日本代表で株を上げたのは? 「まるで別人」「プロやなこいつ」と絶賛…エルサルバドル戦出場の全17選手を金田喜稔が採点

日本代表の出場全17選手を採点【写真:徳原隆元】
日本代表の出場全17選手を採点【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】菅原は「もう少し見たかったというのが本音」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は6月15日に豊田スタジアムで国際親善試合を行い、エルサルバドル代表(同75位)に6-0と快勝し、カタール・ワールドカップ(W杯)後、第2次森保ジャパンでの初勝利となった。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した17選手を5段階(5つ星が最高、1つ星が最低)で採点した。

   ◇   ◇   ◇

<GK>
■大迫敬介(サンフレッチェ広島)=★★★★☆(4つ星)
 危ない場面はほぼなく、枠内シュートが飛んだ場面でもしっかりセーブ。本来はビルドアップでの貢献なども期待したかったが、この日は展開的に出番が少なく、見せ場自体も少なかった。満点ということではないが、無失点に抑えて危なげなく勝利した点は評価したい。

<DF>
■谷口彰悟(アル・ラーヤン)=★★★★☆(4つ星)
 開始早々のゴールは力強い一撃だった。あのゴールが試合の流れを決めたとも言える。守備でも危ない場面はなく、板倉との連係や補完性も抜群。相手に退場者が出たとはいえ、守備は最後まで安定していた。

■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★★☆(4つ星)
 危ないシーンと言えるのはほぼなかった。寄せの強さ、1対1の粘りなどは光るものがあるし、攻撃参加できるのも強みだ。相手が1人少なくなり、展開力を発揮するような試合ではなかったが、冨安健洋も含めて、日本の守備陣を牽引する存在という期待は変わらない。

■森下龍矢(名古屋グランパス)=★★★★☆(4つ星)
 日本代表デビュー戦。しかも地元の名古屋ということで思いもひとしおだっただろう。運動量が多く、アグレッシブな選手であることはJリーグでも証明している。この日もそんな強みを見せていたし、デビュー戦としては及第点以上と言ってもいいだろう。大学時代にともにプレーした三笘、旗手との阿吽の呼吸もあったし、今後どんなコンビネーションを見せてくれるのか期待が膨らむ。
 
■菅原由勢(AZアルクマール)=★★★★☆(4つ星)
→ハーフタイムOUT
 攻撃と守備の両方でアグレッシブさを見せてくれていた。攻撃参加も光っていたし、久保との連係も上々。もう少し見たかったというのが本音だが、評価としては上々のパフォーマンス。また今後もチャンスをもらえるはずだ。

左サイドでスタメン出場した三笘薫【写真:徳原隆元】
左サイドでスタメン出場した三笘薫【写真:徳原隆元】

三笘は「これぐらいできるのは当たり前の領域」 久保は「最も評価していい選手の1人」

<MF>
■守田英正(スポルティング)=★★★☆☆(3つ星)
→後半31分OUT
 この日の日本で、採点が難しい選手の1人。能力的に言えば、もっとやれる選手なのは確か。相手が1人少ない状況で、リスクのあるプレーをする必要もなく、中盤でソツなくボールを散らしていた点を考えれば、十分な出来と評価するのは簡単だ。一方、なぜそこで相手がフリーになっているのか、なぜそこにパスを通されるのかという場面が2、3回あった。1人多い状況だから目立たないし、致命傷にもならなかったが、強豪だったらどうだったか。彼の能力が高いのを知っているし、1人多い状況だからこそ、もっとできたという意味でやや厳しめの採点としたい。

■三笘 薫(ブライトン)=★★★☆☆(3つ星)
→ハーフタイムOUT
 序盤の仕掛けでフリーキック(FK)を獲得し、そこからゴールにつながった。それ以外にも、久保のゴールをアシストしたし、堂安のゴールも三笘のシュートから生まれたもので、そういう意味ではゴールに直結するプレーを見せていた。さすが三笘と感じた一方、イングランドでの活躍を知っている分、局面を打開するシーンをもっと見たかったというのも本音としてある。能力が高いことを考えると、1人少ない相手に対してこれぐらいできるのは当たり前の領域に達している。

■旗手怜央(セルティック)=★★★★☆(4つ星)
 久保と並び、この日の活躍度はトップクラス。攻撃のリンクマンとして機能しただけでなく、守備では守田と好相性で、攻守両面で良さが光った。何より良かったのは、パスを出して終わりではなく、ゴール前にも顔を出すところだ。総合力の高さを改めて印象付けたし、これからも継続的に呼ばれるべき選手だろう。

■堂安 律(フライブルク)=★★★★☆(4つ星)
→後半20分OUT
 三笘のシュートのこぼれ球に反応した形だが、ゴール前での嗅覚が光ったゴール。ランニングしていたからこそ生まれたものであり、やり切るプレーは評価に値する。振り向きざまのシュートなど、らしさが光る場面もあった。新10番としてプレッシャーがあったと思うが、ゴールという結果を残した。

■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★★☆(4つ星)
→後半20分OUT
 本当にアグレッシブな姿を見せてくれたし、1ゴール2アシストという結果もそれを物語っている。惜しいシュートもあったし、チャンスに絡む場面がシンプルに多い。この日、最も評価していい選手の1人だろう。どこからでもゴールに迫るというような雰囲気があり、以前の久保に比べると、まるで別人のような怖さを醸し出している。

<FW>
■上田絢世(セルクル・ブルージュ)=★★★★☆(4つ星)
→後半20分OUT
 上田が起点となった攻撃が何度もあり、そこからゴールも生まれている。上田自身はペナルティーキック(PK)によるゴールだったが、その前の場面では守備でもPKを誘発するなど、攻守にアグレッシブさを見せた。ベルギーで結果を残している男が、貪欲さを体現するプレーを見せており好感が持てる。もっと評価されていい選手だと思っているし、待望の代表初ゴールを祝福したい。

途中出場からゴールを決めた中村敬斗【写真:徳原隆元】
途中出場からゴールを決めた中村敬斗【写真:徳原隆元】

中村は「成長次第で本当に面白い存在」 期待を裏切らない相馬は「計算できる選手」

<途中出場>
■中村敬斗(LASKリンツ)=★★★★☆(4つ星)
←ハーフタイムIN
 後半からの出場で1ゴールの結果を残した。オーストリアでゴールを量産し、アシスト面でも貢献しているだけに、アタッキング能力全般が高い。三笘とタイプは違うが、今後期待できるアタッカーの1人であることを証明した。シンプルに期待値が上がるパフォーマンスぶりで、チャンスで決め切った点も評価できるポイントだ。シュートが上手いし、左サイドで独特のタイミングのドリブルを見せてくれた。三笘とは異なる「自分の形」を見せてくれたし、今後の成長次第で本当に面白い存在になると思う。

■相馬勇紀(カーザ・ピア)=★★★★☆(4つ星)
←ハーフタイムIN
 いつ、どこでプレーしても期待を裏切らない。一言で評するなら「計算できる選手」ということに尽きるだろう。プレーのアベレージが高く、どんな場面で送り出しても安心して見ていられる。好不調の波も小さく、プレーの質も安定している。古橋のゴールも相馬のクロスからだったが、決定的なプレーもできるのが強み。いつ見てもサボらず、「プロやなこいつ」と素直に感じさせてくれる。

■古橋亨梧(セルティック)=★★★★☆(4つ星)
←後半20分IN
 ゴールシーンはさすがの一言。動き出しの良さは今に始まったことではなく、彼の真骨頂とも言えるべきもの。日本時代から証明しているし、セルティックでも結果を残した。とはいえ、代表での結果を求めていただろうから、ゴールを決めてホッとした気持ちもあるだろう。本当にシュートセンスが抜群で、継続して使って上げてほしい。

■川辺 駿(グラスホッパー)=★★★★☆(4つ星)
←後半20分IN
 長い時間見てみたい選手の1人。積極的に前線に顔を出すし、縦に抜けていく運動量や狙いどころが面白い。ボールの扱いも上手いから、ゲームメイクの面でもさらなる活躍が期待できる。周りを生かしつつ、自分の良さも発揮できるタイプ。古橋がゴールした場面でも前線に顔を出して相手を引き付けており、いぶし銀の働きをしていた。見る人が見れば分かる働きぶり。

■浅野拓磨(ボーフム)=★★★☆☆(3つ星)
←後半20分IN
 チャンスはあったが結果は残せなかった。上田綺世、古橋亨梧、中村敬斗らが結果を残したなかでポジション争いが激化中。経験値では上回っているだけに貫禄を示したかったが、この日は存在感を示せないまま試合が終了した。

■伊藤敦樹(浦和レッズ)=短時間のため採点なし
←後半31分IN
 6月14日に追加招集されたなか、すぐさまA代表デビューを果たした。コンビネーションなどのすり合わせが不十分なのは否めず、大きな見せ場はなかったものの、リードした展開のなかでそつなくプレーし、勝利に貢献した。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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