カタールW杯メンバーには必要? 英雄ブッフバルトが語る長谷部誠の“若き日”と“今”
【専門家の目|ギド・ブッフバルト】長谷部の高評価はインテリジェンスの賜物
元ドイツ代表DFギド・ブッフバルト氏が浦和レッズを指揮した2004~06年のチームには、現在もドイツ1部ブンデスリーガで活躍する長谷部誠(フランクフルト)がいた。指揮官の立場として20代前半の長谷部と接していたブッフバルト氏は、成熟を果たした今の彼をどう評価しているのか。そして、今冬のカタール・ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表に長谷部の力が必要なのかなど、率直に語ってもらった。(取材・構成=島崎英純/全3回の1回目)
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――ブッフバルトさんが実際に指導した選手の中で1人だけ、今でもブンデスリーガでプレーしている長谷部誠について聞かせください。ブッフバルトさんが指導された時の彼は、中盤の攻撃的なプレーヤーでした。しかし、現在ではフィールドプレーヤーの最後尾、リベロとして活躍しているのですが、長谷部がリベロの選手としてブンデスリーガで結果を残せると思っていましたか?
ギド・ブッフバルト(以下、ギド)「当時の長谷部はたしかに中盤の位置でプレーしていたのですが、それは彼が90分間動ける、あるいは120分間動けるいいコンディションを兼ね備えていたということでもあります。そのうえで、彼のサッカーのインテリジェンスは元々非常に高いものがありました。当時、浦和レッズを指揮していた時の私は、中盤のビルドアップの面で長谷部を生かせると思い、彼を中盤のポジションで起用していました。一方で、彼は対人プレー、1対1も強かったですし、守備面でもいいものを持っていました。
また、なんと言っても彼のインテリジェンスは当時から非常に素晴らしかった。今の彼は(38歳)年齢的な面もありますので、90分間、以前のような動きができるようなコンディションは保てません。しかし、彼のパスセンスなどのサッカー勘は依然として素晴らしいものがありますから、前方から下りて最後尾でその能力を生かせているのも当然でしょう。例えば、ドイツ代表のキャプテンも務めたローター・マテウスは優れた中盤の選手でしたが、年齢とともにコンディションが落ちてきた際に、彼もリベロのポジションに入って最高のディフェンス技術を見せました。大切なのはインテリジェンスを兼ね備えているか否か。それが選手の評価につながるのだと思います」
――ちなみにブッフバルトさんが当時接していた10代から20代半ばの長谷部はやんちゃで破天荒なイメージもありましたが、今は非常に落ち着いてチームリーダーとして振る舞っています。彼の内面の変化についてはどのように感じていますか?
ギド「たしかに彼の振る舞いは以前と今とで変化しましたが、内面の負けず嫌いな性格はいまだに残っていると思いますよ。それはサッカー選手として必要な部分でもあるので、いい面なのではないでしょうか。また、人間は歳を取れば大人しくなるものじゃないですか(笑)。ヨーロッパの選手でも、若い頃にはやんちゃでも年齢を重ねるごとに成熟していくパターンは多いですよ(笑)」
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。