横浜FM×鹿島、「いつもご馳走になった」「尊敬」…意気投合の“同期対決”に注目 宿命の一戦「THE CLASSIC」が30日開催

左SBでも違和感なくプレーする広瀬陸斗【写真:(C) KASHIMA ANTLERS】
左SBでも違和感なくプレーする広瀬陸斗【写真:(C) KASHIMA ANTLERS】

2019シーズン以来のJ1優勝を目指す首位・横浜FMに2位の鹿島が迫る

 かつて加入直後からスムーズにフィットした選手がいた。広瀬である。

「SBにも柔軟な立ち位置が求められるサッカーで、言い方が正しいのか分からないですが、自由にプレーさせてもらいました。SBは使われる側になることが多いけど、マリノスでは自分がスルーパスを出す場面もあって、使われる側と使う側が半々くらいの感覚でした」

 サッカーセンスの高さをいかんなく発揮していた広瀬。鹿島ではここ数試合、左SBでも違和感なくプレーしているように、与えられた役割や仕事を難なく表現できてしまう適応能力の高さが大きな魅力だ。

「試合に出られる幸せと試合に出られない悔しさ、その両方を味わってきました。だから試合に出られるなら左SBでも、ポジションはどこでもいいです。センターバックでもいいですし、FWでもやります」

 涼しい表情で言ってのける強心臓ぶりも相変わらずだが、いい意味でポジションにこだわらない発想は横浜FMで培ったエッセンスが大きいのかもしれない。

 前回はアウェーに乗り込んで古巣に勝利した永戸だが、今回はホームに迎え撃つ立場に変わる。チームは現在、首位。3シーズンぶりのリーグ制覇に向けた歩みは順調そうに見えるだけに、ここでオリジナル10のライバルチームを叩けば大きな弾みが付く。

「自分が小さな頃から見ていた両チームで、そのJリーグ開幕からずっとJ1にいるチーム同士の戦いに関われるのは選手として幸せなこと。ただ、プレーするのと客観的に見るのでは大きく違いますし、選手としては勝たなければいけないプレッシャーもあります。首位と2位という立場で対戦できるのはとても嬉しいですし、選手冥利に尽きます」

 広瀬もこの試合に並々ならぬ気合いで臨む。鹿島移籍後、日産スタジアムで開催された過去2年のリーグ戦に広瀬の姿はなかった。もし今回、試合会場である日産スタジアムに立つとすれば2019年12月7日以来で、横浜FMが15年ぶりにリーグ優勝を決めたあの日以来となる。

「2019年はチームの一員として優勝に貢献できましたし、僕自身もサッカー人生の中で最も充実した1年でした。応援の雰囲気、サポーターの雰囲気、スタジアムの雰囲気、すべて素晴らしいので特別です。でも鹿島は勝たなければいけないチームなので、そこだけは譲れません。引き分けで終わった試合後のロッカールームは、負けてしまったような雰囲気になります。2位ではいけない。1位にならないといけない。だから絶対に負けられない一戦です」

 勝たなければいけないプレッシャーと、負けられないプレッシャーと。

 古巣への愛着を一度忘れ、エンブレムを背負う責任を示す。

 両チームのSBが激戦必至の一戦に彩りとプライドを散りばめていく。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)



page1 page2 page3

藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング