マンCハーランドの1点目に見た“意外性” 「これで入ってしまうのか」…カメラが間近で捉えたゴールの舞台裏【コラム】

マンCのハーランド【写真:徳原隆元】
マンCのハーランド【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】横浜FM戦で2得点、ハーランドのプレーを間近で激写

 言うまでもなくスタンドを埋めた人々からの期待は果てしなく高かった。

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 6万1618人の観客で埋まった国立競技場。ライトブルーのユニフォームを身に纏ったマンチェスター・シティを応援する人々は、ヨーロッパ王者の称号を手にした選手たちのハイレベルなプレーが見られることに心を躍らせていた。

 対してトリコロールに染まる横浜F・マリノスのサポーターたちは、昨年のJリーグ覇者として欧州チャンピオンを相手に存在感を発揮したいという思いを込めてチームに声援を送る。そうしたさまざまな思いが交差し、熱気となってスタジアムを包んでいた。

 シティの注目選手はなんと言っても驚異的な得点力を世界のサッカーシーンで見せつけているFWアーリング・ブラウト・ハーランドだ。

 ベンチスタートとなる彼を撮影しようとシティのベンチ前で望遠レンズを装着したカメラを持って待つ。スタンドの観客たちが灯す携帯電話のライトを背に姿を現したハーランドに向けてシャッターを切った。

 光が作り出す幻想的な背景のせいかもしれないが、その堂々たる体躯を活かしてスーパースターへの階段を大股で駆け上がっている男は、どこか物静かな印象を受けた。しかし、一度ピッチに立つと圧倒的な光彩を放つことになる。

 前半、劣勢の展開もカウンター攻撃とピッチを広く使ったダイナミックな展開から2得点を先制し健闘を見せる横浜FMに対して、マンCも2ゴールを奪い返し同点で迎えた後半についにハーランドがピッチに立った。

 そして、ピッチに立った早々にその類まれな得点感覚を日本のファンの心に焼きつける。後半7分、FWフィル・フォーデンのパスを受けて、ゴールへとターンすると横浜FMのDFエドゥアルドの寄せを右腕でブロックしながら左足でシュート。逆転弾を決めた。

 その瞬間を捉えた写真のハーランドは実に激しい表情をしている。しかし、放たれたボールの勢いは驚くほどの強シュートではない。良くコントロールされたキックでゴールへと吸い込まれていった感じだ。

 実際、ゴール裏でこのシーンを撮影していて、これで入ってしまうのかと思えるほど呆気なかった。ハーランドは大柄な選手のためパワフルな印象を受ける。実際、相手DFのマークをモノともしない桁違いのパワーなのだが、この試合でハーランドが決めた2ゴールのうちの1点目は力任せのシュートというより、良くコントロールされたショットと表現したほうが合っている。

 マークを受けてもボディーバランスを崩さず、瞬時にシュートコースを見つけて、そこを狙い澄まして打つ高度なプレーを、いとも簡単にやってしまうハーランドの技術はやはり流石だ。

 ボールを受ける。蹴りやすい場所にボールを置く。そしてシュート。一連の流れを滞りなくこなす。プレー自体はシンプルなのだが、その正確性は高くこれがワールドクラスのプレーなのだ。

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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