スター軍団なら“成功確実”は「浅はか」 欧州5大リーグ制覇の名将アンチェロッティ、レアル番記者が挙げた「最大の長所」とは?

レアル率いるカルロ・アンチェロッティ監督【写真:AP】
レアル率いるカルロ・アンチェロッティ監督【写真:AP】

【スペイン発コラム】レアル優勝により大記録を樹立したアンチェロッティ監督の凄さ

 リーガ・エスパニョーラ史上4番目に速い、4節を残しての優勝を成し遂げたレアル・マドリードだが、彼らにはまだUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝という大舞台が残されている。

 今シーズン、これほどまでの成功をチームが収めてきた要因を挙げると、カリム・ベンゼマがバロンドール級の活躍を維持していることや、ヴィニシウス・ジュニオールが特に得点面で急成長を遂げたこと、ティボ・クルトワが奇跡的なセーブを連発したこと、ルカ・モドリッチが36歳にして素晴らしいパフォーマンスを見せていること、さらに、セルヒオ・ラモスやラファエル・ヴァラン退団の穴をダビド・アラバが早急に埋めたことなど、枚挙にいとまがない。しかし一番大きな要因は、間違いなくカルロ・アンチェロッティの監督としての手腕であろう。

 7季ぶりにレアル監督に復帰したアンチェロッティは、瞬く間にチームをまとめ上げ、ライバルたちの躓きはあったものの、ほとんど苦しむことなくリーガタイトルを獲得した。

 レアルでリーガに優勝したことにより、欧州5大リーグ(イタリア、イングランド、フランス、ドイツ、スペイン)制覇という前人未到の大記録を樹立した。これまでミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘンで国内リーグのトロフィーを獲得していた。

 アンチェロッティはなぜこのように、プレースタイルの異なる欧州の主要リーグで次々と成功を収めることができたのか? スペインの大手紙「ラ・ラソン」のレアル・マドリード番記者のホセ・マヌエル・マルティン氏は次のように見解を述べてくれた。

「ビッグクラブを率いてワールドクラスの選手が揃っていたら成功できるのは当たり前だと結論づけるのは浅はかな考えだ。なぜアンチェロッティがそのようなクラブに呼ばれ続けるのかを考えないと彼の凄さは見えてこない」と前置きし、相手に合わせて柔軟に戦術を変えてきたことや若い選手たちにチャンスを与えてきたことなどを評価しつつ、最も大きな功績として次の点を挙げている。

「例えば今季、彼がレアル・マドリードで何に一番力を注いだのかというと、スター選手でひしめき合うチームを1つのブロックとして上手く機能させることだった。通常、ビッグクラブに所属しているような自信に満ち溢れた選手たちがロッカールーム内に揃っていた場合、何らかの不協和音が生じるもの。それを一枚岩にする“人身掌握術”こそが、アンチェロッティ最大の長所であり、彼を唯一無二の監督にしているものだ」

「彼が凄いのは、スター選手たちをチームのために戦うように納得させる術を持っていること。先日の監督会見で、仮にクロースやモドリッチに1試合休むよう提案したとしても、彼らは問題ないと言ってくれると語っていた。その点だけでも監督と選手の信頼関係が成り立っているのが分かるよね」

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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