横浜FM×鹿島、「いつもご馳走になった」「尊敬」…意気投合の“同期対決”に注目 宿命の一戦「THE CLASSIC」が30日開催

永戸勝也が手ごたえを掴んだきっかけの試合とは?【写真:(C) 1992 Y.MARINOS】
永戸勝也が手ごたえを掴んだきっかけの試合とは?【写真:(C) 1992 Y.MARINOS】

“THE CLASSIC”では両クラブでプレーしたSBに注目

 鹿島は相馬直樹氏や名良橋晃氏など日本代表でも活躍した名SBを輩出する、いわばSB王国だ。2020年8月に現役引退した内田篤人氏もその1人で、長きにわたって日本代表の右サイドを支えた。永戸と広瀬は約半年間という短い時間ではあるがチームメイトとしてプレーした経験がある。

 いずれも「特別な存在」として名前を挙げた内田氏から、たくさんの学びを得た。

「マインドの部分で見習う部分が多かったです。海外で長く活躍できた理由に、ミスを恐れないメンタルがあると感じました。『前へ出て行く時は後ろのことを気にせず思いきり行ったほうがいい』と言われて、それは当時の自分にない考え方でした。トップレベルでやっていた理由が分かる思いきりと思考があって、だからこそできるプレー選択に感じました」(永戸)

「自分から何かアドバイスするというよりも、こちらから聞きに行くと一言、二言くれるんです。それがすごく響く。オーバーラップするタイミングやボールをもらう位置はすごく勉強になりました。何気ないプレー選択にもしっかりとした意図があって、そこは自分のサッカー人生にはない感覚というか、新たな発見でした」(広瀬)

 偉大な先人から新しいサッカー観を吸収し、SBとしての成長スピードを加速させていった。

 迎えた今季、永戸はかつて広瀬がプレーしていた横浜FMへの移籍を決意する。ピッチ内外で共鳴していた両選手は、チームメイトから対戦相手に関係を変えた。

 同じSBでも鹿島と横浜FMでは求められる要素が大きく異なるため、適応に少なからず時間がかかった。それぞれのスタイルを一言で表現するならば、鹿島は「オーソドックス」(永戸)。横浜FMは「攻撃に特化している」(広瀬)。

 加入当初こそ慣れない景色に戸惑いを隠しきれなかったが永戸だが、ある試合をきっかけに手応えを掴んでいく。3-0で快勝したアウェーの鹿島戦だ。

「相手に掴まれないようなポジションを取りながら、ウイングの選手と上手く絡んで攻撃参加することができました。タフな試合のなかでだいぶ手応えを感じるのことのできた試合で、コーナーキックから貴重なゴールをお膳立てできたのも嬉しかった。チームとしてもいいきっかけを掴んで、その後のACL(AFCチャンピオンズリーグ)へ向かうことのできた試合だと思います」

 横浜FMのSBはタッチライン際にこだわらず、インサイド寄りのポジションにも進出していく。時にはボランチのような立ち位置でビルドアップに関わり、アタッキングエリアに侵入すればストライカーと同じようにゴールを狙う。移籍加入した選手の多くが新鮮さに目を輝かせる一方で、正解を求めて急ぐあまり“迷子”になってしまうケースも少なくない。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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