三笘薫、決勝ヘッド弾はなぜ生まれた? ボーンマス戦で「どうしよう」と苦心→「入るな」へ蘇った訳【現地発コラム】

ポジションを見つけられなかった前半

 三笘にとって思いどおりに事が運ばない――。そう最初に感じたのは、前半10分に右サイドから三笘の足もとへサイドチェンジのパスが渡った場面だ。ここからワントラップして得意のドリブルで相手陣営に切り込む――。スタンドを埋めたブライトンサポーターの誰もがそう思って息を飲んだ瞬間、ボールが三笘の出した右足の下をすり抜けて、そのままサイドラインを割って相手のスローインになった。

 信じられないミスに困惑気味の短い悲鳴が響くスタンド。するとこのプレーが残像としてブライトンの選手の脳裏に焼き付いてしまったのか、その後はボールが三笘に集まらず、右サイドのDFタリク・ランプティへと偏るように。

 最近の試合では“エース”としての存在感を示していた三笘。ボールを持てば必ずと言っていいほど相手に脅威を生み出してきた日本人MFをチームメイト全員が注視し、自然にボールが集まっていた。この時、三笘の頭の中で一体何が起きていたのか? 試合後に早速尋ねてみた。

「いや、もうなんか先のこと考えてしまって。次にどうしようかなって考えた時に(ボールが)下を抜けてた」

 なるほど、いわゆる“ドン引き”だったボーンマス対策に苦心した結果だったということか。ただ、このミス以外にも三笘は精彩を欠いていた。ボーンマス戦の前半は人知れず苦労していたようだ。

「(ボールを)受けるポジションをなかなか見つけられなくて。ビルドアップの際にうしろとの距離感も悪かった。もう少し自分から動いてボールを引き出せれば良かったんですけど、(サイドで)張ったところからのプレーしかなかった。そこは自分からもっとアクションしたほうがいいかなと感じた。カウンターもたくさんされましたし、どっちが勝ってもおかしくない試合でした」

 しかし、これもまたプレミアである。守りを固めて相手のフラストレーションを高めようとする格下との対戦では、スペースも時間も限られ思わぬ苦戦を強いられることになる。ご存知の方も多いかもしれないが、フィジカルが重視されるイングランドのフットボールには肉弾戦の伝統があり、ほかの欧州リーグよりも接触プレーに寛大だ。アタッカーは混み合った敵陣でマーカーに“当たりまくられる”わけだから堪らない。

 ここまで守備を徹底した相手との対戦は、三笘にとって今季初めてだったのではないだろうか。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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