森保監督の目に浮かんだ涙と険しい表情 日本代表を率いる指揮官の胸に去来したものとは?
【カメラマンの目】日本代表のW杯メンバー発表会見、森保監督の表情に注目
サッカーは選手、スタッフ、レフェリー、記者・解説者、フォトグラファーなど、それぞれの立場から見える世界がある。22歳の時からブラジルサッカーを取材し、日本国内、海外で撮影を続ける日本人フォトグラファーの徳原隆元氏が、11月1日に行われた日本代表のW杯メンバー発表会見を取材。カメラマンの目に映った独自の光景をお届けする。
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ナショナルチームを率いる指揮官にとって基軸となるのは、言うまでもなくワールドカップ(W杯)である。4年に一度開催されるサッカー界最大のイベントはナショナルチームを構築するうえで節目となり、日本サッカーもこの4年のサイクルが基本となりチーム作りが行われ、そして新監督が誕生してきた。
チームの先導者に就任した人物は、W杯出場に向けてサムライブルーの完成度を高める作業に熱中することになる。しかし、体調面や成績不振によって、志の途中でチームから離れることを余儀なくされた指揮官もいた。
そうしたなかで森保一監督はオーストラリアとの戦いを制し最終予選を突破。本大会出場を勝ち取った。森保監督にとってW杯の舞台は、指揮官として手腕を振るうクライマックスの場となる。
集大成となる大会へと臨む26人のメンバー発表の場において、森保監督の言葉は、これまでの道のりやサムライブルーに関わった人々への感謝の気持ちを述べることから始まった。
会見の席上の最前列からカメラを壇上へと向ける。ファインダーに写った森保監督の目には、うっすらと涙が浮かんでいるように見えた。そしてメンバー発表へと移っていく。
静かな感情の高まりを見せた、この時の森保監督の胸中に去来したものはどんなことだったのか。そう、集大成へと臨む人物の心理を読み解こうと考えたのは、壇上に近い位置で会見を見守っていたスチールカメラマンの撮影ポジションが影響したのかもしれない。それは察するに苦楽をともにしてきた選手たちの姿だったのではないだろうか。
この4年間、指揮官は多くの選手たちとともに日本サッカー発展のために努力を続けてきた。しかし、森保監督のもとで戦ってきた選手たち全員をW杯のメンバーとしてチームに加えることはできない。選手たちの努力を招集という形で応えられない指揮官としての苦しい思いが、浮かぶ涙と唇を噛み締める険しい表情となって表れたのではないだろうか。
こうして発表当日の朝まで考え抜かれたというメンバー選出は、果たして正しかったか。それとも間違いであったか。その答は本大会の結果を待って示されるため、今の段階では分からない。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。