三笘薫のプレーの何が凄い? 日本代表OBが見た世界最高峰プレミアリーグで活躍できる訳

今後の課題は対策を練られた際に周囲をより生かせるか

■プレミアリーグ第22節ボーンマス戦で相手DFアダム・スミスを置き去り

「三笘はドリブルが注目されがちですけど、トラップとボールタッチが超一流。大きなキックフェイントをするからこそ相手は膝をつく。でも、そうなるとコントロールが難しくなって、縦に行こうと思ったら長くなってしまったり、ミスも生まれやすくなる。ボール1個分ぐらいの狭いスペースを抜けれるのは本当に凄い。FAカップ4回戦リバプール戦の“ダブルタッチ弾”に代表されるように、あのタッチ感覚は(元ブラジル代表FW)ロナウジーニョとか世界的テクニシャンを彷彿させるレベルだと思います」

■プレミアリーグ第21節レスター・シティ戦で左45度から華麗ミドル弾

「これが一番、左サイドでプレーする選手が理想とする得点だと思います。縦から中に入って、シュートのキックもイメージどおり。縦に行かれたくないディフェンダーとしては、中でこのゴールを決められたらお手上げです。シュートの瞬間、顔を上げていないので、間接視野で捉えながら、大体これくらいだろうというイメージで蹴っているかもしれません。

 精度の高い正確なシュートがある選手とない選手とでは、怖さが全然違います。シュートがなければ、ボールを持たせて最後だけ締めればいいけど、シュートがあるとなればそれを踏まえた守備をしなくてはいけなくて、前に出なくてはいけない場面もある。ドリブルはいいけどシュートはイマイチという選手は多くいますけど、三笘はどちらも兼備している。自分でゴールまでできれば、それが理想ですよね(笑)。攻撃の選手は90分間の中で決定的な仕事を1~2回できればいい。10回トライして9回止められたら普通は交代させられるけど、今の三笘の実力からすれば、一発やってくれればいいというくらいの信頼を勝ち獲っている。“三笘対策”のように、相手のプランを変えさせる選手になってきていると思います」

■FAカップ4回戦リバプール戦の“ダブルタッチ弾”

「ファーサイドで待ち受けていて、最初はトラップをしてそのままニアサイドに蹴り込もうと思ったはずです。でも、トラップが数十センチレベルで自分が思ったよりも高く上がってしまったことで、ディフェンスが寄せてくる時間が生まれてしまった。それを逆手に取る形で、最後の最後でおそらくプレーを変えている。普通にシュートを打ったら当たってしまうと考えて、選択肢を変えられる余裕とそれを体現できる技術。(プレミアリーグ第22節)ボーンマス戦のヘディング弾を含めてゴールもアシストもできて、末恐ろしい選手です」

■今後の課題

「今の三笘は1人ではほぼ止められないので、相手も組織で守ってくる。癖が知られてきて、これからがまたひと勝負。対策を練られた時に、自分が生きなくても、ほかの選手を生かせるようなバリエーションを増やせられればチームも良くなるだろうし、個人的な評価ももっと上がると思います。とは言っても、三笘がプレーしているのはプレミアリーグ。世界最高峰の舞台で主力として戦っていることにも価値があるし、香川真司(元マンチェスター・ユナイテッド/現セレッソ大阪)はいましたけど、三笘ほど長い距離をドリブルで持っていって打開できる選手はほとんどいなかった。三笘がビッククラブ、例えばレアル・マドリードの3トップの一角に入った時にどういう風に生きるのか、想像するだけでも面白そうです」

(FOOTBALL ZONE編集部)



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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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