なぜ先発出場が少なくてもファンの人気者? “ブンデス最強ジョーカー”が大事にしていること

フライブルクでプレーする元ドイツ代表FWニルス・ペーターセン【写真:Getty Images】
フライブルクでプレーする元ドイツ代表FWニルス・ペーターセン【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】フライブルクの元ドイツ代表FWニルス・ペーターセンの“凄さ”

 サッカーには、さまざまな記録がある。

 ブンデスリーガで点取り屋といえば、誰もがまずバイエルン・ミュンヘンのポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキの名前を挙げるだろう。そのほかにも得点王ランキングを見ていくと、ボルシア・ドルトムントのノルウェー代表FWアーリング・ブラウト・ハーランド、レバークーゼンのチェコ代表FWパトリック・シック、ライプツィヒのフランス代表FWクリストファー・ヌクンク、ケルンのフランス人FWアンソニー・モデステらもコンスタントにゴールを積み重ねている。疑うことなく非常に優れた選手たちだ。

 サッカーというスポーツでゴールが重要視されるのは、それが勝敗に直結するからというのはみんな知っている。特にチームが苦しい時に生まれるゴールは記録だけではなく、記憶にも残る。

 現在フライブルクでプレーする元ドイツ代表FWニルス・ペーターセンは、ブンデスリーガで特別なFWとして評価されている。今季の得点数はまだ4ゴールと格段に多いわけではない。スタメン出場だってわずか2試合。ただ、この男の凄さはそうした数字では測れない。出場時間に左右されずにチームを救うことができる能力を持っている選手なのだ。

 今節行われたバイエルン戦では後半17分に交代でピッチに入ると、すぐに右サイドで起点を作り、ボールが移動している間に気が付いたらゴール前へと侵入してきていた。そして味方からのパスを受けてのダイレクトシュートをゴール左へきっちり流し込む。名手マヌエル・ノイアーの手も届かない。途中交代からなんとわずか17秒!

 2015年1月にフライブルクに来て積み重ねたゴールの数がついに100となったが、うち32ゴールが途中出場からのいわゆる「ジョーカーゴール」で、これはブンデスリーガにおける途中出場からの歴代最多ゴールなのだ。

 フライブルクファンからは絶大な人気を誇る。スタメン発表では一際大きな声援を受けるし、ウォーミングアップを開始するとスタジアム中から拍手が起こる。そしてどんな試合でも、後半10分が過ぎると「ペーターセン! ペーターセン!」の大合唱が始まる。フライブルクの恒例行事だ。

 監督のクリスティアン・シュトライヒは、そんなファンとペーターセンの関係性をよく知っているし、だからといってファンの要求どおりにすぐ起用したりもしない。ファンはシュトライヒ監督へ最大限のリスペクトを持っているから、ペーターセンが出場しなくても、それはそれとしてしっかりと受け止めている。

 ペーターセン自身はどうなんだろう。サッカー選手なら誰だって最初から最後までピッチに立っていたいものではないのだろうか。ジョーカーという存在はどんな意味があり、どのように解釈しているのだろう。

「例えばだけど、『85分(後半40分)に出場なんて…』みたいにネガティブに考えたりはしない。『スタメン出場より途中出場が多いなんて…』というのを嘆いたりもしない。監督は僕に反対してスタメンを決めるんじゃない。そうではなく、チームを考えて決断をしているんだ。もちろん辛いし、がっかりはするよ。でもそれを受け入れないと。人生もそうだけど、どうやって取り組むかが大事だと思う。いつでも自分がすべきことに集中して取り組んでいる。文句を言ったり、誰かのせいにしたって何にもならない。僕が持っている時間を生かそうとしているんだ」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。

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