J1リーグ優勝戦線の明暗 横浜FMと川崎の鮮明な差、“2000分以上”のプレー人数が命運の分かれ目に?

均等な選手起用を続けた横浜FM、一方で川崎は“依存傾向”が顕著に

 それだけに今年の横浜FMからMVP候補を絞り切るのは非常に難しい。全員がほぼ等しくチームの勝利に貢献したから、誰が選ばれてもサプライズでもあり、妥当でもある。一方の川崎は、MF守田英正(スポルティング)、MF三笘薫(ブライトン)、MF田中碧(デュッセルドルフ)ら主力の移籍を追いかけるように、守備の要DFジェジエウやFWレアンドロ・ダミアン、さらには10番を背負うMF大島僚太の度重なる離脱と不運が重なったこともあり、どうしても中心選手が偏った。

 チーム内に2000分間以上プレーした選手が6人もいて、とりわけフィールドプレイヤーで最年長のMF家長昭博は全30試合でピッチに立ち2377分間もプレーしている。首位の横浜FMを追いかけ、勝つしかなくなった状況に陥ると家長への依存傾向は強まり、第30節のアウェー柏レイソル戦では明らかに疲労の色が濃く珍しく単純なミスも目に付いたが、鬼木達監督は終了5分前の5人目の交代まで引っ張り続けた。

 夏場にも連戦が続くJリーグは、世界でも稀なほど過酷だ。もちろん財政的な背景があって可能なことだが、マスカット監督のシーズンを通しての戦略は理に適っていた。またE-1選手権には7人の代表選手を送り込みながらも、フル代表に招集される選手は不在。助っ人も含めて国内最高レベルの選手を揃えながら、公平で健康的な切磋琢磨が続いている。一発勝負のカップ戦はともかく、しばらくはJ1のリーダーとして君臨し続けることになりそうである。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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