【月間表彰】「こういうシュートを打てるんだ」 新潟・三戸舜介が自信を深めた弾丸ミドル

自身にとってJ1初ゴールとなる豪快なミドルシュートで受賞した三戸舜介【写真:(C) ALBIREX NIIGATA】
自身にとってJ1初ゴールとなる豪快なミドルシュートで受賞した三戸舜介【写真:(C) ALBIREX NIIGATA】

5月14日・横浜F・マリノス戦の豪快シュートで月間ベストゴール受賞

 Jリーグでは今季も全得点を対象に「明治安田生命J1リーグ KONAMI 月間ベストゴール」を選出。スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」の連動企画として、「FOOTBALL ZONE」では毎月、スーパーゴールを生んだ受賞者のインタビューをお届けする。5月度の月間ベストゴールに選ばれたのは、アルビレックス新潟のMF三戸舜介選手が5月14日の第13節・横浜F・マリノス戦の後半22分に決めた豪快なミドルシュートだ。自身にとってJ1リーグ初得点となったスーパーゴールの舞台裏を探る。(文=藤井雅彦)

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 森保一日本代表監督から「日本でこんなシュートが見られるようになったんだなと。興奮してしまった」と言わしめたゴラッソが飛び出した。5月のJ1月間ベストゴールに選出されたのは、アルビレックス新潟のMF三戸舜介が放った一撃だ。

 驚嘆のロングシュートは第13節の横浜F・マリノス戦、1-1で迎えた後半22分に生まれた。チームメイトが相手陣内でボールを奪うと、周囲の状況を瞬時に見極めた三戸はあえて下がった位置でボールを受ける。それと同時に、味方FWの動きによって相手DFが後退する様子も視界に捉えていた。

「ボールをもらった瞬間にゴールが見えたので、ドリブルで2タッチしたあとに打とう、と。ただゴールまで少し距離があったし、右から藤原(奏哉)選手が上がってくるのも見えていました。自分の目の前の選手がどういう対応をしてくるかで判断して決めようと思って、結果的に相手が出てこなかったので(ゴールを)狙いました」

 練習と同じイメージで右足を振り抜く。ゴールまで25メートル近くある距離から放たれたシュートはまるで弾丸となり、突き刺さる。対峙したGK一森純はほとんど動けなかった。

「打った瞬間、しっかりミートできた感覚で、思い切り足を振れていました。枠に飛んだのはすぐに分かって、その後に入ったかなと。自分もこういうシュートを打てるんだな、と改めて思いました。もともとパンチのあるシュートは打てていましたけど、明確にこういうゴールが決まったおかげで、自信がつきました。自分の武器でもあるのかなと思わせてくれるゴールでした」

 ゴールネットが揺れると、頭の中が真っ白になって無我夢中で走り出した。チームメイトが歓喜の輪を作り、次々となだれ込んでくる。全力ジャンプで喜びを表現した瞬間、足が攣って動けなくなった。

「強いチームから決めたことも嬉しかったですし、この試合の勝ち越し点でもありました。自分にとってJ1初ゴールでもあって、いろいろな意味のあるゴールでした。サポーターの方にも喜んでもらえたのかなと。ずっと待ってくれていたと思うので。でも、自分は攣って動けなくなってしまって、身体を伸ばしてもらっていました(苦笑)」

世代別代表の常連選手も、今季はここまで「苦しかった」

 ただのゴールではない。照れくさそうに笑う20歳にとって、大きな意味のあるゴールだった。

 プロ3年目の新進気鋭。1年目から出場機会を得て、2年目の昨季はコンスタントに出場し、今季は初めてJ1の舞台でプレーしている。世代別代表の常連選手でもあり、将来を嘱望されるアタッカーだ。

 歩みは順調に見える。しかし、今季ここまでを「苦しかった」と振り返った。

「昨シーズンから順調に試合に出ていて、ゴールという結果もそこそこ出ていました。今シーズンも開幕から先発で試合に出ていましたけど、そのわりに結果を出せていなかった。もっと上のレベルへ行くためには結果が必要だな、と。だから苦しいというか、悔しいというか、満足できないシーズンを過ごしていました」

 ようやく決まったJ1初ゴールで「気持ちが吹っ切れた」。それが自分らしい、思い切りに溢れたゴールだったから、なおのことである。

「思い切りの良さがいいのかな。それも性格だと思います。明るい感じ、楽しい雰囲気が好き。そういった舞台に立つと楽しい感情が出てくる。目立つのも嫌いではありません。好きということかな?」

 無邪気に笑う様子に、少しだけあどけなさも漂う。でも、ゴールは偶然の産物ではない。日々のトレーニングでは居残り練習を欠かさず、30分以上もシュートを打ち込む日も。

「ペナルティーエリア外からのシュートが多いです。ポイントは当たる瞬間だけ力を入れること。狙っていなくてもブレ球になる時もあります。しっかりミートすることを意識すると自然とブレ球になるんです」

 ボールの芯を捉えたシュートで、これからも未来を切り拓いていく。最近ではU-22日本代表の一員として欧州遠征し、同世代のイングランド代表やオランダ代表としのぎを削った。世界の強豪国との対戦は、次なる未来をイメージさせてくれるとともに、目指すべき道筋を明確にしてくれた。

「今一番の目標はパリ五輪です。前回の東京五輪を見て、すごく出場したくなりました。東京五輪に出場した選手の半分くらいがA代表にいる。パリ五輪に出場することでA代表が見えてくると思いますし、そのためにも後半戦はもっとゴールに関わって、自分がチームを引っ張っていくというくらいの気持ちでやりたい」

 J1初ゴールは名刺代わりの一発に過ぎない。持ち前の思い切りの良さできっかけを掴んだ三戸舜介が、上昇気流に乗ってスターダムへの階段を駆け上がる。

[プロフィール]
三戸舜介(みと・しゅんすけ)/2002年9月28日生まれ、山口県出身。JFAアカデミー福島から2021年にアルビレックス新潟に入団。同年のJ2リーグ開幕戦でプロデビューを果たした。スピード豊かなドリブルを武器に各年代別の代表チームにも名を連ね、来年に行われるパリ五輪代表チームのメンバー候補の1人として注目される。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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