久保建英は「ラ・リーガでトップ10に入る」 敵番記者も高評価「チームが勝っていようと負けていようと関係ない」【現地発】

積極的に仕掛ける久保建英(写真左)【写真:ロイター】
積極的に仕掛ける久保建英(写真左)【写真:ロイター】

ラ・リーガ第11節ラージョ・バジェカーノ戦、先発出場の久保がPKを誘発

 久保建英はラージョ・バジェカーノ戦で相手DFからの執拗なマークに苦しみながらも、チームの2点目につながるPKを誘発した。

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 レアル・ソシエダは平日開催のUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ(CL)第3節でベンフィカに1-0で勝利し、D組首位の座をキープ。公式戦2連勝、ここ7試合で6勝と勢いに乗ったまま、中4日で10月29日に行われたラ・リーガ第11節で、6戦連続無敗と好調のラージョ・バジェカーノとアウェーで対戦した。

 イマノル・アルグアシル監督はインターナショナルブレイクを終え、再び過密日程に直面するなか、次節FCバルセロナ戦を考慮し、累積警告リーチのロビン・ル・ノルマンを温存した一方、久保を公式戦2試合連続で先発起用した。

 冬の訪れを感じさせる寒風吹き荒ぶ雨模様の状況下、久保はいつもどおり4-3-3の右ウイングに入り、キックオフから相手DFに積極的にプレスをかけていく。前半13分、フロリアン・ルジューヌのトラップミスを見逃さず猛然とボールを奪いに行き、ファールを受けてイエローカードを誘発。攻撃面ではルイス・エスピノのマークに手を焼いたものの、前半最後の時間帯に立て続けにチャンスを作っていく。同39分に右サイドから上げたクロスは相手に触られたあと、惜しくもポスト脇を直撃。その直後のコーナーキックでパチェコのシュートチャンスを演出したが、GKにファインセーブされ得点に結び付かなかった。

 久保が試合後エスピノについて、「ずっとマークで付いてきて、見えないところで引っ張って、みたいな選手で結構やりにくい相手。待つだけじゃなく、途中から流動的になってからは非常にやりやすくなった。最初からもっと動き回っていれば良かった」と感想を漏らしたように、後半からはその厳しいマークを外すためにプレーゾーンを広めていった。それが功を奏し、同11分に自陣から単独でドリブルを仕掛けて相手ゴールに迫るが、ペナルティーエリアに入る直前にファールで止められてしまった。

 続く後半20分、久保の右サイドからのクロスがエスピノの手に当たりPKの笛。これをオヤルサバルが冷静に決めて2-1と逆転に成功する。久保はこのシーンを試合後、「全然分からなかったけど、PKになって良かった」と回顧した。さらに同32分にボレーシュートを放つがわずかに枠を外し、同35分にピッチを退いた。

 久保交代後、チームは開幕時に抱えていた問題が再発する。攻撃陣を大量投入したラージョの猛攻に遭い、アディショナルタイムにベベにスーパーミドルを決められてしまう。この土壇場の失点により2-2の同点に追い付かれ、勝ち点2を落とす形となった。

 久保はこの結果に対し、「僕がベンチに下がってからあのようなことがよくあるから、最後まで出たかった、という感じはある。交代選手もいいプレーをしていたからしょうがないかなとも思うけど……」と、自分がピッチに立っていない状況で勝利を逃したことを残念がっていた。

スペイン各紙の評価はさまざま、敵番記者は「今日もスペクタクルだった」

久保建英について語ったスペインラジオ局「オンダ・セロ」のアルベルト・ペレイロ・ムニョス記者【写真:高橋智行】
久保建英について語ったスペインラジオ局「オンダ・セロ」のアルベルト・ペレイロ・ムニョス記者【写真:高橋智行】

 ソシエダはチーム全体が好調のラージョに苦しめられたため、スペイン各紙の久保に対する評価もやや分かれた。クラブの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「フィジカル面が非常に素晴らしかった。止まることなく相手と対峙して崩し続けた。ボールがポストに直撃したのは残念。美しいハーフボレーは惜しくも枠外だった」と評し、チームで2番目となる7点(最高10点)と高評価を与えた。

 もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は反対に、「機動力に欠け、プレーエリアではエスピノに上手く抑えられた。今回は1対1で突破することができなかったが、ゴール前でのプレーでルジューヌから上手くボールを奪い、PKを誘発したクロスを上げ、危険なシュートを2本放ち、劣勢の状況下でカウンターを試みた」と寸評し、今季の久保にしてはやや低い評価となる3点(最高5点)をつけた。

 一方、全国紙の「マルカ」、「AS」はともに2点(最高3点)と、ボール支配率で下回った試合ながら、時折輝きを放った久保に及第点を与えていた。

 試合後、スペインのラジオ局「オンダ・セロ」でラージョ・バジェカーノやレアル・マドリードなどの試合を広くカバーするアルベルト・ペレイロ・ムニョス記者に、この日の久保の出来を分析してもらった。

「身体が少し重そうには見えたが、いつもどおり今日もスペクタクルだったよ。久保のパフォーマンスはスタジアムや周囲の状況に影響を受けることがないし、チームが勝っていようとも負けていようとも関係ない。信頼度が非常に高く、技術的なレベルも優れている」との見解を示した。

 同記者がこのように話すには理由がある。ラージョのスタジアムは住宅街の真ん中に建設されたことで、ゴール裏北側は壁でスタンドがない。全体的に狭い作りのため、サポーターの野次が届きやすいことが1つの大きな武器となっている。

久保の実力を評価しつつ注文「もっとシュートを打ってほしかったかな」

ソシエダが乗り込んだラージョの本拠地エスタディオ・デ・バジェカス(右)と周辺の様子(左)【写真:高橋智行】
ソシエダが乗り込んだラージョの本拠地エスタディオ・デ・バジェカス(右)と周辺の様子(左)【写真:高橋智行】

 このピッチで散々苦しめられた選手たちを数多く見てきた同記者の目に、久保はそんなプレッシャーをものともしていないように映ったようだ。

「今日も70メートルをドリブルして、あと一歩でゴールチャンスを作り出すところだった。彼は間違いなく現在、ラ・リーガでトップ10に入る選手だね」と、その実力を認めていた。

 久保のプレーについては「ボールの止め方や素早くドリブルを仕掛けるところ、スピーディーなボールタッチからクロスを上げるプレーなどをとても気に入っている。ただ、サイドや2列目のゴールからやや遠い位置にいることが多いので、もう少しペナルティーエリアに侵入し、もっとシュートを打ってほしかったかな。それでも攻撃のすべての面において飛び抜けた能力を持つ選手だよ。守備面に関してもサイドでよく味方のサポートをしていたし、今日は特に問題なかったと思う」と分析した。

 久保はこの後、11月1日にコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)1回戦で6部ブニョールとアウェーで対戦し、同4日に勝ち点5差で1つ上の4位につけるバルセロナをレアレ・アレーナに迎える。

 アルグアシル監督はおそらく、格下相手の国王杯で主力選手をしっかり休ませると思われ、少年時代に所属した古巣との大一番に向け、1週間しっかり休みリフレッシュした状態の久保を見ることができそうだ。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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