稀代の“名手”が挑む“名将”への道 レアルを復活させたジダン監督が抱く「クラブ世界一」の野望

選手、監督として史上7人目のCL制覇

 ただ、指揮官就任のタイミングは計画的なものではなく突然の出来事だった。昨季のレアルは開幕前にラファエル・ベニテス監督を招聘したが、選手たちの人心掌握に失敗。そこでペレス会長は今年1月に切り札とも言えるジダン監督の就任を決めた。

 唐突なトップチームの指揮を不安視する向きも多かったが、新体制になって以降、後半戦のレアルは勢いに乗る。看板3トップ「BBCトリオ」を従来通り生かしつつ、4-3-3システムの浮沈を握るアンカーにMFカゼミーロを積極起用した。そのカゼミーロは4月2日、宿敵バルセロナ戦で相手のエースFWリオネル・メッシを完全に抑え込む活躍ぶりを見せ、ジダン氏の監督としてのクラシコ初陣での勝利の立役者となった。

 クラシコ勝利で勢いに乗ったチームは、CL決勝トーナメントでもローマ、ヴォルフスブルク、マンチェスター・シティを破って決勝の舞台にたどり着く。ファイナルの相手は同都市のライバルで闘将ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレチコ・マドリードと、2年前と同カードになった。試合はPK戦までもつれ込む白熱の展開となったが、レアル5人目のキッカーを務めたFWクリスティアーノ・ロナウドが成功させて熱戦に終止符を打ち、クラブ史上11度目の欧州王者に輝くとともに、ジダン氏は史上7人目となる選手と監督両方でのビッグイヤー獲得となり、歴史にその名を刻んだ。

 ジダン監督がピッチで表現するスタイルは、オーソドックスなものだ。グアルディオラ監督のような緻密なポゼッション構築でもなく、シメオネ監督のような徹底した規律を植えつけ、そして情熱を前面に押し出すタイプでもない。

 

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