冨安健洋と大迫勇也の復活は“ハラハラ”と隣り合わせ? 日本代表が見守らなければならない「61×24+アルファ」

日本代表DF冨安健洋とFW大迫勇也【写真:高橋 学】
日本代表DF冨安健洋とFW大迫勇也【写真:高橋 学】

【識者コラム】冨安と大迫がそれぞれ出場も手放しで喜べない現状

 冨安健洋がプレミアリーグで2試合連続出場して15分ずつプレーし、大迫勇也も8月に入ってからは先発復帰した。森保一監督も冨安には「良かった。このまま怪我なくコンディション上げていってもらいたい」、大迫には「彼のコンディションは上がってきていると思うし、上がってきているからこそ先発で試合に出られるようになっていると思っている」と安堵した様子を見せた。

 これで最終ラインと前線の不安材料が1つずつ減りそうだ……と喜べないのが、現状ではないだろうか。

 冨安に関しては日本代表の試合に出た最後の試合は2021年11月16日、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第6戦アウェー・オマーン戦だった。その時から考えると9月のヨーロッパ遠征で復帰したとしても10か月ぶりの代表合流となる。

 冨安は2021年3月、ボローニャ時代に左ふくらはぎの筋肉を損傷し、アーセナルに移籍したあとの2021年12月には右ふくらはぎを故障する。2022年に入ってからも1月と2月にふくらはぎの怪我が再発。復帰を果たしたものの、5月には右のハムストリングを傷めて離脱を余儀なくされた。

 日本代表で絶対的な地位を確立したと思われていた冨安だったが、不在の間にほかの選手も台頭した。冨安が不参加だった2022年のW杯アジア最終予選4試合のうち、本大会出場が決定するまでは無失点。ホーム・中国戦、サウジアラビア戦は吉田麻也までも欠場したにもかかわらず、板倉滉、谷口彰悟の活躍で乗り切ったのだ。

 プレミアリーグのピッチに戻ってきたと言っても、ここまで負傷が長引いた選手ならしばらくの間は慎重な起用となるはず。そのなかで冨安のコンディションがW杯メンバー発表までに元に戻るか、予断を許さない。

 だが冨安は手応えを掴んでいるようだ。6月、日本代表の合宿に参加した際は「怪我はしていますけど、身体の使い方がいい方向に変わったのではないかとポジティブに捉えています」と怪我を振り返っていた。

 また、冨安を6月に招集した際、森保監督は「本人のコンディションを確認したい。代表活動の中で練習できる、試合もできるという見通しもある。どう彼をサポートしていくかメディカルの判断に従っていきたい」と期待を語った。結果的には冨安にリハビリを続けさせて起用はしなかったが、自分の手元でデータを集めることができたので、冨安の回復度合いについての情報は多く手に入れたことだろう。

 森保監督は8月24日からのヨーロッパ視察で訪問したい国として「ドイツ、オランダ、ベルギー、スイス、ポルトガル」などを挙げたが、イングランドについては言及しなかった。それは現時点で冨安の確認はもう必要ないということだろう。冨安についてはアーセナルで試合に出さえすれば、日本代表に招集されるのは間違いなさそうだ。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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