久保建英は「犠牲者を作り続けた」 絶妙タッチに沸いた観客…スペインメディアや番記者絶賛「輝きを放った」【現地発コラム】

セビージャ戦にスタメン出場した久保建英【写真:Getty Images】
セビージャ戦にスタメン出場した久保建英【写真:Getty Images】

22歳誕生日の最終節セビージャ戦でスタメン出場した久保、切れ味鋭いプレーを披露

 22歳の誕生日を迎えたレアル・ソシエダMF久保建英が今季最終戦で再び観客を魅了するパフォーマンスを発揮し、キャリアハイのシーズンを締めくくった。

 ソシエダは前節アトレティコ・マドリード戦に敗れるも、5位のビジャレアルが敗れたことで4位を確定し、2012-13シーズン以来、10季ぶりとなるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得が決定した。達成感と幸福感であふれるラ・リーガ最終節(現地時間6月4日)、4日前に前人未到7回目のヨーロッパリーグ王者となったセビージャをホームに迎えた。

 すでに大きな目標を達成しているため、スペインメディアの先発予想がローテーションするか否かで大きく分かれたなか、3試合連続でスタメン入りした久保はいつもどおり4-3-3の右ウイングでプレーし、序盤から切れ味鋭いプレーを披露した。

 前半、保守的だったセビージャ相手に、アレクサンドル・セルロートやブライス・メンデスのシュートチャンスを演出し、自らもゴールを積極的に狙っていく。30分には自陣から長い距離のドリブルで、この日デビューのディエゴ・オルミゴを華麗にかわすプレーを見せ、さらに前半終了間際、股下を通すボールタッチでオルミゴの逆を突いて転倒させるなど、ゴールシーン以外で最も観衆を沸かせた選手となった。

 後半、セビージャが反撃に転じたことでやや劣勢になるなか、同19分にペナルティーエリア内で決定的チャンスを得るも左足のシュートは惜しくもゴール右に逸れ得点ならず、27分にピッチを去り今季を終えた。

 試合はメンデスとモハメド=アリ・チョーの得点により2-1で勝利。10季ぶりに4強入りを果たし、クラブ史上のシーズン最多となる公式戦30勝を達成したソシエダは試合後、サポーターと一緒に成功を祝い、契約満了で退団するキャプテンのアシエル・イジャラメンディに別れを告げ、素晴らしいシーズンを締めくくった。

 イマノル・アルグアシル監督は試合後、今季の久保のパフォーマンスについて問われた際、「満足している」と答えつつも、その後すぐに「とても若く多くの才能があるのでもっとできる」と来季への期待を込めた。そして今季最後の会見を終えたあと、記者1人1人と握手や熱い抱擁を交わし、立ち去っていった。

久保建英を称賛したスペインラジオ局「カデナ・セル」でソシエダ番記者を務めるロベルト・ラマホ氏【写真:高橋智行】
久保建英を称賛したスペインラジオ局「カデナ・セル」でソシエダ番記者を務めるロベルト・ラマホ氏【写真:高橋智行】

スペイン紙や現地番記者が賛辞「相手を抜いて置き去りにする能力を示した」

 長い1年間の重圧から解き放たれ、自分らしさを存分に発揮した最終節の久保に対し、スペインメディアは軒並み高評価。クラブの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「素晴らしいシーズンを送るとともに、犠牲者を作り続けた。セビージャはオルミゴのキャリアがデビュー戦で台無しになる前に、ハーフタイムで交代させざるを得なかった。久保は多くのプレーを生み出しトライしたが、今回は決定力を欠いていた」と評し、チーム2位タイの7点(最高10点)をつけた。

 一方、もう1つのクラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「相手GKとの1対1やポスト脇に外したシュートシーンでは精度を欠いたものの、再び相手を抜いて置き去りにする能力を示した。コンスタントにブライス・メンデスとの連係を目指し、トップ下の位置からパスを出し、オヤルサバルを外に開かせた」と記し、同じくチーム2位タイの4点(最高5点)と評価した。また全国紙「マルカ」、「AS」紙の久保評価はともに2点(最高3点)だった。

 今季最終戦、ホームで観客を魅了するプレーを随所に披露した久保について、スペインのラジオ局「カデナ・セル」でソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ氏は次のように感想を述べてくれた。

「再び右サイドで主役を演じて相手DFを苦しめるなど、非常に良い試合をしていた。チームの中心的な役割を果たす素晴らしい活躍ぶりだったし、ホームで22歳の誕生日を勝利で飾り、サポーターと一緒に祝いたいという強い気持ちが伝わっていたよ。私には今日、タケがいつも以上に自信に満ちあふれていたように見えたし、それによって素晴らしいクオリティーを発揮できたのだと思っている。右サイドで再び輝きを放った今日の試合はタケにとって今季のハイライトの1つだった」と、久保の持ち味が大いに詰め込まれた試合だったとの見解を示した。

今季最終戦セビージャ戦が行われたソシエダの本拠地レアレ・アレーナの様子【写真:高橋智行】
今季最終戦セビージャ戦が行われたソシエダの本拠地レアレ・アレーナの様子【写真:高橋智行】

7月10日にプレシーズン開始のソシエダ、親善試合を経て8月中旬にラ・リーガ開幕

 今季の久保はラ・リーガで35試合(先発29試合)、2452分出場、9得点4アシスト。マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェに所属した過去3シーズンを大きく上回る素晴らしい成績で今季を終えた。すでに来季残留を表明しているなか、今月半ばに代表戦を戦い、束の間のオフを過ごし、心機一転して来月に新たなシーズンを始動することになる。

 ソシエダはこの後、7月10日にプレシーズンを開始し、現時点で同29日にレバークーゼン(レアレ・アレーナ)、8月2日にアトレティコ・マドリード(メキシコ・モンテレイ)、同5日にベティス(アメリカ・サンフランシスコ)との親善試合が組まれており、12・13日の週末にラ・リーガ開幕戦を迎える予定になっている。

 ワールドカップ(W杯)を途中に挟んだ異例のシーズンが終わったばかりだが、すぐに来季が訪れ、スペインでのキャリア5年目にして初のCLに挑む久保の姿を見られる瞬間が間もなくやってくる。

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)



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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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