げた。この結果、勝ち点を49に伸ばし、7位ベティスとの勝ち点差を7にして、6位の座を確固たるものにしている。

久保建英について語ったアラベス地元紙「ディアリオ・デ・ノティシアス・デ・アラバ」のイケル・ガルシア・グアディージャ氏【写真:高橋智行】
久保建英について語ったアラベス地元紙「ディアリオ・デ・ノティシアス・デ・アラバ」のイケル・ガルシア・グアディージャ氏【写真:高橋智行】

スペイン各紙の寸評は? 「ほとんど関与しなかった」「爪痕を残せなかった」

 チームは安定した試合運びで勝利を収めたが、この日の久保に対するスペインメディアの評価は軒並み低かった。

 クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「久保はザハリャンが自分の近くでより自由にプレーできるように相手を引きつけたが、ほとんどプレーに関与しなかった。ハビ・ロペス相手に股抜きの素晴らしいテクニックを披露したものの、ハーフタイム前に大腿後部を負傷した」と寸評し、チームワーストの2点(最高5点)をつけた。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」も「キックオフから快適にプレーできず、CKやクオリティーの高い細かい動作を除き、負傷するまでほとんど爪痕を残せなかった」と評し、チーム最低タイの5点(最高10点)。全国紙「マルカ」紙、「AS」紙もともに1点(最高3点)と低評価だった。

 地元紙や全国紙の採点は厳しめだったが、対戦相手側から見た久保は終始油断できない選手だったようだ。試合後、アラベスの地元紙「ディアリオ・デ・ノティシアス・デ・アラバ」で同クラブの番記者を務めるイケル・ガルシア・グアディージャ氏に、この日の久保のパフォーマンスを振り返ってもらうと、次のような意見が返ってきた。

「久保は怪我をするまでラ・レアルで最も危険な選手だったと思う。彼のマーカーを務めた左サイドバックのハビ・ロペスとのデュエルは見応えがあった。彼もまた守備が上手く、個人能力に優れた若い選手だから、今日はこの2人のマッチアップが最も魅力的だったよ」

「でも久保にとっては今日、ハビ・ロペスを突破するのが難しかったことに加え、アラベスがフィジカルを前面に押し出して守備をするチームなので、とても難しい試合だったと思う。特に彼のサイドのディフェンスは堅かった。それでも久保は怪我をするまでずっと、アラベス守備陣にとって大きな脅威になっていた」

 また久保をよく知る敵将がなんらかの対策を講じたかについては、「ルイス・ガルシアが1人の選手を抑えるための準備をわざわざやったとは思わないが、選手個々が今週1週間、久保の左足を警戒して、右足でボールをもたせるような守備に取り組んでいたと思う」との見解を示した。

ソシエダを迎え撃ったアラベスの本拠地エスタディオ・デ・メンディソローサ【写真:高橋智行】
ソシエダを迎え撃ったアラベスの本拠地エスタディオ・デ・メンディソローサ【写真:高橋智行】

久保の印象は「足もとにボールが入ると大きな違いを生み出す選手」

 最後に久保の印象について、「ラ・レアルでゲームを作る選手であり、ハビ・ロペスの股を抜いたことでも証明されたように、足もとにボールが入ると大きな違いを生み出すことができる選手だ」と話していた。

 久保の怪我の程度は今のところ正確には分からないが、幸い今週末は国王杯決勝が開催されるため、ラ・リーガは中断される。本人は試合後、「検査してみないと分からない」と一言だけ残しスタジアムをあとにした。

 クラブはその後、メディカルレポートを発表して「右足ハムストリングの違和感」と説明。スペイン紙「AS」はこれを受け、「特に深刻なものではない」とし、14日のラ・リーガ第31節アルメリア戦には間に合うと伝えていた。

 久保のスペイン5季目もあと残り8試合。今回の怪我が大きく影響することなく、最後まで万全の状態で戦えることを願いたい。

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)



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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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