中村俊輔、遠藤保仁…“系譜”を継いだ新キッカーの誕生 森保ジャパン、“弱点”克服の鍵を握る菅原由勢【現地発】
シリア戦でA代表初ゴールをマークした菅原由勢
森保一監督率いる日本代表は11月21日、中立地サウジアラビア・ジッダ開催の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選でシリアと対戦し、5-0で快勝した。3-0とリードした後半開始直後にはフリーキック(FK)を獲得。MF久保建英とDF菅原由勢が“トリックFK”で追加点をマークした。W杯予選デビューの菅原は国際Aマッチ8試合目での初ゴール。これまで森保ジャパンが苦労してきたセットプレーからの得点、プレースキッカーの存在は新たな武器となりそうだ。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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中村俊輔、遠藤保仁、本田圭佑……。かつての日本代表には名手と呼ばれる選手が存在し、W杯予選だけではなく、本大会でもいざという時にその力を発揮してきた。苦しい時間帯にセットプレーで得点するということは、確実に試合に勝利するために必要なことだ。だが、森保ジャパンは久保建英や堂安律らがFKを蹴るも、ゴールに直結していないことが課題の1つでもあった。
決して久保や堂安らのキックが悪いわけではないし、何度も惜しい場面はあった。そのなかで迎えたシリア戦のシーンだ。
3-0でリードした後半立ち上がり直後、FW上田綺世が倒されて約20メートルの位置でFKを獲得。久保と菅原がキッカーの位置に立ち、2人でしばらく会話を続けた。そして、久保が落として菅原が右足でシュートを放つ。2人のコンビネーションから作り出した“トリックFK”で綺麗な弧を描いた一撃が決まった。菅原はW杯予選デビュー戦となった国際Aマッチ8試合目で初ゴールをマーク。チームにとっても大きな4点目となった。
久保「ズラしてからシュートでいけるんじゃない?」
菅原「それ、いいね。俺打っていい?」
直接ではなかったが、2人でゴールにまで結び付けた“トリックFK”。スタンド上から2人が構えているのを見ていて、「まさか……。いや、でも本当に菅原が蹴るのか?」とドキドキした。それも前日から布石があったからだ。
前日の公式練習で、FKの練習をしていた菅原。非公開時に実際決めていたようで「さっき見ていました? あー見ていないか! すんごいFK決めちゃったから」と、伝えてくれていた。所属クラブのAZアルクマールでもプレースキッカー。だからこそ、森保ジャパンの現状には危機感もあったようだ。
「中村俊輔さんとか遠藤保仁さんとか素晴らしいプレースキッカーがいた。最近誰なのというところでこれといった選手はいなかったと思うし、名乗りを上げるというか、持っていることを示したいと思っていた。右足のキックに自信はあるので。まだまだ質は低いし練習は必要だと思うけど、いずれ武器になるようにしたい」
この意気込みに久保も負けてはいない。
「相手もたぶん僕が蹴るだろうなと思っていたと思うので、それがいい布石になったかな、と。由勢もなんか俺が蹴りたいみたいなこと言ってきていた。直接蹴るよりニアに寄っていたので、僕のイメージでは落として、菅原選手がニアに打つかなと思ったらファーに打った。『おおっ』と思ったら当たって、綺麗なゴールだったと思いますけどね。ああいったプレーもたまに入れていくことで、僕がFKを蹴れる布石にもまたなってくる」
2人が切磋琢磨してプレースキックをさらに磨いていけば、カタールW杯時にはなかった日本の大きな武器となるだろう。新たな可能性を見出したジッダの夜。きっとこれから大舞台で日本を救ってくれることだろう。