2G1Aの南野拓実は“復活”ではない 挫折を乗り越え自ら示したドーハでの「進化」【現地発】

ベトナム戦で2ゴール1アシストの南野拓実【写真: 2024 Asian Football Confederation (AFC)】
ベトナム戦で2ゴール1アシストの南野拓実【写真: 2024 Asian Football Confederation (AFC)】

苦戦のベトナム戦で獅子奮迅の活躍

 森保一監督率いる日本代表は、1月14日に行われたアジアカップのグループリーグ初戦でベトナムに4-2で勝利した。フィリップ・トルシエ監督率いるベトナムに苦戦した日本だが、MF南野拓実(ASモナコ)が2ゴール1アシストの活躍で牽引。これまで大舞台では何度も壁を乗り越えようともがいてきた南野が“新たな一面”を見せた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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“復活”ではない、“進化”だった。ドーハのピッチには新たな南野の姿があった。

 日本は前半11分、コーナーキックにファーサイドでDF板倉滉が関わり、こぼれ球をDF菅原由勢がシュート。これがさらにこぼれたところを南野が冷静に押し込んだ。しかし同16分、ベトナムに左コーナーキックをニアサイドで、FWグエン・ディン・バクに合わせられると、バックヘッドはGK鈴木彩艶の頭をふわりと越えてゴールへ吸い込まれ、瞬く間に同点に追い付かれた。

 その後、前半33分にはカウンターを阻止した菅原がイエローカードを受け、フリーキックを献上。ゴール前に入れられると、ファーサイドからのシュートを鈴木が弾いたところをFWファム・トゥアン・ハイに押し込まれてしまい、1-2とまさかの逆転を許した。

 それでも日本は前半45分、MF遠藤航の縦パスに抜け出した南野がゴール右隅に流し込んで同点。そして同アディショナルタイム、左サイドでボールを受けた中村は、切り返しで相手守備陣2人を振り切ると、そのまま右足を一閃し、強烈なミドルシュートを突き刺して勝ち越した。後半40分にも途中出場のMF久保建英のパスからFW上田綺世が4点目を決め、4-2で大会初戦を飾った。

 牽引したのは南野。2ゴール1アシストは誰の目にもマン・オブ・ザ・マッチの活躍だと映ったことだろう。

 これまで何度も苦しい思いをしてきた。例えば、U-20W杯出場権が懸かったU-19アジア選手権でエースとして出場した南野は4試合4得点の活躍。だが、準々決勝・北朝鮮戦でPK戦までもつれるも、自身が決め切れずに敗れてしまい、U-20W杯切符を獲得できなかった。今大会と同じカタール・ドーハで行われたリオ五輪最終予選を兼ねたU-23アジア選手権もエースとして臨んだが、無得点。当時、練習後に手倉森誠監督とピッチに座り込んで長時間話し合っていた時の横顔が印象的だった。

 森保ジャパンでも前回大会のアジアカップ(2019年UAE大会)は決勝のカタール戦で1ゴールを挙げたが、なかなかゴールが決められず。新エース候補としての重荷を「最初はそんなことなかったけど、だんだんそうなっていった」と感じていたことを明かしていた。

 そして10番を付けて臨んだカタール・ワールドカップ(W杯)。予選も含めて南野に批判の声が飛んでいたことは記憶に新しいだろう。

 南野が苦しむ姿は何度も見てきた。アンダー世代から常にエースとしてチームを引っ張ってきたが、批判と隣り合わせ。重圧に耐えて、耐えて、所属クラブではオーストリア1部ザルツブルクからイングランド1部リバプールに移籍。世界のトップでタイトル獲得も経験した。今のモナコに移ってからも昨季は思うような結果が出ず。だが、今季からザルツブルク時代の恩師アドルフ・ヒュッター監督のもと、ここまで16試合5ゴール4アシストを“復活”を遂げた。

森保監督も称賛「アジア、世界で勝つために必要なものを見せてくれた」

 そして日本代表にも復帰した。昨年10月、森保ジャパン第2次政権において初めて招集された南野の顔に「焦り」はなかった。これまでの経験を乗り越え、戻ってきたアジア杯の舞台。ドーハに立った姿は、“復活”というより一皮むけた“進化”という表現が正しいように思う。森保監督も試合後にこう話している。

「素晴らしい舞台でプレーしている選手。リバプールまで行ってモナコも上位争いの中でプレーしている。今日の難しい試合は技術があって、ハードワークができないとアジアでも勝っていくのは難しい。ゴールを決める技術、流れの中で的確な技術があり攻撃も守備も献身的にできる選手が必要だと結果、プレーを持って示してくれた。拓実だけの活躍の勝利じゃないと思うが、彼が示してくれたプレーはアジア、世界で勝つために必要なものを見せてくれたと思う」

 ベトナム戦では攻守において顔を出し、ゲームメイクから最前線の守備、フィニッシャーまでやり遂げた。これこそ南野の真骨頂なのだろう。

 信じて、何度も立ち上がり、戦ってきた南野。その背中はやはり頼もしかった。

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