農家転身の元Jリーガーが“事件”回顧で反省「最悪の結果が…」 長谷部誠から愛あるお叱り「調子に乗ってんじゃねーよ」
【元プロサッカー選手の転身録】西澤代志也(浦和、草津、栃木、沖縄)番外編:浦和加入後に先輩をなじってお叱り
浦和レッズユースで育ち、浦和、ザスパ草津、(現・ザスパクサツ群馬)、栃木SC、沖縄SVを渡り歩いた西澤代志也。2021年シーズン限りで現役を引退し、農家への転身を決断した。現在はおいしい農作物作りに励む西澤は、サッカー選手として16年活動し、さまざまな逸話を持つ。セカンドキャリアに迫る「転身録」の番外編として、現役時代の衝撃エピソードをお届けする。(取材・文=河野 正)
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Jリーグの浦和レッズ、ザスパ草津(現・ザスパクサツ群馬)、栃木SC、九州リーグの沖縄SVに在籍し、サッカー選手として16年活動してきた西澤が、昨シーズン限りで現役を引退した。怪我に悩まされ続け、持てる力を出し切れない不運が付いて回ったが、逸話には事欠かなかった。
西澤は浦和がJリーグで初優勝した2006年、下部組織のユースチームから昇格したMF。中学時代は狭山ジュニアユースFCという、埼玉県内でも強豪のクラブチームでプレーしていた。
その頃、進路についてはこんなふうに考えた。
「まず高校チームを敬遠した一番の理由が先輩・後輩の関係で、あれに耐えられるのかなって思いました。ジュニアユース時代は上下関係が全然なく、楽しくやれていましたからね。クラブチームに進むことを決め、いろんな人に相談していたら、浦和から声が掛かったんです」
加入したばかりの西澤はめっぽう尖っていたそうで、先輩に対する言葉遣いもでたらめだったという。
自前の練習場で行われたあるトレーニングマッチでの一コマ。西澤は試合中、「おい、ちゃんとやれよ!」「何やってんだよ!」「そうじゃないだろ!」といった上から目線で先輩をなじり、怒鳴りまくった。
試合が終わって両チームが整列し、挨拶した瞬間だった。「長谷部(誠)さんにアゴを押さえつけられて『おい、調子に乗ってんじゃねーよ。後で俺のところへ来い』と言われました。ロッカールームに戻ると、長谷部さんにめちゃくちゃ怒られたんです」
これだけでは済まなかった。紳士的な振る舞いで定評のある平川忠亮からも、「あの言葉遣いは何だ、調子に乗るなよ」と叱られる。これを横で聞いていた岡野雅行には「ヒラがあんなに怒るなんて相当のことだぞ」とダメを押されたのだ。
西澤はこの“事件”をきっかけに自らの未熟さを痛感し、意識を変えていったという。
「思い出すだけでも恐ろしいことでした。それまでは新人だし、練習中も練習試合でも言いたいことも言えないくらい、すごく遠慮していたんですよ。でもテレビか何かで“ピッチに入ったら先輩も後輩も関係ない”みたいなことを言っていて、それに感化されたら最悪の結果が待っていました。何の実績もない新人にボロクソ言われたら、誰だって頭にきますよね」
西澤は少し恥ずかしそうにこう言うと、さらに当時の情景を思い出し、「そうだ、主審にも『あれはないよ』って注意されました」と付け加え、「(田中マルクス)闘莉王からは何もなかった?」と水を向けると「ありました。翌日『お前、なんか、随分と調子に乗ってるらしいじゃないか』って言われ、それからずっといじられました」と苦笑した。
テレビの話を曲解したうえ、よもや上下関係を気にしなかったジュニアユース時代のスタイルを持ち込んでしまったのだろうか。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。