森保監督、続投早々に渦中へ 今をときめく三笘薫への“注文発言”の切り取りを考察

質問者はW杯では状態を気にしながら起用しなければいけなかったのではないか、と前提で会話

 質問者は、三笘がW杯前に発熱したり足首を怪我していたことを指摘していた。つまり、W杯ではコンディションに気を遣いながら起用しなければいけなかったのではないか、という点を前提として話していたのだ。

 また、森保監督は質問への答えが終わったあとに、「薫の状態のことはよくご存じで。起用の仕方とか。そのうえでいろんなことを言っていただくのはすごくいいと思います」と付け加えている。

 質問の前提をわざわざ取り上げたということは、おそらく質問者の考えが正しいということを匂わせたのだろう。それに、もしかすると森保監督は三笘に関する采配への批判を知っているのではないかという答え方だった。

 実際のところ「切り取り」方によっては、このような誤解が生じても仕方がない。もちろん報道するほうにも難しさがあって、質問者の言葉よりも監督の言葉を多く伝えようとすると、前提条件として話していた部分は省略することもあるだろうし、まして回答後に付け加えたセリフを入れるのは無理だろう。

 これまでの4年間も同じような切り取りでさまざまな意図が伝わっていないことが起きた。たとえば「戦術は三笘」のように誤解を持ったまま使われている言葉もある。今後は記事が長くなっても仕方がないと考え、もう少し森保監督の意図が伝わるようにしたい、というのは自戒を込めて書き残しておこう。

 ところで、この取材では森保監督が質問と質問の間に「すみません、いつも長々と、簡潔に答えられない森保がいますので、どうぞお許しください。コミュニケーションということで。文字にする時の話し方をレクチャーしてください、みなさん」と語る場面もあった。

 これまでの取材の中で誰も森保監督に「話が長い」と言った報道陣はいないはずだ。そう思って振り返ると、「森保監督の濃密な4年半 何を成し遂げ、何ができなかったのか…一番の問題点だったのは?」という過去の記事で、「(改善してほしいのは)森保監督のトーク力」「その長さ故に伝わりにくくなっていることがある」と指摘していた。

 もしかしたら、森保監督から「チクリ」と入れられたのかもしれない。新代表発足前からすでに監督と報道陣の戦いは始まっているということなのだろうか……。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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