今季J1・全18クラブ査定 2位横浜FMはB評価…トップ神戸とほぼ同等の「達成度」となったチームは?【コラム】
「総合評価」に加え、昨シーズンを基に「達成度」も考察
ヴィッセル神戸のリーグ優勝で終わった2023シーズンのJ1リーグ。「FOOTBALL ZONE」では、「Jリーグ通信簿」の特集を展開し、J1・18クラブをリーグ戦の結果をベースに、国内カップ戦の結果を加味して「総合評価」を100点満点で採点していく。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に関しては出場クラブが限られるため、年間でより多くの試合数をこなしていることも加味して、プラス補正をしている。また、昨シーズンの年間順位を基準とした期待に対する「達成度」をAからEで評価してみた。(文=河治良幸)
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リーグ優勝の神戸は当然ながら最も高い90とした。終盤まで横浜F・マリノスと競り合ったと言っても、最終的に勝ち点+7まで突き放していることから、限りなく満点に近い。また大迫勇也が、マリノスのアンデルソン・ロペスと分け合う形ではあるが、得点王に輝いたことも高評価に値する。ただ、カップ戦はルヴァンカップ(杯)がグループステージ敗退、天皇杯は準々決勝でJ2のロアッソ熊本に惜しくもPK戦負けということになったが、やや割り引く必要がある。
「達成度」としては昨シーズンが終盤まで残留争いを強いられての13位であり、当事者やファンサポーターはともかく、下馬評を良い意味で覆したという意味ではAしかないだろう。A+にしなかったのはカップ戦で躍進できなかったからであり、永井秀樹スポーツ・ダイレクター(SD)も認めるとおり、秋にはACLにも参戦する来シーズンに向けて、選手層を大幅に厚くする必要がある。
2位のマリノスは2連覇を狙った結果の2位だったが、常に優勝争いを演じられるレベルを維持しているのは高く評価できる。しかも、リーグ開幕前に最初のタイトルであるスーパーカップを獲得している。結局、その一冠に終わってしまったが、最後の方まで神戸と優勝を争いながら、ルヴァン杯ではベスト4。そしてACLも戦っており、タフさが求められるシーズンだった。そうしたことも評価して「総合評価」は85にしたが「達成度」はそもそも期待値が高いので、B-にとどめた。
サンフレッチェ広島は2年連続で3位になった。そこは高く評価できるが、昨シーズンはルヴァン杯で優勝、天皇杯も準優勝しているだけに、そういう意味で「総合評価」75、達成度をC+にしている。4位の浦和レッズはやはり5月に前回ACLの決勝があり、過密日程も重なるなかで、マチェイ・スコルジャ監督もチームのピークをそこに持っていかざるをえなかった事情がある。そこから堅実な守備を強みとして勝ち点を伸ばしていったが、途中合流から8得点を記録したホセ・カンテを除くと、得点源を確立できなかった。それでもクラブ3度目のアジア制覇が金字塔であり、そしてルヴァン準優勝も加味して「総合評価」はマリノスと同じ85、達成度もBとした。
鹿島アントラーズは5位、名古屋グランパスは6位とまずまずではあるが、優勝を目標とするならば、神戸やマリノスに迫れなかったことは残念だ。名古屋は前半戦こそシンプルな攻撃にFWキャスパー・ユンカーを加えたタレント力が噛み合っていたが、マテウスのサウジ(アル・タアーウンFC)移籍がそのまま打撃となり、後半戦の勝率を落としてしまった。鹿島も岩政大樹監督の求める戦術をチームが消化しきれず、12アシストを記録した樋口雄太のセットプレー、鈴木優磨をフィニッシャーとして生かす以外の得点パターンを見いだせなかった。両チームとも、せめてカップ戦でファイナルまで来ていれば、評価も変えられただろう。それでもルヴァン杯がベスト4、天皇杯はベスト8と健闘した名古屋の「総合評価」を上にした。
ルヴァン杯制覇の福岡と天皇杯優勝の川崎で「達成度」に明暗
7位のアビスパ福岡はルヴァン杯、8位の川崎フロンターレは天皇杯に優勝したこともあり、リーグ戦の結果にプラス補正を加えて「総合評価」を80とした。福岡は天皇杯でもベスト4まで勝ち進み、川崎は秋スタートのACLグループステージで順調に勝ち点を重ねて、5試合で首位突破を決めたことも評価した。ただ、川崎の場合は昨年2位で、過去6年間で4度のリーグ制覇をしていることから、期待値に対する「達成度」はC+に留めた。一方の福岡は昨年14位で、これまでタイトル獲得が無かったこともあり、「達成度」は神戸に次ぐA-としている。
その下を見ていくと、やはり“昇格組”ながら10位フィニッシュを果たしたアルビレックス新潟の健闘は目につく。GKからボールをつないでゴールを目指すスタイルも独自性が高く、機を見て繰り出す鋭いサイドアタックからもゴールを奪った。「総合評価」は70だが「達成度」はBとした。もちろん、来シーズンはより期待は高まるなかで、松橋力蔵監督や選手たちが言うように、タイトルやアジアに手が届くチームになっていけるか注目だ。
昨シーズン7位と躍進した柏レイソルは中盤に多くのタレントを獲得して、攻撃のクオリティーアップを図ったが、スタートに躓きネルシーニョ前監督が早期退任。コーチから昇格した井原正巳監督のもとで、再出発を図った。最初はなかなか勝ち点を挙げられなかったが、夏に浦和から加入した犬飼智也の奮闘もあり、何とか17位で残留した。
その一方で天皇杯は躍進を見せて、国内の最終戦となった天皇杯の決勝では川崎フロンターレをあと一歩のところまで追い詰めて、PK戦の末に準優勝となった。リーグ戦の結果で見れば絡めの評価にせざるを得ないが、最後に素晴らしいサッカーを見せてくれたことに敬意を表して「総合評価」は11位、FC東京や12位の北海道コンサドーレ札幌と同等の64とした。ただし、結局は天皇杯のタイトル、そして「柏から世界へ」を掲げる柏にとってアジアを逃したと言う事実は重く、「達成度」はC-とした。
13位の京都サンガは昨シーズン16位で、J1・J2入れ替え戦で何とか残留したこともあり、パフォーマンス的にもそう悪くはないシーズンだった。しかし、カップ戦で躍進するポテンシャルは十分に備えており、その基準で見るとルヴァン杯も天皇杯も物足りない。14位のサガン鳥栖は川井健太監督の2年目で、毎年のようにメンバー入れ替わる傾向からすると、主力を含む17人が残留しており、上位躍進のベースはあった。想定外の怪我人に泣いた前半戦はともかく、後半戦の失速は言い訳ができない。
湘南ベルマーレはエースの町野修斗が夏にドイツ移籍と言う状況で、序盤戦の怪我から復帰してきたFW大橋祐紀が攻撃を引っ張り、キャリアハイの13得点を記録するなど、ポジティブな要素もあった。しかし、横浜FCとの直接対決で1-0と勝利するまで、5試合負けなしという終盤のチャージが無ければ最下位で降格していただろう。自動降格が3つになる来シーズンに向けて、底上げが求められる。それは16位のガンバ大阪にも言えるが、戦力を見ても下位に甘んじていい訳がなく、ポヤトス監督が2年目となる来シーズンは現場だけでなく、クラブをあげて捲土重来を目指してほしい。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。