優れた“パサー”が進化させた「日本人ストライカーの系譜」 元主審・家本氏が持論「イニエスタがいたから…」

左から佐藤寿人氏、大久保嘉人氏、古橋亨梧【写真:Getty Images】
左から佐藤寿人氏、大久保嘉人氏、古橋亨梧【写真:Getty Images】

優れたパスの出し手が大久保嘉人氏、古橋を成長させた

 得点を決める“ストライカー”と決定的なパスを出す“パサー”には密接な関係がある。「FOOTBALL ZONE」では日本人ストライカーに焦点を当てた特集を組むなかで、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏を直撃。審判としての観点から現在のJリーグでプレーする日本人ストライカーの傾向について持論を展開している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 FWにもさまざまなタイプがいるが、家本氏が「副審泣かせ」として挙げたのが最終ラインでの駆け引きが巧い「消える・裏抜けタイプ」だ。特にサンフレッチェ広島などでプレーした元日本代表FW佐藤寿人氏、ガンバ大阪や京都サンガF.C.などで活躍した大黒将志氏は「群を抜いていた」というが、現在似たようなタイプのFWはJリーグにいるのだろうか。

 家本氏は「凄いパサーが1人いて、そこからボンボンとボールが出てくるチームって、今のJリーグではあまり見ないですね」と自身の考えを述べると、過去に優れた“パサー”がいたからこそ活躍した選手の一例として、川崎フロンターレ時代の大久保嘉人氏(元日本代表)の名前を挙げている。

「大久保さんは自分でボールを運べる選手でした。パサーがいると、点で合わせられる選手でもあったと思います。大久保さんが川崎で良かったのは中村憲剛さんという凄いパサーがいたから生きた点も大きい。彼は(ヴィッセル)神戸とかセレッソ(大阪)、FC東京では苦しんでいた時期もありました」

 2021年にヴィッセル神戸からセルティックに渡り、今季スコットランドリーグで得点王に輝いた古橋亨梧も「パサーに生かされたタイプ」だと家本氏は話す。「イニエスタがいたからこそ神戸時代の活躍があると思います」と世界的名手の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタの存在の大きさにも触れた。

 家本氏は、そうしたパサーの存在が大きく影響を与えそうな例として、柏レイソルの細谷真大の名前を個別で挙げる。「凄いパサーがいたらもっと生きる」と、ポストプレーも得意とする柏の日本人ストライカーが、パスの出し手次第で大きく成長することも可能ではないかと考察していた。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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