J1クラブ厳選、新年に動いた「注目の移籍」5選 浦和、広島、磐田…“大補強”の筆頭は?【コラム】

(左から)鈴木徳真、川島永嗣、渡邊凌磨【写真:Getty Images & 河治良幸】
(左から)鈴木徳真、川島永嗣、渡邊凌磨【写真:Getty Images & 河治良幸】

年明けに実現したJ1各クラブの移籍動向から注目補強をピックアップ

 Jリーグの2024シーズン開幕に向けて各クラブが始動。昨年末から活発な動きを見せてきた去就動向も一旦落ち着き、チームそれぞれの陣容は概ね整いつつある。ここでは年明けに実現したJ1各クラブの移籍動向の中から、特筆すべき補強を筆者の目線でピックアップした。

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■川島永嗣(GK/無所属→ジュビロ磐田)

 ビッグサプライズとも言うべき補強で、新体制発表の前日にリリースされた。日本代表として4度のワールドカップを経験した「生ける伝説」だ。フランス1部のストラスブールを退団してから半年間は所属クラブがなかったが、いつものようにトレーニングを積み重ねてきたという。日本に帰ってくるというより、また新たな挑戦の場として磐田に来た感覚という川島はトレーニングにおいても、1つ1つの立ち居振る舞いがチームの指標となっている。

 また、練習初日から20歳の新加入選手であるDF西久保駿介などとコミュニケーションを図るなど、チームを良い方向に変えていく雰囲気が伝わってくる。ただし、川島自身は常にフレッシュな気持ちで、日々を挑んでいく気持ちのようだ。代表でも縁のあった横内昭展監督は「エイジであってもポジションは約束されない」と、GK三浦龍輝などとの競争を強調するが、川口能活コーチが統括するGKチームとしてもパフォーマンスを引き上げる助けになることは間違いない。

■鈴木徳真(MF/セレッソ大阪→ガンバ大阪)

 中盤の核だったMF山本悠樹が川崎フロンターレに移籍。4-3-3のアンカーを担える選手が不足していたなかで、ライバルのC大阪に所属していた鈴木に白羽の矢が立った。MFネタ・ラヴィという頼れる存在はいるが、カップ戦を含めたシーズンを考えても、非常に大きな補強だろう。自分が輝くというよりは周りを輝かせるタイプであることを自覚しており、ボールを奪うこともそうだが、いかにスムーズに、攻撃的なインサイドハーフやウイングに付けるかがダニエル・ポヤトス監督の掲げるポゼッションスタイルの生命線となる。

「変えていくというのは1人の力じゃできないので、このチームで勝ちをなるべく重ねるために、自分のプレーがどれだけ勝ちにつながっているかが僕には重要なこと。どれだけ勝利につながっているプレーをしているかが、僕が変えていけるところだと思う」

 そう語った鈴木。C大阪時代は試合に出られない時期も、紅白戦でMF香川真司とマッチアップして磨いた守備やバランスワークにも注目したいところだ。昨シーズンのG大阪はボールを握り、主導権を取れていても、奪われた瞬間の切り替えに課題があり、まんまと隙を突かれて失点したり、相手に流れを持っていかれるシーンがあまりにも多かった。そうした隙を埋めるのには最適な選手だ。MF山田康太やFW山下諒也など、主役級のタレントとはまた違った意味で、ガンバの上位躍進を支える選手になり得る。

浦和入りの渡邊凌磨は“新たなスーパーマルチ役”に期待

■渡邊凌磨(MF/FC東京→浦和レッズ)

 気鋭のアタッカーであり、FC東京では主にウイング、ときには2列目の10番的な役割を担っており、浦和でも攻撃的なポジションでの起用が想定される。しかし、沖縄キャンプの2日目に、主力チームと見られるメンバーの左サイドバックでテストされた。最初はぎこちなくポジションを確認する姿が見られたが、少し慣れてくると外側を駆け上がり、左足でクロスを上げるシーンも。ビルドアップでも、時間を追うごとに左足のタッチが増えていった。

 FC東京でもアルベル・プッチ・オルトネダ前監督には右サイドバックで使われたこともあり、そうした下地はある。なにより、そうした起用に関して「東京の時もそうだし、最初サイドバックで使われることもあった。もう慣れたというか、やれっていうなら突き詰めてやらないといけない。そこはどこのポジションでも関係ないかなと思います」と前向きに語っていた。

 もちろんテストの段階であり、ペア・マティアス・ヘグモ新体制において本来の攻撃的なポジションで起用される可能性はあり、新たな補強もあり得る。しかし、左サイドのスペシャリストであるDF荻原拓也がクロアチア1部ディナモ・ザグレブに移籍。スーパーマルチとして重宝されたMF明本考浩もベルギー1部ルーヴェンへ移籍したなかで、経験豊富なMF宇賀神友弥もいるが、パリ五輪世代のDF大畑歩夢が長くクラブを留守にすることも想定されるため、渡邊が新たな浦和のスーパーマルチになっていくかもしれない。

■大橋祐紀(FW/湘南ベルマーレ→サンフレッチェ広島)

 基本的に継続路線で優勝を狙う広島だが、年明けに“ビッグディール”が起きた。昨シーズン、湘南ベルマーレでドイツ移籍のFW町野修斗に代わるエース的な存在として、13得点を記録した大橋の獲得はJ1の中でも大きな補強と言える。10番を背負うMFマルコス・ジュニオールやFW満田誠やMF川村拓夢といった日本代表クラスの選手をはじめ、気鋭のタレントを揃える広島にあって、前線の決定力という課題は昨シーズン42得点という数字にも表れていた。

 そこに2桁得点の実績を誇る大橋が加入したことは明確なプラス材料だ。昨季8得点のFWドウグラス・ヴィエイラや昨夏にセレッソ大阪から移籍してきたFW加藤陸次樹などとどう組み合わせるのか、使い分けるのかといったところは興味深いが、ゴールを取らせる役割もこなしながら、ボックス内で強さを発揮する大橋が、個人の得点だけでなく、チームの得点数を大幅に引き上げる期待は高い。

ウイングのイメージが強かった長谷川竜也、新天地ではシャドー起用か

■長谷川竜也(MF/横浜FC→北海道コンサドーレ札幌)

 ウイングのイメージが強い選手だけに、札幌加入が決まった当初、どこで起用するのかが話題になっていたが、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督は左右のシャドーで考えているようだ。練習ではFW鈴木武蔵、MF青木亮太と1トップ2シャドーを組んでいた。前所属の東京ヴェルディでは左ウイング、時には4-3-3の左インサイドハーフも担ったが、長谷川は「2022年は横浜FCでやって感触がすごい良かったので、シャドーは楽しいなと思います」と語るように、本人もそのポジションにやりがいを感じているようだ。

 今年30歳となる長谷川。4度のリーグタイトルを経験した川崎時代は個人の突破力が強みだったが、今はいかにタイミング良く動き出して、味方からのパスを引き出したり、逆に周りを生かしたりといったプレーに新境地を見出している。「やっぱり共通認識がちゃんとあるので。そういった意味で相手より早いサポートができるし、早い判断もできる」。昨シーズン12得点のMF浅野雄也が右のアウトサイドに入る場合も、うまくボックス内への侵入を引き出す、連動性の高いプレーが多く見られそうだ。

 今年は辰年、ドラゴンイヤーでもある。「竜也」の名前のとおり、札幌を上昇に導くことができるか。「まずは自分が試合に出て、質の部分で違いを出せないと意味がない」と語るが、言動や振る舞いでも札幌を引き上げていきたい気持ちが強いようだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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