歴代日本人ストライカー「TOP10ランキング」 三浦カズ、ゴン中山、大迫勇也を超越…総合トップは?

3タイプのストライカーを総評「総合TOP10」を独自に選定【写真:徳原隆元 & Getty Images】
3タイプのストライカーを総評「総合TOP10」を独自に選定【写真:徳原隆元 & Getty Images】

3タイプのストライカーを総評、「総合TOP10」を独自に選定

 日本サッカー界にはこれまで、さまざまなタイプのストライカーがその名を轟かせてきた。相手との巧みな駆け引きから得点嗅覚を発揮した者や力強いポストプレーを武器にゴールへ迫ったハンターなど、特徴は多岐にわたる。「FOOTBALL ZONE」では、日本人ゴールハンターの系譜を振り返るべく特集を展開。ここでは「センターFW」「シャドー&セカンドトップ」「ワイドアタッカー」の3タイプの中から、歴代日本人ストライカー「総合TOP10」を独自に選定し紹介する。

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 歴代日本人ストライカーを「センターフォワード」「シャドー&セカンドトップ」「ワイドアタッカー」という3部門からトップ10をピックアップした。MFでありながらJリーグで上位の得点を記録した藤田俊哉や森島寛晃、伸び盛りの上田綺世や小川航基といった現在進行形のタレントをランク入りさせられないなど、選考の難しさも痛感したが、今回の日本人ストライカー企画におけるベストは尽くしたつもりだ。

 そして総合ランキングということで、上位10人に絞らなければいけない。ここで改めて評価基準を変えるわけにもいかないので「決定力」「駆け引き」という共通項目に「センターフォワード」なら「ポストプレー」、「シャドー&セカンドトップ」なら「アシスト」、「ワイドアタッカー」なら「打開力」をスペシャリティーと称し、総合評価を算出している。

 総合1位は「シャドー&セカンドトップ」部門の大久保嘉人だ。J1最多(191ゴール)得点記録保持者でもある元日本代表FWは、「駆け引き」が全体でトップの「11」。「決定力」と「アシスト」を合わせて「30」となった。今回はそれぞれの最高値を「11」としたが、もともと10点満点で評価していたところに、あえて差を付けるために設定したものなので「決定力」の「10」も最高水準であり「アシスト」の「9」もかなりハイレベルということになる。

 大久保の場合は「シャドー&セカンドトップ」部門に区分したが「センターフォワード」も「ワイドアタッカー」もこなせる万能型であり、局面でのポストプレーや打開力などもある。つまり、どこのカテゴリーに入れても最上位か、それに準じる評価ができたはずだ。非常にクレバーな選手だが、かつて日本代表を率いた岡田武史氏から「野生味がある」と言われたように、ある種のリミッターを外した時の鋭さも目を見張るものがあった。

 大久保に続いたのが中山雅史、大迫勇也、”キングカズ”こと三浦和良の3人。中山、大迫は「センターフォワード」として評価したが、それぞれに特長があり、甲乙つけ難いレベルにある。中山は主に磐田で活躍し、4試合連続ハットトリックなど伝説を打ち立てた。「中山隊長」の異名を取り、絵に描いたようなフィニッシュだけでなく、こぼれ球に頭から飛び込んで決めるなど、日本人FWの中でも最も「ザ・ストライカー」の称号がふさわしいかもしれない。

 大迫は抜群のキープ力で攻撃を牽引しながら“半端ないゴール”を決めてきた。先人と比較しにくいのは海を渡った時期が早く、ドイツでは2列目を任されるなど、ストライカーとして評価しにくい時期が長くあるためだ。日本代表でも戦術的に、前線で攻撃の起点になる負担が大きく、国際Aマッチ57試合25得点という成績以上の価値があったと考えられる。Jリーグに復帰してからしばらくコンディションや環境適応に苦しんだが、現在は神戸のエースとして圧倒的な存在感を示しており、ここからもうひと花もふた花も咲かせることを期待している。

プレミア優勝経験の岡崎、プロ入り後に覚醒した興梠らもトップ10入り

“キングカズ”に関してはここで多くを語るまでもない。ブラジルではウインガーとして評価を高めていたが、読売クラブに復帰。Jリーグが開幕した1993年からセリエA挑戦の1994-95シーズンを挟んで、1996年まで111試合で82得点という驚異的な成績を残している。その後、クロアチアやオーストラリアでもプレーしながら、2021年まで横浜FCでプレー。若い選手たちに与えた影響力は計り知れない。その意味で、今回のようなランキング付けをするのは申し訳ないが、純粋にストライカーとしての能力や実績もレジェンドに値する。

 さらに興梠慎三、高原直泰、古橋亨梧、三笘薫、佐藤寿人、岡崎慎司をトップ10に評価。興梠はもともと創造的な2列目のアタッカーとしてプロ入りしたが、鹿島でストライカーとして覚醒すると、大久保に続くJリーグ歴代2位の得点数(166ゴール)を記録し、現在も更新している。得点力もさることながら「9」に評価した「ポストプレー」をはじめ、味方に決めさせるフィニッシュワークもハイレベルだ。もう1つ評価したいのがゲームを読む力。浦和でも興梠の提案によって悪い流れを良き流れに転じさせた事例はよく聞く。その意味では数字的な評価にとどまらないタレントではある。

 純粋なストライカーとしての得点力で言えば佐藤はもう1つ上の評価をしても良いかもしれない。高原に関しては欧州での日本人評価がそれほど高くない時期に、ドイツなどで結果を出しながら開拓してくれた功績は計り知れない。岡崎も海外で長くキャリアを築いている1人。ドイツのマインツでは当時のトーマス・トゥヘル監督に重用されて、2シーズン連続で2桁得点をマークした。監督の起用法によってストライカーとしての仕事が左右されてしまう部分もあるが、レスター・シティで主力として奇跡的なプレミアリーグ優勝を成し遂げた実績は日本人FWの金字塔であることは間違いない。

 古橋の評価については「シャドー&セカンドトップ」部門、三笘薫についても「ワイドアタッカー」部門で触れているが、2人とも現役選手であり、ピークはここから先にある可能性が高いということ。この時点で歴代の名選手と並べて語っている時点で素晴らしいことだが、さらなる成長と活躍で新たな歴史を作っていってほしい選手たちだ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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