無抵抗失点は「最善策」 福岡×名古屋、暗黙の了解無視のゴールに元日本代表DFが見解「レフェリーによる救済措置のルールができてもいい」

福岡でプレーするFWルキアン【写真:Getty Images】
福岡でプレーするFWルキアン【写真:Getty Images】

【専門家の目|栗原勇蔵】ルキアンが名古屋にボールを返していれば終わりだった

 9月3日に行われたJ1リーグ第28節のアビスパ福岡対名古屋グランパスは波乱続出だった。相手選手が試合を止めるために故意に外に蹴り出した際、相手にボールを返すのが暗黙の了解だが、福岡FWルキアンがそれを奪って最後はMFジョルディ・クルークスが流し込んでゴール。ルールに違反こそしていないが、フェアプレーに関わるこのプレーが波紋を呼び、その後、福岡は無抵抗で名古屋に1点を与えた。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「ルールが暗黙の了解状態なので、レフェリーによる救済措置のルールができてもいい」と提案した。

 前半2分、ロングボールを処理しようとした福岡のGK永石拓海がペナルティーエリア外へ飛び出ると、帰陣してきたDF宮大樹と頭同士が激突。味方同士の接触であり、2人が倒れ込んでいるなかでもプレーは止まらず、名古屋は最後にMF森下龍矢がゴールを決めて先制する。

 さらに前半20分、福岡MFクルークスがタックルを受けるが、これは正当なチャージの判定。しかし、痛んで倒れていたため、名古屋MFレオ・シルバがボールを外に蹴り出した。

 クルークスは大事に至らず、プレーは再開。福岡はDF前嶋洋太がスローインで名古屋GKランゲラックに戻そうとしたところ、このボールを福岡FWルキアンがカット。中央に折り返したボールをクルークスが蹴り込み、同点に追いついた。

 プレー自体はルールに違反したわけではないが、相手選手が試合を止めるために故意に外に蹴り出した際、相手にボールを返すのがフェアプレーであり通例ながら、それを破ってゴールを決めてしまった。

 これには名古屋側が激怒。名古屋は長谷川健太監督が福岡の長谷部茂利監督のところへ行き、2人の話し合いの結果、福岡が無抵抗で1点を与えることになり、キックオフから名古屋FW永井謙佑が1人で持ち込んでゴールを決めた。

page1 page2 page3

栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング